こんにちは。
当ブログではニュースに反応しただけの記事を書くまねはしないように努めていますが、気に入らないので書きます。すみません。
この記事で言いたいこと:Executive Summary
- NHK名古屋放送局が、4月1日から8月19日まで岐阜と津の週間天気予報を逆に違えて報じていたそうです。
- ですが、そいつを報じるだけで何の検証もしないネットマスコミも、その尻馬に乗るだけの輩にも、心底うんざりです。『一億総ツッコミ時代』の極みです。
- NHK名古屋放送局が余計なことをやらされかけていますので、先にやっておきます。
- ざっとの推計ですが、取り違えての放送は全部で640回です。
- 同じくざっとの推計ですが、向こう1週間の週間天気予報のうち、岐阜・津、両地が別々の予報内容だった日、すなわち、両者を入れ違えると間違った情報になってしまう日は、それぞれで2日分だったと推定します。
- よって、結果的に入れ違っていた週間天気予報は、のべ280日分です(140×2)。放送回数ベースで言えば、のべ1280日分です(640×2)。
1.ニュースを知る
NHK名古屋放送局が、4月1日から8月19日まで岐阜と津の週間天気予報を逆に違えて報じていたそうです。
NHK名古屋放送局の「お知らせ」に「週間天気予報の誤表示について」が出ていました。事実関係のわかる前半部を引用します。(下線は引用者)
NHK名古屋放送局が、朝に東海・北陸地方7県向けに放送している週間天気予報で、岐阜と津の画面の情報を、ことし4月から8月19日まで、逆にお伝えしていました。これは、画面の自動作画装置を変更した際、設定を間違ったことによるものです。
僕がこのニュースを知ったのは、ネットの毎日jp からでした。「NHK:津市と岐阜市の天気予報を逆で放送 今年4月から」(2013年8月20日)より引用します。
同局によると、午前5〜7時台のニュースや気象情報で、7県の県庁所在地の週間天気予報を放送している。今月19日に名古屋地方気象台から指摘を受け、ミスに気付いた。
毎日jp の怠慢
ただ同記事のこのくだりには、かっちーんときました。
両市の春と夏の予報は似ている日が多く、実際に何日分の予報が逆だったかは不明という。
なんだそれ。
それを知りたいならお前が明らかにしろよ。
それが報道の仕事じゃねーのかよ。
立ち回り先の発表を横流しして終わりかよ。
日々のうたかたニュースだけ追い回して流されてんじゃねーよ。
と、悪態の3つ4つもつきたくなります。第一報を伝える意義は認めますけどね……
2.各社の報じ方を検証する
このニュースを各社はどう報じたのでしょうか。拾えた範囲のWeb ニュースだけですが、検証してみます。
先に結論を述べると、だいたいが主な事実関係を報じているだけでした。1つを除いて、怠慢な毎日jpのように「実際に何日分の予報が逆だったか」に言及はしていません。
・朝日新聞デジタル「NHK天気予報で4カ月半ミス 岐阜と津を逆に放送」(2013年8月20日)
事実関係のみです。
・産経ニュースWest「NHKが大失態!! 天気予報で三重と岐阜、4ヶ月半取り違え」(2013年8月20日)
これも既知の事実関係のみで、新たな情報はありません。蛇足ながら、見出しの付け方の下品さ加減が社風を醸し出していていい味わいです。
・47NEWS>共同ニュース「岐阜と津の天気予報を取り違え NHKが表示ミス、4カ月半」(2013年8月20日)
微細な部分を除き(末尾の付記で詳述します)、目新しい情報はありません。
・読売新聞オンライン「岐阜と津を逆に表示…NHK天気予報、4月から」(2013年8月20日)
だいたい重複していますが、ひとつ、新しい情報がありました。(下線は引用者)
同放送局は両市の予報がどの程度間違っていたか調べるとともに、「二度とこのような間違いが起きないよう、チェックを徹底する」としている。
おやおや、間違った方向に行っていませんか。なんでそれをNHK側がしないといけないわけ?
ミスを公表した相手に無用な責任まで負わせるかのような一部報道も、これらの報道に乗っかって騒いでいるだけの人らも、気に入らないです。
3.NHK名古屋放送局の取るべきアクションを検討する
それしなくていいです
ここで僕が言っても何の実効性もないですが、NHK名古屋放送局さんと出入りの報道関係者に言わせてもらいます。
どの程度間違ってたか? そんなもんまで調べんでいい。 知りたい奴らでやっとけ。
そうやって余計な作業をさせ合うから、世の中の生産性が下がるのです。
しなくていい理由1:誰も困ってなかった
だって、たぶんだけど、発覚までざっとカウントして140日間見過ごされていたってことは、それで誰も困らなかったってことでしょ。
しなくていい理由2:原因は判明している
報じられているところだと、なんでそうなったかの原因はわかってるみたいです。それで十分でしょ。
実際にどの程度間違ってたか、それ知ってどうするの? というか、それを知りたきゃ知りたい奴が調べればいいだけの話じゃないの。
NHK側にそこまでの説明責任はないでしょうよ。
このレベルのミスなら、これだけでいいと思う
最初に引用したNHK名古屋放送局のお知らせから、引用部分のつづきです。
視聴者の皆様にお詫びするとともに、二度とこのような間違いが起きないよう、装置の設定などについて、チェックを徹底してまいります。
指摘をいただきました。ミスが見つかりました。ごめんなさい。再発防止に努めます。
これで十分でしょう。
それ以上を論じるのは神経質すぎる
ヒューマンエラー撲滅の見地からすれば、「チェックの徹底」はあまり上策ではないです。より根源的な対策として「人的ミスの混入のしようがないように作業プロセスをデザインし直す」あたりを志向するのが筋でしょう。
ですが、ここでそのレベルまで論じるのは神経質すぎる気がします。ミスに違いありませんが、本件に関しては大勢に影響ない話なのだから、これを超える重大なミスが出ないようにだけ予防線を張っておけばいいんじゃないのと僕は思います。
4.取り違えての放送回数を推計する
怠慢だからか何なのか理由はわかりませんが、どこからも検証データが出てきそうにないので、一部報道で「不明」となっていた件、僕がやっておきます。
では何回ぐらい、岐阜と津の両地を取り違えての週間天気予報が放送されたのでしょうか。それを推計してみます。
結論:取り違えての放送は、推定で640回
先に結論を述べると、640回の計算になります。
算定根拠
報道によると、取り違えての放送は「午前5~7時台」となっていました。
NHK名古屋放送局のサイトから総合テレビの番組表を見ますと、その時間帯で天気予報を放送していそうな番組は、次のとおりです。
1)月~金曜日のパターン(8月21日の例から)
- 05:00-06:30 NHKニュース おはよう日本
- 06:30-07:00 NHKニュース おはよう日本
- 07:00-07:45 NHKニュース おはよう日本
- 07:45-08:00 おはよう東海
2)土曜日のパターン(8月24日の例から)
- 05:00-05:15 ニュース・気象情報
- 05:50-05:55 気象情報
- 05:55-06:00 東海・北陸の気象情報
- 06:00-07:00 NHKニュース おはよう日本
- 07:00-07:30 NHKニュース おはよう日本
- 07:30-08:00 ウイークエンド中部
3)日曜日のパターン(8月25日の例から)
- 05:00-05:15 ニュース・気象情報
- 05:50-05:55 気象情報
- 05:55-06:00 東海・北陸の気象情報
- 06:00-06:15 ニュース・気象情報
- 06:53-07:00 気象情報・ニュース
- 07:00-07:30 NHKニュース おはよう日本
番組中に、何回ローカルの週間天気予報を放送するかは不明ですが、過不足も考慮して「各番組で1回ずつ」と仮定します。
そうすると、1週間では、4×5+6+6=32回 です。
4月1日の月曜から、発覚の前日である8月18日の日曜まで、ちょうどまる20週間ですから、32×20=640回となります。
5.結果的に、のべ何か所で予報が入れ違ったかを推計する
ではおよそ640回の放送中、実質入れ替わっていた予報がどの程度あったのでしょうか。
岐阜と津と、両地の天気予報が同じであれば、入れ違っても間違いにはなりません。
よって期間中に、両地の予報が違っていた日数はのべ何日分だったかを調べると、実績値が求められます。
結論:6日間中2日分と推定
先に結論を述べます。各回で2日分だったと推定します。
NHKでの週間天気予報は、向こう6日間分が報じられているようです。
過去の予報データが入手できなかったため精度に欠けますが、本日時点での最新のデータを根拠に、岐阜・津の2地点の週間予報を比べた場合、そのうち2日分が異なるものと推定します。
週間天気予報とは
まず、「週間天気予報」という用語の意味を押さえておきます。
気象庁の週間天気予報ページ、「府県週間天気予報」の説明より引用です。
向こう一週間の、各府県における一日ごとの天気、(略)を、毎日11時ごろと17時ごろに発表します。
府県単位では毎日2回発表されます。「週間」と名が付いていますが、毎日の更新です。ここポイントです。
NHKの週間天気予報では、このうち向こう6日間分を報じているみたいです。(ソースはうちのデータ放送)
取り違えていたという4月1日から8月18日までの期間、岐阜と津の週間天気予報がどれぐらい違っていたかを探ってみましょう。
過去の天気「予報」データは公開されていないもよう
ところが、さっそく壁にぶち当たりました。
名古屋地方気象台のサイトに行って探してみましたが、予報内容については、現時点の最新のものしか見当たりませんでした。どうやら過去の予報データは掲載されていないようです。
地域は違いますが、探すと「東京地方 過去の天気予報一覧」というページがありました。個人で収集されているようです。同ページより。(下線引用者)
何故、こんなサイトを作っているか? というと、(略)検索してみても、過去の天気予報データを見ることのできるサイトが見つからなかったので、それじゃあ自分でデータを集めて公開しよう、ということで始めたものです。まあ、せっかく始めたものだから、気象庁あたりが自ら過去の天気予報を公開するようになるまでは続けてみようかな、と思っています。
この記述と、同ページでのデータ収集と更新も2005年以来現在に至るまで継続されていることの2点から、過去の天気予報データに関しては今なお公開されていないものと判断しました。
しかしながら、こういう酔狂なことをしてる人って、いいですね。好きです。
「実績値」と比較することで“成績”がもろにわかるデータだから、気象庁も残しておきたくないのでしょうかね。
やむを得ず、1日分のみで雑に推定
意外にも過去の予報データが得られなかったので、本日1日分のみのデータで雑に推定することにします。
8月21日11時時点の、岐阜県の週間天気予報
8月21日11時時点の、三重県の週間天気予報
両者で予報が違うのは、7日分中2日です。
NHKで報じるのは向こう6日分ですが、そのまま2日分が違うと推定しておきます。
6.まとめ:実際に何日分が入れ違っていたか(推計値)
推定による結論をまとめます
- 140日間、毎日2日分の予報が結果的に入れ違っていた。よって、実際に入れ違っていたのは、のべ280日分。
- 期間中の週間天気予報の放送回数はのべ640回(推計値)。放送回数ベースで言うなら、のべ1280日分となる。
付記:推定被害額はゼロ
でも、事実上誰も被害を受けていないと思います。推定被害額ゼロです。
発覚の経緯から言えること
発覚の経緯について、いちばん具体的だった47NEWSからです。
8月19日に画面を見た気象台の職員から指摘を受け、間違いに気付いた。
つまり
- 気象台の職員以外に、深く気にしていた人物がいなかった
- いたかもしれないが、指摘するほどでもないと思われて放置されていた
ということになります。
ここから判断すれば、取り違えられていた岐阜市、津市をはじめ、東海地域の住民に何ら実害はなかったと言えるのではないでしょうか。
「実害はなかった」へ至るロジック
「実害はなかった」との結論へ至るロジックをくり返します。
- 大半の人にとって天気予報とは、週間予報での岐阜と津が入れ替わっていても変に思わない、その程度の情報
- 天気予報が「その程度の情報」でない人は、NHKの報道のみを鵜のみにはしない。だから間違っているのも分かる
- よって、140日間にわたりミスが残っていたが、実害は出ていないといえる
こちらからは以上です。
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