「今年の新語」警察ガチ勢が、「一人で斉唱」警察に投降を呼びかけます。
この記事で言いたいこと:Executive Summary
右や左の日本語警察のダンナ、
もう、「一人で斉唱」認めていいんじゃないですかね。
「国歌斉唱するMISIA」
これが一般人民のリアルな言語感覚なのですから。
※iza.ne.jpより(2021/07/24付)
※写真と本文はそこそこ関係あります。
日本語警察的「もやモ屋」2021夏
東京オリンピック開会式の翌日に、なんともモヤモヤするツイートがやってきました。
それがこちらです。
東京オリンピックの開会式で君が代を歌ったMISIAさん。「国歌を斉唱」と決まり文句のように言ってしまいがちですが、斉唱は「同一旋律を二人以上でうたうこと」(広辞苑)。歌手が1人で歌うような場合は「独唱」になるので、「斉唱」とは言えません。https://t.co/yinUAUNpkN
— 毎日新聞 校閲センター (@mainichi_kotoba) July 23, 2021
もやもやします。Eテレの「もやモ屋」以上にもやもやします。なんだろうこれ。
少し、考えてみました。
このツイートの主張はまったく正しいです。別の言い方をすると、規範どおりです。なのに、この世の現実はズレています。
規範と現実のずれ、簡単にまとめればそれがモヤモヤの正体のようです。
斉唱の人数をめぐる「規範」と「現実」をぐるぐると見てゆくことにしました。
意外と“低普及率”な「斉唱」人数のルール
- 斉唱は2名様から
- 「おひとりさま」なら独唱
一般人の平均から見れば音楽好きを自称していいだろう私にとって、それは常識の部類でした。けれども2016年のあるとき、意外とみな知らないんだと思い知らされました。それで当時こんな記事も書いています。
以来、誰かが「国歌斉唱」するたびに、ちょびっとだけアクセスがあります。
MISIAさんが「ひとり国歌斉唱」したメディアたち・2021
次に現実を見てゆきます。
2021年7月の東京で、MISIAさんが「国歌斉唱」したと伝えたメディア系のTwitterアカウントを集めてみました。順不同です。
MISIAさんが国歌斉唱https://t.co/bStLpddS2R
— 共同通信公式 (@kyodo_official) July 23, 2021
MISIAが君が代斉唱 東京五輪開会式/東京五輪/デイリースポーツ online https://t.co/PuSIhYVcTU #五輪 #東京 #オリンピック #DailySports
— デイリースポーツ (@Daily_Online) July 23, 2021
【 #開会式 】国歌斉唱MISIA、音楽活動と並行して社会貢献活動にも積極的 10年以上アフリカを支援 https://t.co/0D1vnIC20W #芸能ニュース #ニュース
— スポーツ報知 (@SportsHochi) July 23, 2021
オリンピック開会式、MISIAさんがレインボードレスで国歌斉唱。手がけたデザイナーはhttps://t.co/0D6o3vpT1I#東京オリンピック#Tokyo2020#東京2020#開会式
— ハフポスト日本版 / 会話を生み出す国際メディア (@HuffPostJapan) July 23, 2021
大坂なおみが最終聖火ランナー!“解任・辞任ドミノ”を経た開会式…ドラクエなどゲーム音楽が行進曲、MISIAが君が代斉唱、ONと松井登場で東京五輪開幕(NumberWeb編集部)#Tokyo2020 #東京2020 #オリンピック #開会式 https://t.co/G1UQ0XO1wi
— Number編集部 (@numberweb) July 23, 2021
#東京五輪開会式 の多彩な出演者にさまざまな反響 #MISIA の国歌斉唱は賛否両論 #劇団ひとり にMr.ビーン 重ねる視聴者もhttps://t.co/BoGrXGZs9N
コロナ犠牲者に捧げるコンテンポラリーダンスを披露した #森山未來 のキャスティングには「壮大な皮肉」との声も
— イザ!編集部 (@iza_edit) July 24, 2021
むろん、「独唱」や「歌う」あるいは単に「君が代」としていた他のメディアも同数以上ありました。でもそちらはカット。
2016年との比較
オリンピックと規模はだいぶ違いますが、2016年3月には今井絵理子さんが同じく反社の開いた集会で君が代を歌っています。これを各メディアがどう伝えたか、当時調べて記事にしました。
結果から抜粋しますと、先ほど挙げた各メディアのうち、このときも共同通信は「国歌斉唱」でした。
今井絵理子氏が君が代斉唱 - 自民党大会でhttps://t.co/H9c2RJJtOX
— 共同通信公式 (@kyodo_official) March 13, 2016
安易に結論づけてしまいますが、共同通信は「斉唱おひとりさまの壁」への圧倒的破壊勢力だと言えます。
先掲の他メディアは年により記事により「斉唱」「独唱」と混在していて、まちまちです。ひとつの記事の中で、本文や写真キャプションなどに「斉唱」「独唱」が同居する例もままあります。
他方、多くの新聞メディアは、内部の校閲で取り締まっているからでしょうか、「ひとりで斉唱」は見られません。しかし逆にいえば、Webメディアで「ひとりで国歌斉唱」を拒絶しているのは新聞社ぐらい、という話にもなります。
なお先ほど挙げた「2021年版」のうち、ハフポストは「一人で斉唱」警察の取り締まりを受け、訂正を出して「転向」してしまいました。
【訂正】記事・ツイート内で「国歌斉唱」と表記していましたが、斉唱ではないため、記事の表現を修正しました。また記事内で、「国歌」を「国家」と誤記している部分があり、訂正しました。
— ハフポスト日本版 / 会話を生み出す国際メディア (@HuffPostJapan) July 24, 2021
いかんです。
さらにひとつ、気になる方がいるといけませんので付け加えておきます。「一人で斉唱できるバカ」と強めに煽るなどして、私も2016年時点でどちらかと言えば抑圧する側にいたのは事実です。けれど5年も経てば、価値観もアップデートされるわけです。
校閲、その罪と罰 ~「斉唱」への抑圧をめぐって~
さかのぼってみると、内部検閲を行うこの日本語自警団、いや、@mainichi_kotoba アカウントは2014年から「ひとり斉唱」を取り締まっていました。確認できた最も古いものを埋め込んでおきます。
全日本学生音楽コンクールで1位に輝いた生徒が歌声を披露したという記事。「君が代を斉唱した」とあったが、「歌った」と改めた。「斉」は「そろえる」「合わせる」という意味の字で、「斉唱」は「2人以上が同一の旋律を同時に歌うこと」(明鏡国語辞典)。1人で歌う際に用いるのは不適切だ。〔植〕
— 毎日新聞 校閲センター (@mainichi_kotoba) May 14, 2014
以降、2021年の現在に至るまで同工の発信をいくたびかくり返しています。
完全に一致…‼️ https://t.co/OR5tkfIXZh
— 毎日新聞 校閲センター (@mainichi_kotoba) January 20, 2021
といった馴れ合い、もたれ合いも見られたりします。
これら日本語警察24時をほうふつとさせる発信に対するリプライや引用リツイートを見てゆきますと、異議を唱える反応もあるにはあったのですが、なかなか「有効打」が出せていない状況でした。
鬼越トマホークっぽく言ってみた
※画像は鬼越トマホーク プロフィール|yoshimoto.co.jpより
そこで、鬼越トマホークのケンカ芸のフォーマットを借りて
斉唱は「同一旋律を二人以上でうたうこと」(広辞苑)。
1人で歌う際に用いるのは不適切だ。
みたいな言いぐさに、なんと返せば有効かを考えてみました。
坂井さんパートだけ3案です。
うるせえなぁ! お前、辞書を教科書と思ってるだろ。
うるせえなぁ! 『華氏451度』のファイアマンかよ。
うるせえなぁ! お前のそれ、マイナスのフィードバックなんだよ。
本当は思ってないと思うんですけど、いろいろ浅はかなんで、もうちょっと考える力つけた方がいいんじゃないかって思ってるだけだと思います。
これだけだとケンカ腰のまま終わってしまいますので、続けてそれぞれの趣旨を詳しく述べてゆきます。
と、いきたいところですが長くなりそうなので一度区切ります。
ジョン・レノンの《Power to the People》でいったんお別れです。
パワ~トゥ~ザぴーぽー パワ~トゥ~ザぴーぽー
つづく
【8/1追記】中編できました。
【8/8追記】後編できました。
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