こんばんは。林修ナイトの時間です。
位置づけとしては「言いたいことは最初に言えるようになろう―8月4日「あすなろラボ」林修さん授業感想(7)」からの派生記事になります。
この記事で言いたいこと
- 言いたいことを最初に言うコミュニケーションのスタイルを「江田照男型」と呼ぶことにします。
- 日本には、江田照男型のコミュニケーションが足りません。
- 2012年の第60回日経賞(G2)での江田照男ジョッキーの騎乗は、何度見てもすごいです。
あすなろラボ関係ないし、「林修ナイト」としましたが林さんもほとんど関係ないです。
1.江田照男型のコミュニケーション
前の記事で私は、「言いたいことは最初に言えるようになろう」と訴えました。
私の提唱する、言いたいことを最初に言うコミュニケーションのスタイルを「江田照男型」のコミュニケーションと呼ぶことにします。
なぜそう呼ぶことにしたかは、後ほど詳しく述べます。
2.江田照男が足りない。
なぜ私が「言いたいことは最初に言えるようになろう」と訴えるに至ったか。
それは、8月4日放送の「あすなろラボ」での林修さんの授業のなかで、ある「生徒」が自分の言いたいこと(=自分のニーズ)である
「で結局、こっちが痩せたいと思ったらなんかアドバイスとかくれる訳じゃないの? こうやったら痩せられるからどうとかこうとか」
を言うまでに、実に5回の発言を要したからです。最初に、
「でもなんかさっきからさなんか聞いてるとさ、デブが悪いみたいな言い方に聞こえるんだけど」
から始まって、6度目の発言にしてやっと、自分の言いたいことを言えました。
このようなコミュニケーションのスタイルを、江田照男型に対して「時の流れに身をまかせ」型のコミュニケーションと呼んでおきましょう。
だいたい「時の流れに身をまかせ」がち
《時の流れに身をまかせ》とは、テレサ・テン1986年のヒット曲(作詞:荒木とよひさ 作曲:三木たかし)です。
この曲の1番の歌詞は、このようになっています。テキストはgoo 音楽 のものをベースにしました。
もしも あなたと逢えずにいたら
わたしは 何を してたでしょうか
平凡だけど 誰かを愛し
普通の暮し してたでしょうか時の流れに 身をまかせ
あなたの色に 染められ
一度の 人生それさえ 捨てることもかまわない
だから お願い そばに置いてね
いまは あなたしか 愛せない
ここで現代文の問題です。この歌詞(の主人公)が「いちばん言いたいこと」とは、なんでしょうか?
その答えは「そばに置いてね」です。引用部の色を変えておきました。
それを言うまでに、これだけの言葉を費やしています。まさに「時の流れに身をまかせ」です。
私の観察ではだいたい、対人コミュニケーションはこの「時の流れに身をまかせ」型になりがちです。
《時の流れに身をまかせ》の成立過程
《時の流れに身をまかせ》は、三木たかしさんのメロディーが先にでき、そこに荒木とよひささんが詞を付けるという順番で完成しました。荒木さんは、
三木さんのメロディーは焦(じ)らす。「そばに」の「ば」のために、延々と積んでいる。その音のために書いている。
というふうに語っています。(BS-TBS 「テレサ・テン生誕60周年スペシャル たっぷり聞かせます 魅惑の歌声30曲」)
焦らし焦らしを重ねて積み上げてピークを作る。そこへきっちりと「いちばん言いたいこと」をはめこんでくる。
どちらも見事なプロの仕事です。
「時の流れに身をまかせ」型でないパターン
さて、世の中には「時の流れに身をまかせ」型でない歌もたくさんあります。
たとえば、大塚愛《さくらんぼ》(2003, 作詞・作曲:愛)がそうです。
同じ観点で見ていくと、この歌詞(の主人公)が「いちばん言いたいこと」とは、
君とつながってたい
です。
《さくらんぼ》に潜む問題点
でもこの曲をよくよく観察してみると、歌詞の「いちばん言いたいこと」とメロディー上のピークとがあまり合っていないのです。
《さくらんぼ》のメロディーの特性
「メロディー上のピーク」という表現を使いましたが、この曲に「ピーク」と呼べるほどのピークはありません。どちらかと言えばだらだらしたメロディーラインです。
そんななかで最も特徴的なのは、細かな譜割りで「たららららー」とくり返されるモチーフです。この部分の譜割りが、曲中で最も細かくなっています。
メロディーと歌詞のミスマッチ
大塚さんはその最も特徴的なモチーフに、「笑顔咲ク」「愛し合う」と2種類の歌詞を付けています。
詞が分けられてリフレインの効果が減殺されているのはまだしも、どちらも「いちばん言いたいこと」ではないのがミスマッチです。
「いちばん言いたいこと」を当てはめるべき部分が、そうなっていない。その点に、ちょっと仕事が荒っぽいなあという印象を受けます。
《さくらんぼ》の歌詞・別バージョン
この《さくらんぼ》の歌詞には、別のバージョンが存在します。重政豊(2008)によるものです。
重政バージョンでの歌詞で「いちばん言いたいこと」とは、
江田照男
です。
競馬ファンで知られ、妻の裕子さんにも「おたく」(5/19 情熱大陸)と称されるほどの林修さんなら、このバージョンの《さくらんぼ》をきっとご存じだろうと踏んでいます。
《さくらんぼ》の問題点を解決した男
それはそれとして、重政豊バージョンの《さくらんぼ》によって、「メロディーと歌詞のミスマッチ」という問題点が解決されました。
先ほど述べた最も特徴的なモチーフが、曲のまずどこに登場するかというと、冒頭です。ただ楽曲上は、ここはアカペラというかエコーというか、イントロダクション的な扱いになっていますけれども。
そしてこのモチーフに付く歌詞ですが、重政バージョンではすべて「江田照男」に統一されています。
整理します。
大塚愛《さくらんぼ》では、歌詞の「いちばん言いたいこと」と、メロディー上のピークが合っていない問題がありました。
これに対し、重政さんは次の2つを行って歌詞を付け直すことで問題を解決しました。
- メロディーのピークと言える最も特徴的なモチーフに、「いちばん言いたいこと」を持ってきた。
- くり返し現れる最も特徴的なモチーフの歌詞を、すべて「いちばん言いたいこと」である「江田照男」に統一した。
江田照男型の誕生
作詞・重政豊バージョンの《さくらんぼ》を聞けば、恐らくは誰もがこう思うでしょう。
それ「江田照男」言いたいだけちゃうんか。
そのとおり。
言いたいことは最初に言ってしまいましょう。最初に言ってしまえば、伝わっていないと感じたら「もう1回」もできます。
これが、「江田照男型」コミュニケーションの名称の由来です。
3.あと乗せ江田照男
「言いたいことは最初に」のバリエーションです。
私自身は、マツコ&有吉 怒り新党の「新三大○○調査会」のコーナー(2012年6月13日放送)から知った話です。
2012年3月24日、中山競馬場の第11レース「第60回 日経賞」(G2・芝2500m)でのことです。
このレースで、江田照男ジョッキーは人気薄だったネコパンチ号を駆ってスタート直後から大逃げをうち、そのまま逃げ切って勝ってしまいます。
単勝配当は1万6710円。出走14頭中12番人気の穴馬券でした。
※画像は、日経賞 大穴ネコパンチが逃げ切り優勝(リアルライブ)より 記述もリンク先をベースにしつつ書きました。
江田照男騎手がこのレースに勝てたのは、「言いたいことは最初に」の江田照男型の姿勢があったからです。
JRAのサイトに、レースの動画もあります。何度見てもぞくっときます。すごいです。えだてるお~
こちらからは以上です。
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