ヤシロ(500さい)です 。ボーっと生きてます。
土曜(2020/02/15)朝の再放送をボーっと見ていたテレビ番組について
『チコちゃんに叱られる!』で「湯船」というのは江戸時代に風呂を設けた小船を「湯船」と言ったからと言っていましたが、これは間違いです。なぜなら、「ゆぶね」という言葉は、平安時代の『和名類聚抄』にまで遡るからです。
— 平塚 徹 (@locutorscriptor) February 15, 2020
ちょっと調べると《村山文書20》(801年)に”湯船弐隻”、《東南院文書3-41ー101》(852年)に”湯船一隻、風炉一具”、《東大寺文書4-86》(861年)に”湯船壱口”・・・とあって《和名類聚抄》(934年)よりもう少し遡れるみたい。しかも単位は「隻」なのが興味深く、貞観(859ー877)以降は「口」と数えている。 https://t.co/Cat3RT6fSm
— 拾萬字鏡 (@JUMANJIKYO) February 15, 2020
などなど一部界隈で盛り上がっているので、問題となっている放送内容をテキストに起こしました。検証材料としてご活用ください。
「見逃し配信」の方がより原典に近い資料なのでしょうけれども、どうやら「チコちゃん―」の場合、放送後2週ほどで見られなくなるみたいですので。
以下、出典を示したもの以外の画面キャプチャは、すべてNHKオンデマンド>見逃し番組>チコちゃんに叱られる! が取得元です。
≪#チコちゃんに叱られる!≫「大根おろしの不思議」「お風呂と湯船にまつわる疑問」「エスカレーターの謎」… 身近で素朴な疑問をとことん掘り下げると不思議で奥深い世界が見えてくる!? #前田敦子 #土田晃之 #NHKオンデマンド で配信開始! https://t.co/Njk1jFYrqD
— NHKオンデマンド (@nhk_ondemand) February 15, 2020
言わずもがなですが、「岡村」とはナインティナインの岡村隆史さん、チコちゃんの【声】は木村祐一さん、ナレーションの【語り】は森田美由紀さんです。(過去の放送ページより)
なんで浴槽のことを湯船っていうの?
チコ)ねえねえ岡村、この中で一番、お風呂に、ゆっくり入れないくらい毎日忙しい大人ってだーれ?
岡村)ちょっと、俺いっていいですか、ちょ大河の件もいろいろあるんで
チコ)なるほど
岡村)じゃあ私いきます
チコ)いきましょう。たまにはお風呂にゆっくりつかりたいでしょ?
岡村)そうですね何か疲れが取れるのかなあということで、はい、入ったりします
チコ)お風呂のなににつかりたいの?
岡村)湯船
チコ)湯船ね
岡村)はい
チコ)あれ?なんで「浴槽」のことを「湯船」っていうの?
岡村)あのやっぱりぃー、こう……えー?
土田)そうか
チコ)えーって言っちゃったわねやっぱりね。うん
岡村)船乗りがぁー、あのー例えば昔川とかじゃ、じゃじゃじゃないちゅか。船乗りは船でバーッといってしまいますと海水やともう結局パリパリなりますやんか、塩で
チコ)お肌がね
岡村)はい。そのために、船に、そういう水をためて、体を、まあ温(ぬく)めたりであったり、えーこの汚れを取るという、ことを、うー、するためにぃーですねぇ
チコ)政治家か
岡村)船の中に
チコ)船の中にあるのはいいんだけど、船乗り用のやつなの?
土田)あら?
岡村)いや、そうとは限りません
チコ)あら、やらしいやらしい
ひとまず、言わせてください。
ボーっと生きてんじゃねーよ!
岡村)あかん
チコ)かすってんだけどね
前田)かすってるんだ
岡村)ちょっとチコったんだね。ファールぐらい
「浴槽」のことを「湯船」というのはなぜ?
ナレーション)今こそ全ての日本国民に問います。「浴槽」のことを「湯船」というのはなぜ?
東京・銭湯
ナレ)今まさに湯船から出てきた方々に聞いてみました
- 船に乗ってる感覚になるからですか?
- なんですかね。難しいっすわかんないっすわそれ
- 湯船ってお湯の船って書くよね? よくわかんないよね
岡村)ははははっ 潔(いさぎい)いねぇ
ナレ)なぜ「浴槽」を「湯船」というかも知らずに、「お風呂上がりのコーヒー牛乳は格別」だの、「フルーツ牛乳は格別」だのと言っている湯船好きの皆様、お風呂上がりといえば
- あぁ~、やっぱ風呂上がりはビールだな!
ナレ)ですよねぇ
ナレ)それはさておき、チコちゃんは知っています
「浴槽」のことを「湯船」というのは
「湯船」という船があったから~
岡村)まあそういう意味やったけどね
チコ)なに?
「湯船」という船があったから
ナレ)「湯船」という船があったから
- さすがチコちゃん! よく知ってるね~
僕はね、牛乳派ですよ。
チコ)わっかりました!
東京・目黒区
ナレ)詳しく教えてくださるのは、2度目の登場、庶民文化研究家の町田忍さん
土田)こないだも出てたな
町田)えーと「湯船」というのはですね、江戸時代に船の内部に浴槽を造り、まあ岸とかまあ川筋にこぎ寄せて
町田)入浴させていた、「船」のことですね。「湯を積んだ船」ということから、そう呼ばれました。その船自体残ってませんが、絵なら現在でも残ってます
ナレ)江戸時代の船の図鑑、『和漢船用集』に描かれていた船がこちら。
出典:(畫圖)和漢舩用集 12巻 五(233コマ目)|京都大学貴重資料デジタルアーカイブ
前田)そんな古いんだ
ナレ)船の全長はおよそ10メートル、中央にある小屋の中にお風呂があったそうで、
前田)えーどうやって作ったんだ
ナレ)小屋からは湯気が漏れ、お風呂に入ろうとする裸の人も描かれています
前田)恥ずかしい
岡村)ほんまや
土田)まあこれはこれでいいね
ナレ)でも実際どんなお風呂だったかも見てみたい。すると、
町田)えーと実はですね、わたくしあのー、その「湯船」を再現したジオラマを作りました
チコ)あら、すごい
湯船のジオラマ
町田)これなんですよ~
ナレ)こちらが町田さんが再現した湯船のジオラマ
町田)これはあのー僕が調べるだけ調べて、こういう形にしたのでかなり正確だと思います
スタッフ)ちなみにこの人は?
町田)えーと、この人が、湯船のオーナーですね
オーナー1人で商売
町田)この人はここでまきを焚くわけです。で岸に着くとこのホラ貝を吹いて、来たことを知らせることがありました
岸に着くとホラ貝を吹いた
ナレ)そして、お風呂の様子は
町田)これ中を見やすいように、屋根を取れるようにしたんです。開けますよ。はいオープン
岡村)電気もついたあるやんこれ
町田)混浴ですねこれは
スタッフ)江戸時代は基本混浴?
町田)あの、両方ありましたから。混浴も別浴も。
町田)屋形船はまあ構造上分けることができないので混浴だった可能性が高いです
屋形船
構造上分けられない→混浴
なぜ「湯船」はできた?
ナレ)しかし、なぜこんな船ができたのでしょうか?
江戸時代初期
ナレ)このころ、江戸の町は水道の整備が不十分で自宅にお風呂があるのは上級武士だけでした。当時の庶民のために生まれたのが銭湯。最初に登場したのが
町田)「戸棚風呂」といいまして、蒸し風呂なんですよ。つからないんですよ。完全に今のサウナと一緒ですね。蒸気で
戸棚風呂
サウナのように蒸気で熱くなった蒸し風呂
ナレ)しかし、たくさんの人がいっぺんに入れないという欠点が
たくさんの人が同時に入れない…
ナレ)そこで、多くの人が同時に入れる、今の銭湯に近い浴槽のあるお風呂が作られます。これらの銭湯は都心部に集中しており、郊外に暮らす人びとはなかなか行けません
郊外の人は銭湯に行けない
ナレ)そんな郊外の人のために作られたのが、船の上に浴槽を載せた移動式の銭湯「湯船」。当時の江戸の町は地方から海産物や木材などを積んだ船が行き来するため、町には運河や水路が巡らされており、湯船は至る所で商売をしていました
江戸のまち
海産物・木材を積んだ船が往来
→運河や水路が巡らされていた
湯船→運河・水路で商売
町田)江戸時代最盛期570軒、陸(おか)の銭湯がありましたから、ま100軒はないにしても、まあそれに近いぐらいはあったかもしれませんね
ナレ)町田先生によると、この湯船、郊外の人たちにかなり人気が高かったそうです。さらに
郊外の人たちに大人気!
町田)料金はだいたい陸の銭湯が8文のときに160円ぐらいかな、その大体半分ぐらいといわれましたから、まだいたい4文前後ですね
銭湯
8文(現在約160円)
湯船
4文(現在約80円)
スタッフ)なんで安かったんですか?
町田)川からいくらでも水が取れたっていうことと、あと設備が陸の銭湯よりシンプルでいいっていう。維持費があんまりかからない。そういうことで安かったわけです
設備がシンプル
維持費がかからない
土田)ということは川の水ってことか
ナレ)そう、湯船は川の水を沸かしてお風呂にしていたため、価格を抑えられたそうです
湯船は川の水を沸かし
お風呂にしていた
土田)そのころはきれいか
ナレ)安さと機動力を駆使して江戸の町で一大ブームを築いた湯船
安さ&機動力で大ブーム
ナレ)郊外に住む人などにとってお風呂イコール湯船だったため、「湯船」という言葉が浴槽と同じ意味で江戸から全国に広がっていったといいます
ひとこと
ざっと下調べした感触からいくと、こちらの「なぜ湯船はできた?」のセクション、半分以上がでまかせのフェイクです。つづきは別の記事で。
先生が入ってみたいお風呂
スタッフ)先生がこれから入ってみたいお風呂みたいなのあるんですかね
町田)僕が入ってみたいのは江戸時代の、混浴銭湯を再現して入ってみたいですね
スタッフ)先生混浴が
町田)混浴じゃなくてもいいんですけど…まあ、あのー混浴でもいいですけど、ええ
「お風呂と湯船」まとめ
ナレ)ということで、
「浴槽」のことを「湯船」というのは…
江戸時代に「湯船」という船があったから
ナレ)でした
町田)チコちゃんの、好きなお風呂はどこかな?
チコちゃんの好きな風呂
チコ)大阪の、トミーズ雅さんの家のお風呂
岡村)ああ!大きいんですよね
チコ)すごい大きい。大人3人余裕。自宅のお風呂でね。富士山の絵が描いてあるのよ
岡村)そうそうそうそう
チコ)岡村おわかりいただいた? 惜しかったーん
岡村)ちょっと湯船の船の形まで、入り口がそこやったんで、あーまあちょっとしょうがないですねこれは
チコ)そういう商売だったのね
岡村)商売なんですね
土田)あとあの先生あれですね、銭湯の富士山の絵のときに出てた先生ですね
チコ)そうね。あなた、マニアックすぎ。さすがねえ
「銭湯に富士山の絵が多いのはなぜ?」2019年12月13日放送
次回予告
ここまでざっと本件の調査を進めてきて、既に結論は出ています。
- 「浴槽のことを湯船という」
→事実です。 - 「江戸時代に『湯船』という船があった」
→事実です。 - 「浴槽のことを湯船という」のは「江戸時代に『湯船』という船があった」から
→でたらめです。
「結論の補強」と「反論への守り」の両方を兼ねて、周辺領域を含めあと数点文献取り寄せているんで、報告までもう少々お待ちください。
たぶん全方向を叱る地獄絵図です。誰得?
つづく
更新履歴
- (2020/02/18)脱字、発言者、漢字表記をそれぞれ1か所訂正しました。
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