こんにちは。
兵庫県で生まれ育ち、高校時代を含めた前半生を、全国的には「甲子園のお膝元」と呼んでいい地域で過ごした僕から申し上げます。
要旨:Executive Summary
夏の全国高校野球(全国高等学校野球選手権大会)はおかしいです。正気の沙汰ではありません。
せめて「日中」はやめましょうよ。じゅうぶん実現可能です。
夏の全国高校野球大会の問題点とは
夏の全国高等学校野球選手権大会に係る問題を考えつめていきますと、大きく2つに集約できます。
- 未成年者に「夏」の「屋外」で「日中」野球をさせていること
- 部外者がそれを相手にしすぎていること
双方に問題はありますが、この記事では前者の「踊る阿呆」側の解決を図り、改善提案を行います。
以降本記事では、全国高等学校野球選手権大会を単に「大会」と略します。
解決方針:どれかあきらめる
問題点を再掲します。
- 未成年者に「夏」の「屋外」で「日中」野球をさせていること
高校野球の大会ですから、未成年者に野球をさせる部分はどうにも動かせません。そこで、カギカッコにくくった3つのうち、どれかを諦めましょう。
恐らくは、諦めにくいであろう順番に書いていきます。
1.「夏」を諦める
なにも真夏のいちばんクソ暑い時にやることはありません。もっと気候のいい時期を選びましょう。
2.「屋外」を諦める
「夏」が譲れないのならば、なにも屋外の阪神甲子園球場でする必要はありません。屋内会場、たとえば近場なら大阪ドームにすればいいでしょう。
3.「日中」を諦める
「夏」も「屋外」も譲れないのならば、なにも気温が高く直射日光も照りつける日中に大会日程を組む必要はありません。熱中症などの健康リスクの発現を避ける目的で、時間帯をずらしましょう。
2つのデータ
ここで2種類のデータを使います。ひとつは大会データ、もうひとつは期間中の気温データです。
それぞれの典拠を示します。
第95回大会データ
今年(2013)の大会は、8月8日から22日まで、休養日(8/20)を除く14日間で全48試合が行われました。試合に関するデータは、日本高等学校野球連盟の「大会日程」から参照できます。
兵庫県南部の気温データ
気象庁の「気象統計情報」から、観測地点ごとに過去の気象データを参照することができます。
会場の阪神甲子園球場に近い神戸の観測地点の気温について、大会期間中のデータを参照しました。
サイトでは10分刻みの値まで参照できましたが、本記事では1時間ごとのデータを使用しました。
概況:大会期間中の気温
大会期間中の神戸の気温データ(1時間毎)を見ていきます。
期間中のすべての日で、遅くとも午前10時には気温が30℃を超えています。大会5日目(8/12)では、早くも午前7時に30℃を上回っています。
最高気温が35℃を超えたのは、5日間(8/10~14)。大会中の平均の最高気温は、34.3℃でした。
一度上回った気温が30℃ラインを割るのは、早くて午後6時(8/15, 17)。8月9日から13日までの5日間は、30℃を割ることなく日付が変わっています。
事実:2013年大会は、42試合(87.5%)が終始気温30℃超で行われた
この気温データを、今年(2013)の大会日程と突き合わせてみました。
試合の開始時刻または終了時刻のどちらかで気温30℃を下回っていたのは、48試合中6試合でした。
言い換えると、2013年大会の全48試合中、試合開始から終了までずっと気温30℃を超えた状態だったのは42試合。全体の87.5%に相当します。
大会期間を通しての最高気温は、第4日の36.4℃(8/11)でした。記録した午後1時は、第2試合が実施中でした。
どれも正気の沙汰ではありません。
主張:せめて「日中」はあきらめよう
「夏」も「屋外」も捨てられないなら、せめて「日中」はあきらめましょう。
2つの試案を示します。
試案1:12時間ずらす
現状の大会は、準々決勝までは1日に3試合または4試合が開かれます。試合開始時刻の目安は、それぞれ午前9時30分、午前8時です。
これをちょうど12時間ずらして、午後8時、午後9時半開始にすればいいです。
大会期間中の神戸の気温データによれば、前述の5日間は午前0時や1時まで30℃を下回っていませんが、それでも真夏の日射しが照りつける日中に試合をするよりはましでしょう。
終了時刻のシミュレーション
2013年大会の実績データから試算してみましょう。
期間中、準決勝と決勝を除いた12日間の最終試合の終了時刻の平均は、午後5時50分です。
また試合終了時刻が最も遅かったのは、午後7時34分(8/10)でした。
12時間ずらして考えると、終わる頃には、電車も動いています。
予想される反論
いくら健康被害の発生リスク回避のためとはいえ、18歳以下である高校生に深夜に活動させることは問題だとする論調もありえます。
そこで、次の試案を考えました。
試案2:朝晩に分けて開催する
気温の高い時間帯を避け、朝晩に分けて大会日程を組みます。
大会期間中に1日の最高気温が記録された時間帯を見ていきますと、12時から18時のあいだでした。
そこで、この時間帯を避け、なおかつ極力深夜帯にかからないように試合日程を分けます。具体的な案としては、24時間表記で
- 5:00~10:00
- 19:00~24:00
とします。
データ:5時間あれば、2試合が消化できる
日本高等学校野球連盟の「大会日程」には、各試合の開始時刻と終了時刻が記載されています。
そこから、2013年大会の全48試合の所要時間を計算してみました。
- 最短:1時間31分
- 最長:2時間59分
- 平均:2時間03分
でした。
また、さしあたり「インターバル」と呼びますが、前の試合の終了時刻から次の試合の開始時刻までは次のとおりでした。(n=34)
- 最短:31分
- 最長:47分
- 平均:34分49秒
したがって、平均値から見積もると、
- 2時間03分×2+試合間のインターバル35分
=4時間41分
ですから、5時間あればじゅうぶん2試合消化できます。
現状と同じく、1日に最大4試合実施できますので、必要な日数も大差ないはずです。
時間内に収まらないケースへの対応
延長戦などで試合時間が長引いた場合の対策としては、予定時刻を越えるとサスペンドにして新しいイニングに入らないようなルールを設け、続きは予備の日程で行えばよいでしょう。
まとめ:まずは「正気の沙汰でない」現状認識の共有から
とにかく、夏の大会の現状は、正気の沙汰でないです。
ここで述べた大会日程に関する試案は、細部の精査を要するでしょうけれども、次回からでも実現可能な解だと考えます。
ただし大会の運営側は、死人が出るまで、あるいは死人が出ても変えようとはしないでしょう。どうも現状認識が共有できていないみたいですから。
なにはさておき、そこがまず問題だと言えましょう。
ご静聴ありがとうございました。
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