こんばんは。林修ナイトの時間です。
「あすなろラボ」でのおデブ向け授業の感想シリーズ、その12です。ブックガイド記事です。
「あすなろラボ」の授業を機に、デブも非デブも読んでおきたい3冊
全部で3冊紹介します。
1.「デブのやましさ」を分析するための1冊
感想シリーズの(10)でも紹介しましたが、再掲します。
『一億総ツッコミ時代』(槙田雄司 2012)
なぜ太るのは楽しいのに、どこかやましいのか。
ダイエットは、すごくツッコミ的な行動だと僕は思います。
まず、ゆるい自分を許さないという気持ちがある。 (p.58)
というくだりなどから、間接的ながらもそのヒントをくれる本です。
この感想シリーズで、それに対する僕自身の考えと打開策も書いたつもりです。
2.「肥満推進社会」の一端を知る1冊
次に、「肥満推進社会」はどんなからくりで動いているのか。その一端が知れる本です。
『企業が「帝国化」する』(松井博 2013)
米国、日本のデータを示し、肥満率の上昇、肥満の低年齢化が進行する事実が紹介されています。
ポイントは、肥満の背景にある「ほとんど誰も指摘しない重要な事実」として、こう述べられていることです。引用は、同書の「増え続ける肥満」からです。
それは食糧価格の低下です。
アメリカをはじめとする先進国での食糧の相対的な値段は食糧生産の工業化が進むにつれて下がり続けているのです。
米国でのデータが示され、30年前と比べて食品の相対的な価格が、中でも肉類の価格が下がっていることが指摘されています。食肉価格の低下率は、鳥のもも肉で35.37%、豚肉の切り身で38.00%だといいます。そりゃあ、うまいものが安くなってるはずですわ。
肉類の価格低下は、穀類の価格の低下が引き起こしています。でもって、それを可能にしているのは、…
…と、話は進んでいき、やがて「デブ」の領分からは離れますが、われわれの大半が、「帝国化」した企業に多くを依存せざるを得ず、言わば彼らに飼われて生かされていることが知れます。低所得層、貧困層になるほど、その傾向は顕著だと言えましょう。
既に並の国家では太刀打ちできなくなっているほどに、私企業の「帝国化」が進んでいる。「肥満推進社会」はその一例にすぎません。そんな「いま」を知ることのできる良書だと思います。
3.「情報は願望の母である」を掘り下げるための1冊
林さんは授業のなかで、いろんな情報が入ってくるせいで、東大で勉強したこともないのに「東大へ行きたい」という生徒が出てくることを例に出され、「情報は願望の母である」と言っていました。
ここでひとつの疑問が生まれます。そんなふうにして形作られた「東大へ行きたい」という願望、それは果たして「自分の意志」と言えるのでしょうか。
そこを問い、掘り下げているのがこの本です。
『サブリミナル・マインド』(下條信輔 1996)
サブリミナル・マインド―潜在的人間観のゆくえ (中公新書)
下條 信輔
関連商品
サブリミナル・インパクト―情動と潜在認知の現代 (ちくま新書)
「意識」とは何だろうか―脳の来歴、知覚の錯誤 (講談社現代新書)
記憶はウソをつく (祥伝社新書 177)
心の脳科学―「わたし」は脳から生まれる (中公新書)
サブリミナル効果の科学―無意識の世界では何が起こっているか
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本書を読むと、「自分の意志」なんてものがまったく根拠の薄い、危うく不確かな代物であることが知れます。
そうなってくると「自己責任」なんてものも、存立の基盤がどれほど確かなのか、いっぺん疑ってかかる必要がありそうです。
「自分の意志」「自己責任」、今回の授業でも何度となく出てきました。いったん、まゆにつばをつけて聞いておきましょう。
僕は未読ですが、下條さんは『サブリミナル―』以後も同様のテーマでの新書を何冊か出されているようです。上記リンクで「関連商品」も紹介しておきました。
僕からは以上です。
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