こんばんは。林修ナイトの時間です。
8月8日の夜、BSジャパンの生放送「日経プラス10」に林修さんが出演されていました。発言内容をテキストにしています。(1)からのつづきです。
「教育改革“今でしょ!”」と題するトークコーナーのゲストに招かれていました。
“大学全入時代”の教育のあり方とは
- 18歳人口
1992年 205万人 → 2012年 119万人 - 4年制大学の数
1992年 523校 → 2012年 783校
※「文部科学省 調べ」とのこと
―今後いわゆる「大学全入時代」に突入していくわけですよね。これによって学力が大学レベルに到達していない学生が増え続けるという問題が出ていると思うんですが、林さんはこれについてどうお感じですか?
「いや、もうおっしゃるとおりですね。ほんとに。あのぅ、合格最低点っていうのがたとえば赤本なんかに載っているわけですけれども、えっこの点数で大学生にしちゃったのっていう。まあ、だとしたらじゃあ大学で一体彼らは何を学ぶんだろう。小学校より中学校、中学校より高校、高校より大学の方が、難しい学問をすると仮定したならばですよ、この試験でこれだけしか取れなくて受かってしまったら、果たしてそれが実現するんだろうかと」
―私あのちょっと疑問がありまして。大学レベルって、そもそも、どのレベルなんですか? 大学レベルまで到達しないとかってよく言うじゃないですか。大学レベルって、どのレベルのことを言うんですか?
「いちおう高校の勉強をふまえてですね、そして専門性の高い学問をするっていうことになってまして、あのぅ僕自身の経験で申し訳ないですけど、大学の試験ものすごい難しかったですよ。大学の勉強はね正直こぼれましたね」
―あ、そうなんですか
「まあ僕の場合は非常に態度の悪い学生で、バイトギャンブルデート部活のこの4本柱をきれいに、はい」
―本に書かれてましたよね
「このローテーションをきれいに回したっていうこともありまして。あのぅここまで勉強が難しいと思ったことなかったんですよ。でも大学入ってほんとにびっくりしました。勉強って難しいんだなあって」
―高校時代のときに、高校でやるべき勉強ができていないまま大学に行っちゃう。それが問題だと。
「と思うんですよ。上のレベルの学問を積めるのかなと。違う能力を発揮する分野だったらあまり問題ないのかもしれないですけれども、やはり学問っていうのはこう基本的な思考力であるとか表現力っていうのは意外と高校の勉強の延長線上にありますから」
社会で勝つための日本語力
―林さんが考える、ニッポンの底力を上げるためのキーワードがこちらです。
- 解決と創造
社会で求められる「解決と創造」の力
―すごく壮大な感じがするんですが、これはどういうことでしょうか。
「もう、この2つに尽きると。人生において必要な力はこの2つだと。いつの頃からかそう思い込んでます」
―へぇー。どうしてですか?
「やはり社会に出て何かの問題が起きる。それをきっちり解決できる人、上手な解決ができる人が、世間であの人は仕事ができる人だと、言われますし、そして今までになかった、新しいものを創り出す力があれば、それもまた、あの人は素晴らしいと、こう言われますから、どちらか、まあ両方あることが望ましいんですけれども、これがあれば、えーまあ世の中に出てから、そんなに困らない」
―この2つの力をつけるためにはどんな能力が必要になってくるんですか?
「僕はね、自分がね右側あんまりないんですよ」
―創造ですか?
「ええ」
―え? でもご自身の授業ってけっこう自分で内容を考えて、プレゼンするんですよね
「いやぁー。もちろんやりますけど、それはこういう、目の前にこういう生徒がいるから、この生徒たちの、ニーズに応えるって問題を解決してるんですよ」
―あぁ~~。 …え?
「いや僕ね、ほんとにクリエイティブな頭を持ってるって自信があったら、理系行ってましたね」
―あ、あたしたち理系なんです
「あ、そうなんですか。あぁ」
―まあレベルが全然違うんですけどね
「ほんともう僕ね、よく人に自分の中でどこが好きって言われて左脳って答えるんですよ。自分の中でどこが嫌いって言われて右脳って答えるんですよ。ほんとダメなんですよこいつ」
―そんなことないですよ。あの、この2つの能力、これを使うためには言葉を使う能力を高めることが必要とおっしゃっているとお聞きしてるんですが、これはどういうことでしょう?
「はい。ですから僕はどうしても自分ができることとして解決の方なんで、解決は基本的に言語力です」
―ほう
「ええ。言葉の力、言葉を用いて考える力があれば、こちらは強くなります。こちらの能力が上がる、レベルが上がります。創造の方はねぇ、やはり僕自身がわかってない、これはね別の専門家の方にぜひ、どうしたらクリエイティブなね、人間が生まれるか。たぶんね、ひとつは空間把握力だろうなっていう、ヒントはあるんですけど、なにぶん自分にないんで」
―解決の部分は、目の前にある問題っていうものから解ける形にそれを腑分けしていくというか
「そういうことも大事ですよね」
―そういう能力。それで言葉に置き換えていく。どういう構造を持った問題なのかみたいな。それもある種創造的な、活動ではないかと思うんですけれど
「いやあ、違うんです。それはねほんとに目の前に見えている問題をですね、まずわかるものとわかんないものに分けていくんですよ。名前つけながら分けてってやってると最終的に、考えなきゃいけないのはここだけだなっていう、そういう作業になってくるんで」
考える力を養う読書の重要性
―先ほどお話に出た言葉を使う能力というのは、どうすることで高めることができるんですか?
「これはまず読書ですね。まず本を読むことと、そしてしかもよくわからない本を読むこと」
―よくわからない本を読む?
「これ大事なんです」
―苦痛ですけど
「いや、それ、それを周りが教えてあげないと」
―えー。よくわからないことが大事なんですか
「いや、人間にとって大事なのはわからない、尊いのはわからない時間ですから。わかっちゃうなんてつまんない話ですよ」
(今はネットでちょっと調べると目の前にある問題の一応の答えがパッと出て来る環境なので、それで問題を解いたと思っちゃう、考え続けるっていう脳の活動をあまりしないでもすむような時代になっている)
「おっしゃるとおりで。ほんとにいま過剰にわかりやすさが求められて、わかるでしょわかりやすいでしょっていうんですけど、僕自身が楽しかったのはわかんなかったことですよ」
―あぁー
「中学の時に、親父に漱石はすごいぞって言われて、いくつか読んでみて親父にニヤッて言われたんです読んだって言ったら。わかんないだろって」
―それが面白かった
「面白かったですね」
―そうなってきますとある程度大人の影響力がありますから、そうするために大人はいま何をすべきなんでしょうか
「なんでわかんないのって言っちゃダメですよね。わかんないんだそれはとっても尊いことだよ。一緒に考えようか。わかんないことをみんなが考える。そのわかんないこと自体に価値を見いだすっていうことをしていかないと、考える頭ができない。で考えれば絶対そこで言葉を動かしますから、言葉を動かして考える、それが楽しい。かといって、答えが出なくてもいいよと。そういうふうにして、考えること自体を楽しめる子供にしてあげるっていうことが、僕はとっても大切だと思ってます」
(ビジネスの現場でもわからないこと、未知の状況が次々起こる。わからないことに向き合う力が重要)
「そうですね。はい」
―ありがとうございました
「ありがとうございました」
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