お気持ちコンサルタントのヤシロです(約3年ぶり2回目)。
お気持ちコンサルタントのお気持ち表明です。
要約:Executive Summary
『三省堂国語辞典』(8版)に関する意見と公開質問状|No!セルフID 女性の人権と安全を求める会(2022/01/18付)
を読みました。
とてもつらく感じました。不幸な女がさらに不幸を追求するテキストだったからです。
まずはその内心に積み重なったままのつらい思いに自ら寄り添い、癒やしてあげてほしいと切に願います。
おことわり
『三省堂国語辞典 第八版』の「女」の項には「区別」として
大人の女の人をさす場合、「女」はぞんざいに感じられることがあり、より客観的でていねいな言い方として「女性」を使う場面が増えている。
とありました(p.220)。
承ったうえで当記事は「女」で進めます。
字づらだけでも性を除くねらいです。「性」がからむと話が紛糾しがちなので。
第一印象
どういう点が「不幸な女がさらに不幸を追求するテキストだった」かは後ほど触れることにして、まずファーストインプレッションを述べます。
2014年の番組開始以来「水曜日のダウンタウン」をほぼ全部見ている私なので、読んでこの説を思い出しました。
「電話でキレてきた相手がその怒りそのままにやってきたら、どんなにおかしな姿でもそこには触れられない説」(第1弾2020/12/23、第2弾2021/02/24 OA)
第2弾のときの予告動画をリンクしておきます。
ひとつ付言しておくと、この説の「相手」は語法としてミスリーディングです。検証VTRでキレてきた相手はすべて「顔見知りの先輩」にあたる人物だったので。既存の人間関係の勾配を検証する説でした。
さて、ありえない仮定ではあるんですが、もしも本件でくだんの女たちが三省堂ではなく私のもとへやってきたなら、私の第一声はきっと
どうしたんですか。血だらけ、傷だらけじゃないですか!
です。救急箱持ってくるか、なんなら救急車呼ぶでしょう。
傷の手当てが先決で、用件はそのあとです。
ここでの「おかしな姿」とはちょうどこんなイメージ、と示せないかと画像検索してみたのですが、あいにく使用に金が発生するタイプを含め、私のイメージに近いものが見当たりませんでした。
もし私に絵心があれば描きたいし、富裕層ならプロに発注するところですが、絵心も金銭もまるで足りなくて間に合いません。
ただ人間でなければ近い姿はありました。それがこちらです。
※画像は頭に吹き矢?刺さったカモ 10センチの矢が貫通、伊丹 – 産経ニュース(2015/10/30付)より
こんな姿で何かもの言いに来られたら、「話はあとで」となりませんか? 私はなります。
あいにくと、彼女らがケガしているのは心です。これまでの人生で、矢傷、刀傷、その他ありとあらゆる種類の傷を心に負いまくっています。悲しいことに心のケガは目には見えませんので、そこに気づく人もまれです。私もようやくこの年になって、心に傷を負った人のさまが見えるような気になってまいりました。
3つの観点と結論
思考のプロセスはすべて端折り結論だけ述べます。
それは誰の問題か?
これは『三省堂国語辞典』の問題ではなく、『三省堂国語辞典』の特定ワードに反応する女たちの問題です。
いい悪いは言ってません。誰の問題かを言ってます。
たとえば「オカンが好きな朝ごはんの名前を忘れてしまった」は話し手にとって問題ですが、そこにいい悪いはありません。それと同様です。
それはどんな問題か?
感情の問題です。
加えて、感情の問題をそれ以外の何かに見せようと偽装している問題です。
彼女たちの内心に何が起こっているのでしょう。
テキストを読み取った結果を一語にまとめれば「こわい」です。恐怖と不安をないまぜにしたような感情が起こっています。
会の名称に含まれる「セルフID」、私は初めて見たワードなので同サイトにあったセルフIDとは を読みました。
簡単に言えば怖いんですよね。それ自体も、(実数は不明ですが)それを望んでいる人の存在も、それを世の中が認めてしまうことも。このウェブサイトを開いた女たちにとってそれが恐怖と不安の対象になっていることはよくわかりました。
そんなの間違ってると言いたいのではないです。感情は感情です。感情に正しいも間違いもありません。
むしろ気にかかるのは、感情の問題であるにもかかわらず、自身の感情をとことん抑圧した形跡が見てとれることです。
話の続きは後ほど。
私たちにできることは何か?
思っているよりずっとずっと少ないです。
私にできるのは、一緒に途方に暮れることぐらいです。
ブックガイド
観点ごとに参考となる文献を示します。
それは誰の問題か?
ドナルド・C・ゴース、ジェラルド・M・ワインバーグ『ライト、ついてますか―問題発見の人間学』(原書1982, 訳書1987)
以前別の記事でも書いたことがありますが、およそ「問題」に関して本書以上に示唆に富む本を私はほかに知りません。
ワインバーグの著書は、次の2冊もよく参照します。
「ボールディングの逆行性原理」「ブラウンの素晴らしき遺産」の教えは、この記事でも応用しています。
それはどんな問題か?
野坂祐子『トラウマインフォームドケア』(2019)
以前「1945ひろしまタイムライン」を研究した折、あたった文献のうち最も有益だったものの1つでした。
入り口としてはプロモーション記事の
「トラウマのメガネ」をかけて見てみると、これまで気づくことのなかった相手の「心のケガ」が可視化されます。そして、その「心のケガ」に対して適切なケアを行わないと事態は悪化してしまう。
「トラウマ インフォームド ケア」とは? コロナの時代に必要となる「心のケア」を考える|Living in Peace こどもPJ(2020/04/30付)
で事足りる気もします。
「トラウマ」、あまりに日常語になりすぎているせいで自分発で使うには気乗りしないワードなので、ここで少し補足を。
八木淳子さんの定義によれば
本来持っている個人の力では対処できないような外的なできごとを体験した時のストレス、非常にショッキングで恐怖を伴うできごと
それによって受ける心の傷(障害)
※YouTube>令和3年度第2回子どものこころ診療部セミナー(2022/02/04付)より
この双方が、トラウマです。「曝露」も「影響」も意味するのがポイントです。
同じ動画の「脅威に直面して、有効な対処行動がとれなかったとき」トラウマがトラウマとなるって話も、わかりやすかったです。
『トラウマインフォームドケア』に戻ります。同書p.99の「トラウマの三角形」が、すぐれものです。
ネット発のあらたな炎上事案を見聞きするたび、この図の万能ぶりに感嘆しています。大半のベースにこれがあるんじゃないですかね。
万能すぎて炎上界の創味シャンタンじゃないかと思えるほどです。
私たちにできること
宮地尚子編『環状島へようこそ』(2021)
対談集です。答えは書いてません。けれどもヒントに満ちた1冊でした。出る答えは人それぞれだと思います。
私の答えは先ほど書きました。「一緒に途方に暮れる」です。
エドガー・H・シャインさんの著書2冊も洞察に富んでいます。
まずは『Helping(邦題:人を助けるとはどういうことか)』(原書2009, 訳書2009)。
本書の知見に照らせば、私は先述の女たちに何のヘルプもできません。悲しい話ですが。
彼女らはnot readyで、かつお気持ちコンサルタントのクライアントでもないからです。
詳しくはこちらの過去記事へ。
次に『Humble Consulting: How to Provide Real Help Faster(邦題:謙虚なコンサルティング)』(原書2016, 訳書2017)
副題に表れる「Real Help」について、監訳者の金井壽宏さんが序文で端的にまとめてくれています。
クライアント(相手)が、
(1)問題の複雑さと厄介さを理解し、
(2)その場しのぎの対応や反射的な行動をやめて、
(3)本当の現実に対処すること
これらの手助けをするのが「本当の支援」だというのですね。既にここまで明らかにした人がいるその事実が尊く、かつ怖くもあります。
余録
後ほど触れるとした点をば。
不幸マシマシのスパイラル(その1)
どういう点が「不幸な女がさらに不幸を追求するテキストだった」かに触れます。
彼女らが始めたのが、ゼロサムゲームどころでなく「マイナスサム」である点です。期待値計算、平たく言えば損得勘定をすればそれがわかります。
まず、三省堂側が回答しないケース。
女たちにとってマイナスです。三省堂はプラマイゼロです。トータルマイナスです。
次に「回答する」パターンを3つに分けます。
1つめ。それが具体的にどういうものかまで想像しかねますが、女たちにとって「満額回答」があったと仮定します。
女たちのプラスよりも三省堂のマイナスが大きいので、トータルマイナスです。
2つめ。「満額ではないが、何らかの回答がある」です。もっとも確率の高そうなケースでもあります。
これは女たちにとってマイナスです。なぜならこのケースで満たされることはなく、必ず不満が残るからです。三省堂側はプラマイゼロなので、トータルマイナスです。
3つめ。三省堂サイドが回答するケースにはうっかり「満点回答」を出す可能性も含まれます。
このとき、三省堂が得るプラスの絶対値よりもはるかに女たちのマイナスが大きくなります。リーチ一発不幸ドラドラのハネマン、トータルマイナス6000オールって感じ。
以上、事態がどの方向に進んでもこの世の不幸の総和が増すばかりです。そして増す不幸のほぼすべてが、既にして不幸な女たちに降りかかります。
「さらに不幸を追求する」とはそういった意味です。
マシマシスパイラル(その2)
本件が抱えるさらなる不幸は、B面である感情の問題にA面的手段でアプローチしていることです。そっちに向かうと、オカンが忘れてしまった好きな朝ごはんの名前を思い出すよりもずっとずっと、解決への道は遠いでしょうね。
私が勝手に「A面B面マンダラ」と呼んでいる図と突き合わせると、元のテキストがB面を抑圧したものであることがわかります。
出所:田房永子『なぜ親はうるさいのか』pp.064-065
※画像は、A面B面についての解説ページ|田房永子(Tabusa Eiko)|note(2022/01/18付) より
最新の形態素解析システム「オレ」を使ってテキスト解析し、「マンダラ」と照合してみました。総回数は大差ありませんでしたが、延べのワード数で違いが出ました。
A面ワードは次の計7語であるのに対し、
- 人権(6回)
- 役割(2回)
- 賃金
- 地位
- 教育
- 法律
- 立場
B面ワードは3語でした。
- 特徴(「身体的特徴」の形で10回)
- 家事
- 性質
感情の話とにらんだにもかかわらず、何より感情にまつわるワードがまったく出てこないところから、著しい不協和音が聞こえます。え、まさかなんの感情もないわけ?と一瞬錯覚するほどです。
お気持ちコンサルタントの想像ですが、次のようなつらさが働いてこんなテキストになったのかなと思いを馳せるところです。
たとえば、これまでこわい、不安だと表明したところで誰からもまともに耳を傾けてもらえなかったつらさ。さらに言えば、表明する前の段階で、テキストをものした女たち自身に棲む内なる何者かが「だから女は感情的」うんぬんと語りかけてくる。そういった類のつらさです。
そんな世の中にしているなら、もしくはそんな世の中だと感じる女たちがいるなら、そこにひとりぶん加担している責任は感じます。
テキストから読み取れる怖いこと
以下は第三者が想定読者ですが、当事者の目に入っても差し支えないようには書いたつもりです。
前掲のワインバーグ『コンサルタントの道具箱』の「探偵帽と虫めがね」の章に「探偵の第3法則」として
相手の質問から必要な情報を入手せよ。
との教えがあります(p.91)。
この教えを『三省堂国語辞典』(8版)に関する意見と公開質問状のテキストに適用してみました。
質問1
三国8版で「女」「男」「フェミニズム」の項目を執筆するに際して、主として参考にした文献があれば、それを具体的にご提示ください。
この質問から、質問者が『三省堂国語辞典』のことをまるで知らないのがわかります。怖いですね。
あえてたとえてみると、俵万智さん(でも誰でもいいのですが)の短歌に対して「主として参考にした文献があれば、それを具体的にご提示ください。」と俵さんに問うているかのようなちぐはぐさを覚えます。
それを非難しているのではないです。知らない相手に意見するのも質問するのも自由ですから。
質問からわかることをシンプルに述べています。
次に、テキスト冒頭に掲げた宛名からも、不協和音が聞こえます。
株式会社三省堂 代表取締役社長 瀧本多加志 様
『三省堂国語辞典 第八版』の奥付ですと、瀧本さんは「代表者」となっていて、代表取締役社長であることはわかりません。どこか別のルートをたどって調べたんだなとわかります。
わからないのがこちらです。
『三省堂国語辞典』第八版 編者
見坊豪紀 様 市川孝 様 飛田良文 様 山崎誠 様 飯間浩明 様 塩田雄大 様
奥川健太郎さんの名前がないですね。『三省堂国語辞典』のいわばキーパーソンなのに。序文のページ末尾にも「編集担当」として名前が載ってるのに。
もっと不思議なのは、ここに見坊豪紀の名前が入っていることです。なんでですかね。
いや、奥川さんが抜けてて見坊が入っててもいいんですよ。形式上そうしたのなら。
だとすると、今度はテキストの「意見」で見られる主張と著しく不調和なんですよね。欅坂46を上回る不協和音が聞こえます。その不協和音は何坂何ティーシックスなのかと。
もうひとつ、揚げ足取りと言われても致し方のない興味深かったところ。※下線は引用者
まず、「女」「男」の項目について見てみます。
「女」および「男」
おんな[女](略)
(三国8版、197ページ)
おとこ[男](略)
(三国8版、220ページ)
女と男の記載ページが逆ですね。てれこになってます。人一倍以上、2.5倍ぐらいは出典にうるさい私なので気になります。
煎じつめればミスなんでしょうけれど、どうしたんでしょうね。
ミスを責めているのではないです。何があってこのミスが生まれたんだろうなって。
などなど興味は尽きないのですが、しかしながら今この段階でこちら側の話を進めても無益です。
というのも、『三省堂国語辞典』にまつわる話を続けることは、女たちにとって『謙虚なコンサルティング』のいう「その場しのぎの対応」だからです。
前述の各先行文献から得た知見に照らせば、本件での『三省堂国語辞典』は既に傷だらけだった女たちの反応を引き起こしたリマインダーではあっても彼女たちの問題の所在地ではありません。
好きなジャンルの話を続けたいのはやまやまなお気持ちですが、残念ながら時期尚早です。心に残るつらさを癒やしてからにしましょう。
女たちの傷が癒えるまでどのくらいの時間が必要か私にはわかりませんし、きたるその時に私の命があるかも不確かですが、待ちます。忘れながら待ちます。
そんなところです。
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