お久しぶりです。ほぼほぼの権威です。自称じゃないのがツライ。
三省堂 辞書を編む人が選ぶ「今年の新語2017」の募集が始まっていますね。
以下、三省堂「今年の新語」または、単に「今年の新語」と表記します。
要約:Executive Summary
三省堂「今年の新語」へ、ほぼほぼの権威が愛称をプレゼントします。
「ジラ」です。
こんな感じで
彼氏とデートなう。
に使っていいよ。
Powered by 怪文書ジェネレータです。
用件は以上です。
以下は【好事家向け】
あとは好事家向け。
- なぜ愛称がいるのか?
- なぜ「ジラ」なのか?
を、まずQ&A形式で端的に、あとはだらだらと語ります。
あわせて、普段は反応しない流行りのワードにも前のめりで乗っかっていきます。実は、既に始まっております。
そんな、自分だけが楽しい自分ファーストの俺フェス記事です。
「ジラ」早わかり【Q&A】
Q. 「ジラ」ってなに?
三省堂「今年の新語」の愛称だよ。
Q. なんで愛称がいるの?
発表後に、「昔からあった」とか「今年?遅くない?」とか「新語か?」とか、趣旨が伝わっていない残念な反応をなるべく見聞きしたくないからだよ。
Q. どういう意味なの?
辞書に載せたい日本語ランキング の頭文字だよ。「ベア」の手口に学んだよ。
Q. なんで短くしたの?
ニュース記事の見出しに使ってほしいからだよ。「ジロ・デ・イタリア」の手口に学んだよ。
例)ロランが終盤の抜け出しでジロ初優勝 総合有力勢は“嵐の前の静けさ”|cyclist(2017/05/25付)
Q. じゃ「辞ラ」でよくない? なんで「辞」もカタカナ?
もっと好きに解釈してほしいからだよ。「シン・ゴジラ」の手口に学んだよ。
もうひとつ、拡張性に優れてもいるよ。「ジラ2017」とか「ジラ隊」とか「ジラす」とか、ちょい足しして多彩に使えるし、使っていいよ。
Q. ああ、今年の新語「ジラ」2017なんだね!
そんなとこです。
Q. つまりこういうことでしょ?
三省堂 辞書を編む人が選ぶ
今年の
2017。だね?
その指摘は当たらない。
東宝さんに筋を通すまでは、これがほぼほぼ公式回答だよ。
あれが、ジラ2016「ほぼほぼ」か。
(C) 2016 TOHO CO., LTD.
images from shin-godzilla.jp, gigazine.net
Q. ヒマなの?
はい。
Q. 死ぬの?
いいえ。
贈呈理由
愛称「ジラ」を通じて、「今年の新語」にわか勢との円滑な意思疎通を図ることを第一の目的とします。
ライトなにわか層をスムーズに取り込み、「今年の新語」業界の発展に寄与することを目指します。
「今年の新語」#ここがすごい
突然ですが、三省堂「今年の新語」のここがすごい!
<ひと言で言えば> とっても有能
- どこまでも「ことば」が主役。 有能
- だから受賞「者」がいない。大賞が「ほぼほぼ」でも、宮根誠司さん出てこない。 有能
- 選考基準「今後の辞書に載せてもおかしくない」が絶妙。未掲載の新語にフォーカスしながらも、適切に選考するためには世相や流行を考慮に入れなければならないようデザインされている。 有能
- 要は「ことば」への幅広い視座が要求される。 有能
- 「辞書を編む人が選ぶ」ゆえの、納得の選評。 有能
- 便乗してはしゃぐだけでは堪能できない。だが排除はしていない。「便乗はしゃぎ」もそれなりに楽しめる。 有能
- 全方位に配慮がある。ゆえに炎上しにくい。 有能
- 選考・発表の期日。完全に「あちら」の手の内を全部見て実施でき、かつ時期が離れないような日程を組んでいる。 有能 かつ、意地が悪い
という具合に、非常に知的レベルの高い遊びなわけです。熱盛!
ここがダメ
半面、三省堂「今年の新語」には、
- 趣旨が即座に伝わりづらい
という難点があります。
「辞書を編む人が選ぶ」が省略され、「今年の新語2017」のように伝えられがちであるためです。
この点に関して、運営サイドからは
「今年の新語2017」の「新語」の定義は、今年誕生したかどうかにかかわらず「もうそろそろ辞書に載っていいことば」ということです。まさに今年、何かのきっかけがあって、「ああ、これは辞書に載っていいな」と思われた、その空気感のようなものを記録したいわけです。
— 飯間浩明 (@IIMA_Hiroaki) 2017年9月2日
など再三周知されており、加えてWebサイトの「今年の新語」とは?でも大変に真摯かつ丁寧な説明がされておるわけですが、便乗はしゃぎ層を含むにわか勢にとっては知ったこっちゃありません。
サンプル:「今年の新語2016」への反応
事実、昨年末に「今年の新語2016」発表を伝えるニュース記事が配信されると、Twitterではこういう反応が出ております。
今年の新語、「えっ今年かな?」というのがけっこうあるなー。
— ⁽⁽(ી( ・◎・ )ʃ)₎₎ (@taco_chi) 2016年12月5日
今年の新語、ほぼほぼとかエゴサ あたりは結構前から使われてた気がする
— いなみせりの@いのりまち町民 (@titech_pyonpyon) 2016年12月5日
ラインナップがとても「今年」の新語とは思えない。
— 80式つな近代化改装中 (@tuna7044) 2016年12月5日
ほぼほぼって新語なの??昔から使ってたけど
— 365日全部捧げる人生が始まった浅葉 (@asaba_saya) 2016年12月6日
「今年の新語」の選定基準とは?エゴサもエモいも何年も前からあるよね?
— MORIZO (@MRZ_0226) 2016年12月6日
あと関係ないけど、これ好き。
宮根誠司は『ほぼほぼ』普及委員。
— izfan (@izfan51) 2016年11月29日
解決プランの検討(1)問題設定
こうした反応は、「今年の新語2017」発表後にもきっと起こります。ほぼほぼの権威としても、そのような周回遅れの反応は見たくない。逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい。これは官邸の最高レベルが言っていること。
しかしだからといって、そうした「ご新規さん」をあれこれ侮蔑したり、さらには排除したりするのは愚の骨頂です。
カープ女子の例でも明らかですが、シーンを大きく盛り上げるのに欠かせないのは「なんか面白そう・楽しそう」程度のごく軽い動機で吸い寄せられてきた「にわか」の存在です。彼ら彼女らをことさらに敵視し排除しようとするのは誤りです。シーンの発展を阻害するのみならず、時にはジャンルそのものを殺します。
ある人は、イギリス人の書いた『国宝消滅』(2016)を中途半端に受け売りしてこう言いました。
どんなジャンルでも一番のガンは文化学芸員と呼ばれるゆきすぎたガチ勢だ。連中には観光マインドが全くない。一掃しなければダメだ。
けものはいてものけものはいない。
にわか勢のフレンズにも門戸を開いておくことが、よりよいあり方なのであります。すごーい。
使いかた合ってる?
ではどう解決したものか。それがここでの問題設定となります。
解決プランの検討(2)
どこに手を付ければいいのでしょうか。
「今年の新語」の企画内容そのものに手を入れるべきではないことは半ば自明でしょう。非常によく設計されているものが、劣化する方向に性格が変わってしまいます。
であれば、手を打つところは名前です。その「体」を過不足なく表せる「名」がない、または、あっても届いていないから、こうした問題が起こっているわけです。
名称についてふり返っておきましょう。
発足初年度の、ほぼほぼ飯間浩明さんの個人プロジェクトだった2014年は「今年からの新語 2014」でした。掲載サイトも、個人で開設されたところのようです。
からの翌年、飯間さんが三省堂に企画を持ち込んで「今年の新語2015」となり、そこから数えると今年が3回目の開催となると。概ねこういった経緯をたどってきたものと承知しておるわけであります。
今年からの新語(2014)→ 今年の新語(2015, 2016) → ?
系譜を壊さずに、より一層この企画の「体」を表せる「名」とはなんだ?
いろいろ考えてはみましたが、あいにくと、総合評価で上回るものが出てきませんでした。力不足です。
「今年の新語」とは?の説明内容とセットならば、「今年の新語」で十分事足りています。
ちょい足しソリューション
じゃあ「今年の新語」にないちょっとした違和感を最初に与えられるよう、何か足すべ。となりました。第3項書いちゃおうという加憲の考え方です。
ほかに代案はありません。プランの確度を上げるだけです。でもって、考えうる限りの最良の愛称としてひねり出したのが「ジラ」というわけです。
ほぼほぼの権威としての考え方は、読売新聞に相当詳しく書いてありますから、ぜひそれを熟読していただきたい。嘘です。
贈呈までの経緯
愛称「ジラ」贈呈に至るまでの経緯を、時系列にそって書いておきます。
去年(2016年)のことです。どこか理不尽に嫌われている気がして、「ほぼほぼ」のことをもう少し知りたくなったのです。そしてひとまずの研究成果を共有するため、
日本一「ほぼほぼ」に詳しくなれる研究ノート【リンク集】 (公開:2016/07/01)
として公開しました。
これを、あろうことか飯間さんに見つけられてしまい
「#とと姉ちゃん」(114)で常子が「ほぼほぼ同じ」と言ったため、「この時代(1950年)に言うのか」との発言がTLに多数。考証的に違和感はあるけど、「ほぼほぼ」の権威ヤシロタケツグさんは、1949年の国会会議録から例を拾っています。https://t.co/Y1CQsgbNye
— 飯間浩明 (@IIMA_Hiroaki) 2016年8月13日
あたかもですね、私が権威とずぶずぶの関係であるかのようなですね、非常に悪質な印象操作をですね、されてしまったわけです。
という経緯で「今年の新語」に注目することとなった次第です。
余談:2016年のアレオレ
でありますから、「今年の新語2016」の選評にはこのような記述がありましたが、
日本の国会での全発言を記録した「国会会議録」を見ると、すでに1949年、「ほぼほぼ」の例が現れています。意外に古くからあったんですね。
前述した経緯のとおり、これ先に見つけてたの、オレです。
つっても、これがもし新種の草花とか、魚とか昆虫とかの話だったら私も強く主張すべくしゃしゃり出たんでしょうけど、違いますからね。
不明生物のケースと何が違うかというと、自分の発見よりも前に、人が関与していることが確実であるところです。このケースで第一発見者と呼ぶにふさわしいのは、(おそらくは)発言どおりに記録して残した人たちでしょう。
- 1949年の国会会議録に「ほぼほぼ」と書いてある
これは一定の環境と資質を備えた人なら誰でも確認できるという意味での、明白な客観的事実であります。
したがって、ここに何か手柄めいたものがあるのならば、その何ものかは私にではなく、1949年の国会会議録が2016年時点のヒマなおっさんのところにまで結果的に届くよう、あちらこちらで営々と調えてきた人たちに帰するはずです。かかる営為こそが、かたじけなく尊いものでありましょう。
ほぼほぼの権威(飯間浩明さん命名)のこのワタクシも、ここ数日、諸メディアから「ほぼほぼ」どころか一切の接触がなく、すこぶる平穏に過ごしております。
スケベ心が満たされないのはもの寂しいですが、その事実にも企画の性格が反映されているように思えます。いいことです。 https://t.co/WXLrNkq7pt— ヤシロタケツグ【要出典】 (@yashiro_with_t) 2016年12月8日
というわけで、ネットやテレビで1949年の国会会議録にある「ほぼほぼ」の話題が出ているのを、そうだよ~知ってたよ~と見ておりました。
閑話休題。ジラに戻ります。
「じら」先行用例の参照
愛称の検討過程で、世の中にはどんな「じら」があるのか、先行する用例を探してみました。ネタかぶりがないか、また、あまりにひどい意味での用法がないかを確認するためです。
結論から言えば、Win-Winでいけそうと判断しました。
面白かったものを2つ3つ紹介します。
1)じら(山口の方言)
山口の方言「じら」は「わがまま」の意味だそうです。
じらをくる
(駄々をこねる)※ 「じら」を言う人のことは「じらくり」「じらくい(むし)」。
出典:じら(山口の方言)|goo辞書「日本方言辞典」
県内どのあたりなんでしょうかね。4区?
2)じらたい(東近江の方言)
「じらたい」は滋賀県東近江市の方言で、「はっきりしない」の意味だそうです。『まるごと東近江市大百科』(2008)に記載がある由。
参考:方言|東近江的な日々(2012/06/01付)
関与はあったのか、不当な働きかけはあったのかなかったのかなどを質したときに、使うんでしょうかね。
小まとめ:「じら」はあった
どちらの「じら」も通常あまりいい意味で使われる言葉ではないようで、その点については私は大変申し訳ないとは思いますが、しかし、あったものをなかったことにはできないと、いうことで、えー申し上げたいと思っているわけです。
先行する用例は、ありました。
3)自ら隊(警察用語)
その名も「自ら隊」という警察用語が見つかりました。先に言います。活用例「ジラ隊」はここからのパクリです。
各都道府県警察本部において、各警察署の管轄区域を超えた各都道府県内全域のパトロールを行うことを主な任務とする組織である。(Wikipedia)
という「自動車警ら隊」のことを
警察内部では自ら隊(じらたい)と略称されることが多い。
(同)
のだそうで、めっちゃ面白い。よくぞ使ってくれてましたとお礼したいほどです。
公的文書を探すと、高知県警察本部の用語集が見つかりました。
訓令、通達等に用いる用語で、次の表の左欄に掲げるものは、別に定めのある場合を除き、それぞれ右欄に掲げる意味に用いるものとする。
この表中に「自ら隊」があります。
出典:[PDF] 用語の定義に関する訓令(昭和37年5月9日 高知県警察本部訓令第9号)p.2 より抜粋
初出は1960年代か
前掲の訓令は、年1に近いペースで改正されていたので「自ら隊」が初回発出日の昭和37年当時から使われていたかは不明です。
ただ、国立国会図書館のデジタルコレクションで「自ら隊」を検索すると、1960年代の警視庁の会報誌「自警」の見出しに次の用例がありました。
ほほえましい豆まき風景 / 二自ら隊
出典:国立国会図書館デジタルコレクション > 警視庁警務部教養課 編 自警 45(3)(1963)目次
ですので、自動車警ら隊の発足とそう違わない時期に「自ら隊」の略称も生まれたものと推察しています。
日本語警察「ジラ隊」の誕生
さらにさらに、こんな記事まで見つけました。※下線は引用者
同じ黒白のパトカーで街を走っていても、自動車警ら隊と所轄警察署の警らとでは、その姿勢が大きく違います。自動車警ら隊は「自ら隊」とも呼ばれ、警察署の管轄を越えて県内全域で活動。
道行く人の不審な行動や街のちょっとした異変に目を配っているのが自動車警ら隊のパトカー。
出典:パトカーは自動車警ら隊と所轄で違っている|ラジオライフ.com
「元自動車警ら隊の車長が語るパトカーの内部事情」という体裁で、かつ日付情報も見当たらない記事であり、信頼性には一定の留保が必要でしょう。
それでも控えめに言って、最&高です。
つながりました。
- 管轄を越えて全域で活動し、
- 人の不審な語法や街のちょっとした異変に目を配る
日本語警察「ジラ隊」の誕生です。
※写真はイメージです
TOYOTA 170 system Crown police car(2005) from commons.wikimedia.org
出動サイレンは、これがいいと思うのね。
『宇宙大戦争』 (1959) 宇宙大戦争マーチ (M32)
伊福部昭
¥250
それはさておいて。
「その姿勢が大きく違う」というのもツボ。
読者諸賢のなかに、たとえば「今年の新語(ジラ)2017」の募集開始を知らせるこの記事のように、
秋冬物の服、ハロウィングッズも並び始める中、三省堂が年末の発表に向け「今年の新語」候補の募集を始めました。「ユーキャン新語・流行語大賞」と違い、「将来辞書に載るか」がポイント。なお、去年は「ほぼほぼ」でした。 https://t.co/YycEZgVXI4
— 毎日新聞 統合デジタル取材センター (@mainichi_dmnd) 2017年9月1日
無造作に「あちら」と並べ置いて両者を一色単にされていると、心にわずかでもざわつきや引っかかりを感じる方はいらっしゃいますでしょうか?
いらっしゃいましたら、おめでとうございます。立派なジラ隊有資格者です。「一色単」に引っかかったあなた、それも罠です。
このような向きには、事情を知らない人からは似たもの同士に見えて、内情はまるで違っている。そんな所轄と自ら隊のパトカーに両者をなぞらえて、溜飲を下げてもらえばよろしいかと存じます。
なにしろ、その姿勢が大きく違うのであります。
生活保護なめんな。
むすびに代えて
以上、ほぼほぼの権威から、発起人の飯間浩明さんと三省堂「今年の新語」へ、愛称「ジラ」のプレゼントでした。
一人でさせてすみません。どうぞお受け取りください。
※画像はイメージです。
既述のとおり、どこまでもコンプライアンスぎりぎりライン狙った愛称です。残る課題は、外交ルートを通じて東宝さんに筋通しておくことです。どうぞよろしく(丸投げ)。
おしまいに、贈りつけられる先方のご意向を忖度し、発言小町のトピへのリンクを3つ並べてお別れです。
嬉しくないプレゼント(2013/04/01付)↓
せっかくくれてるのにこんなことを思うのはいけないのかもしれませんが、はっきり言ってゴミです。
母からの誕生日プレゼントがストレス(2017/04/17付)↓
またなんだか安っぽいバッグが贈られてきて落ち込んでいます。(略)なんだかやるせなくて涙がでるほどなのです。
正直迷惑ですよね。
正直嬉しくないプレゼントは、迷わず捨てますか?(2011/11/01付)↓
正直貰っても嬉しくないプレゼントを頂いたら、笑顔でお礼は言っても後で捨ててしまいますか?
迷わず捨てましょう。
それでは、ごきげんよう。
祈ります。
おわり
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