【シン・ゴジラ】解決!東京モノレールはどうした?問題

こんにちは。シン・ゴジラを微細に語る「微細会」を代表して、シン・ゴジラの「東京モノレールはどうした?問題」を微細に語ります。

例によってネタバレを含んでおります。未見の方は上映中にお近くまたは遠くの映画館まで。→シアターリスト

「東京モノレールはどうした?問題」とは

「シン・ゴジラ」劇中、上陸した巨大不明生物が海へ戻ったシーンのあと、ふと「東京モノレールはどうした?」と気になってしまう問題のことです。その運行路線と品川くん(通称)の通行ルートとが、どこかで交差するはずだからです。

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Tokyo monorail #2031 at Showajima station(2006) from commons.wikimedia.org

以下に7500字ばかり費やして語っております。いちおう、ファイナルアンサーが出たかなと自負できる結論に至りました。

【結論】一部区間で運転再開

結論から述べます。鑑定した結果は次のとおりです。

1.蒲田くん(通称)上陸の翌日、2016年11月4日金曜日の東京モノレールは、

  • (1)線路:壊れてました。
  • (2)運転:再開しました。

2.むしろ不自然なのは、聞こえてきた「都内各路線は京急を除いて…」という文言の方です。そんな言い方しないと思うの。

東京モノレール11月4日の運転状況詳細

4日当日の東京モノレールの状態をもう少し詳しく述べると、こうなっています。

  • 破断箇所:天王洲アイル駅付近
  • 運転区間:「羽田空港第2ビル-昭和島」間折り返し

交通情報のアナウンス原稿なら、こんな感じですかね。

東京モノレールは、昨日巨大不明生物により天王洲アイル駅付近で高架橋が切断されたため、4日始発から羽田空港第2ビル⇔昭和島の間で折り返し運転を行っています

土地勘のない方のため、Googleマップのキャプチャも付けておきます。画像内青色の線が運転区間です。

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♪81.3~ Early morning from Tokyo、別所哲也でした(ウソ)。

論点(1)線路は壊れた

東京モノレールの線路は壊されました。

それを確認していきます。

品川くん(通称)推定離岸ルート

Googleマップの航空写真を使って描いた、考えられる品川くんの離岸ルートです。

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からの

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という感じでしょうか。

上図で赤色の×印が、品川くん通過による首都高羽田線と東京モノレールの破断地点です(画像クリックで拡大できます)。翌朝の風景を写し、複数のニュース音声が重なるシーンで「天王洲運河より離岸。首都高速羽田線を破断し、東京湾へ」みたいなアナウンスが聞こえていたと記憶します。

その際、首都高の高架とともに、並走する東京モノレールの線路も壊れているはずです。Twitterでも複数指摘が出ていました(後述します)。

ルートは運河を優先

八ツ山橋そばからの品川くん離岸ルートについてですが、本編映像での煙の上がり方からすると、オレンジの実線で描いた経路が有力です。ただし、点線ルートもありえます。その場合には破断地点が違ってきますが、いずれにしても東京モノレールの線路が「壊れた」という結論は変わりません。

品川くんの体格と移動の様態を考えれば、首都高速の高架橋が壊れて東京モノレールだけが無事である可能性は実質ゼロです。

※なお図内青色×印の方がはるかに重要な破断ポイントなんですが、当記事では取り扱いません。それは近いうちに別の記事で。

おさらい:品川くん(通称)海に帰る

2016年11月3日(木)の巨大不明生物の足取りを時系列でおさらいしておきましょう。第2形態「蒲田くん(通称)」の姿が確認できるところからです。

  • 10:37ごろ 東京・大田区の海老取川河口0.1km付近を蛇行+歩行
  • 10:42ごろ 呑川を遡上開始。周辺地域に被害
  • 11:32ごろ 蒲田・あやめ橋付近に上陸
  • [歩行により品川・八ツ山橋付近まで移動]
  • [第3形態の品川くん(通称)に変態]
  • 13:20ごろ 自衛隊ヘリAH-1Sと対峙
  • 13:30ごろ(推定)天王洲運河から離岸。東京湾へ

で、推定離岸ルートを運河上に引いたのは、離岸の際、陸上は通らなかったと思うからです。

理由は「逆熱湯風呂」

海へ戻ったわけは「一時的に冷却機能が退化した」というのが巨災対で出された見解でした。品川くんが陸上にいられずに海へと戻ったこのくだり、私の好きなシーンのひとつです。「逆熱湯風呂」と呼んでいます。

ですから品川くん、天王洲運河より離岸してから東京湾に出るまで、終始運河(水路)を進んだと考えるのが論理的にはエレガントです。

もう一度陸にあがってまたすぐ落ちるとか、そういうのは出川哲朗さんや上島竜兵さんが見せる類の高等テクニックです。品川くんのリアクションではきっと、編集で「二度づけのとんだ串カツ野郎」とナレーションを付けられるのがオチでしょう。

小まとめ:とにかく壊れた

それでも裏づけには乏しく、離岸時の進行ルートについて現段階で確定的結論は出せません。

ともかく東京モノレールの線路は「壊れた」という点だけ、まずはおさえておきます。

論点(2)運転は再開した

運転は再開されました。

運転区間は「昭和島~羽田空港第2ビル」です。

傍証:運転区間に実績あり

実際、東京モノレールでは上記の運行形態を取った前例もあります。巨大不明生物が原因ではありませんが。

2014年7月に、土曜夜から日曜昼までのあいだ浜松町~昭和島の区間を運休し、残る区間の昭和島~羽田空港第2ビルでの折り返し運転を行っています。

その理由は、浜松町駅のポイント設備更新のためです。同社のWebサイトに案内のページが残っていました。
工事に伴う運休および当日の運転計画について

ニュースリリース「ポイント設備更新工事に伴う列車運休について(PDF)」(2014/05/21付)から引用します。※下線は引用者

東京モノレール株式会社(本社:東京都港区浜松町/代表取締役社長:中村 弘之)では、平成26年7月5日(土)夜~翌6日(日)の昼頃まで、浜松町駅構内においてポイント設備の更新工事を行います。このため浜松町駅~昭和島駅間で列車の運転をとりやめ、昭和島駅~羽田空港第2ビル駅間での折返し運転を行います

このケースは計画的な運休なので、ケアもぬかりありません。

この間、他社線への振替輸送とバスによる代行輸送を実施します。

JR線、京浜急行線、都営線並びにりんかい線への振替輸送と、運休となる区間のバスによる代行輸送を行います。ご不便をお掛けしますが、これら交通機関のご利用をお願いします。

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となっていました。

浜松町駅構内の工事なのに昭和島まで運転を休まなきゃいけないのは、配線はじめ、折り返し運転のできる設備がそこにしかないためと推察します。昭和島にはモノレールの車両基地もありますし。

以上、傍証となる事実であります。

激論?!「東京モノレールはどうした?」問題

さて、世の中はうかつでテキトーでいいかげんな人であふれていて、そのため世の中はうかつでテキトーでいいかげんに発信される情報であふれています。Twitter世間で見られる「東京モノレールはどうした?」問題に関する発信についても、その例外ではありません。

論点(1)はまだしも、(2)の結論にまで到達できていたアカウントは、ごく少数でした。なお言うまでもないことですが、大半のアカウントはまるで無関心です。それでいいです。

仮想シンポジウム:どうなる?東京モノレール問題2016

そこで、当記事上で仮想のシンポジウムを開き、ひとつひとつ正していきます。進行はオレです。

「設定ミス」は指摘ミスです。ダメージはあります。明らかです。言及がないことは「ダメージがない」を意味しません。浅はかです。

指摘のとおり、破壊されています。それを「ちょっとした揚げ足」と思っているのが浅はかです。

単独では文脈も文意も取りづらいツイートですが、ともかく破壊されています。「不通になっていない」は「運転されていた」って趣旨でしょうけど、事実の問題としてどこかで「明言されている」かしら?

「東京モノレールの桁も吹き飛ばしているはず」、そのとおりです。しかし、それがために「運行を再開するのはありえない」と結論づけるのは、短絡です。浅はかです。

このような、オール or ナッシング、0か1かの2択しかないものの考え方を、私は「1ビット思考」と呼んでいます。不自由な思考の典型です。

より確実性が高いのは、既に述べたとおり「一部区間で運転再開」です。なぜなら「羽田空港からのアクセス」が絶対的に不足しているからです。

羽田空港の状況を想像してみましょう。巨大不明生物の出現した3日のうちに発着便の全便欠航が決まりました。しかも蒲田くんの進行により接続する首都高速羽田線、湾岸線が壊れてともに不通、周辺一般道にも被害が出ており、アクセスに多大な支障が出ています。まさに「陸の孤島」状態です。帰宅難民が生じていることは想像に難くありません。

そんななか、本編のもう少し後に出てくる言葉ですが、東京モノレールもまた「今は残った者でやれることをやるだけ」やったのです。がんばろう大田区。

何事であれ、せめて2ビット(4択)、できれば3ビットの8段階ぐらいは選択肢を想定できる力を身につけたいものです。

次のは惜しかった。

惜しい!

「浜松町~昭和島間も不通状態」。そのとおりです。具体的に不通区間を区切っている点がGoodです。論点(2)もクリアし、ここまでくればあと少しです。

そこで俄然問題となってくるのは、

「京急線以外通常通りの運行です」みたいな台詞

ここです。羽田空港第2ビル-昭和島間の折り返しは「通常通りの運行」ではありませんね。はたして実際何と言っていたんでしょうか? 正確な文言を今一度確認する必要が出てきました。

「京急以外うんぬん」、実際何と言ってた?問題

というわけで、そこもチェック項目に加えてもう1回観てくることにしました。

確認すみました。結果は後ほど。あと当記事とは関係ないけど「セロ」は誤記です。「ゼロポイント」です。

どれも聞き逃すまい見逃すまいとレイトショーを観て、帰って寝て、翌日気づくと夕方までぐったりしてしまっていて、わしゃ放射熱線吐ききったゴジラかと驚いてしまいました。余談でした。

おことわり

ひとつ誤解のないように付け加えておきます。うかつでテキトーでいいかげんな情報発信ができる世の中は、それができない世の中と比べて、何百倍何千倍も素晴らしい世の中です。続きは以前書いた「うかつ」で「いいかげん」な「ニヤニヤ人間観」宣言 (2016/01/27)まで。

2.不自然な「都内各路線」

確認してきた結果です。

品川くんが海へ帰った翌朝のシーンで複数同時に流れるニュースを読むらしき声。私の記憶と記録が正しければ、その1つがこう言っていました。

「都内各路線は京急を除いて運転を再開」

東京モノレールはどうした?問題に係るポイントは2つです。後ろから挙げます。

  • (1)運転を再開
  • (2)都内各路線

論点(1)「運転を再開」

「運転を再開

先ほどの例もそうでしたが、ここを「通常どおり」的に書いている例がまま見られます。違います。「再開」です。

「再開」ですから、運転しているかしていないかで言えば、しています。しかしダイヤは「通常どおり」とは限りません。

極端なことを言えば、その日その路線で1本しか運転されなかったとしても、そしてその運転区間が、とある駅から隣の駅までのひと駅分だけだったとしても、一度は止まった運転が始まったのなら、それは「運転再開」です。

言いたいのは、「再開」は「通常/平常どおり」よりもはるかに適用できる幅が広い表現だということです。

でもって、「京急を除いて運転を再開」した路線に東京モノレールも含まれるのは論理的にも当然ですし、鑑定結果も既に述べたとおりです。

人の記憶など「いいかげん」の言い換えみたいなもんですから記憶上の文言が違ったりすり替わったりしていてもそれは一向に構わないのですけれども、その程度の品質でしかないあやふやな情報をベースに何かを論じ出すのは、うかつです。

論点(2)「都内各路線」

これまでうっかり聞き流していたのですが、

都内各路線は」

って、あらためて検討すると、ずいぶんと不自然なもの言いです。

私も以前は合計20年近く東京都内に住んでいましたが、テレビ・ラジオを通してこのような言い方を聞いた覚えがありません。「都内一般道は」みたいに、道路の渋滞情報ならありますよ。でも鉄道の運行情報で「都内」を使っていた例は、記憶にないなあ。用例があったら「ごめんなさい」ですけど。

それを言うなら「首都圏」では?

鉄道の場合、オレ基準でスタンダードなのは「首都圏」です。

用例も見つけられました。「都内」と言いそうなローカル局も、「首都圏」でした。

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※画像は、TOKYO MXプレスリリース > 首都圏「鉄道情報」を強化リニューアル(PDF)(2015/03/12付)より

囲み内からも抜粋しときます。※強調・下線は引用者

JR・東京メトロ・都営地下鉄・私鉄各線の遅延・運休情報を一目で確認できる路線地図により、首都圏の通勤・通学他お出かけ前の視聴者が(略)いつでも、TOKYO MXで最新の首都圏鉄道情報を確認していただけます。

がっつり「首都圏」です。

試しに「都内各路線」でGoogle検索してみると、ヒットする大半はバスの運行情報でした。

「都内」の不自然さを考察

本編劇中の11月4日、品川エリアの朝の映像に複数同時に乗っかっていたニュースっぽい音声は、いずれも東京都内にある放送局からのものと解せます。あそこでbayfmとかFMヨコハマとかの音声流さないと思う。ならばなおさら、東京都内の放送局が鉄道の運行情報に「都内」を使っているのはヘンに思えます。

なんで「都内」限定?

という疑問がぬぐえません。以下、いろいろくらべてみました。

(1)放送エリアの問題

たとえば山梨のYBS山梨放送が交通情報で「県内の鉄道は」と言うのはありえます。実際どう言ってるかは知りませんが、そう言っていても自然です。放送エリアもリスナーが交通情報に関心を寄せるエリアもおおむね県内に限られ、その点で一致していると評価できるからです。

しかし東京都内にある放送局の放送エリアは都内に限られてはいません。他県の人もきっと視聴しています。そこで、殊に鉄道の運行情報を「都内」に限って述べることは、不自然で奇妙に思えます。

(2)鉄道の運行実態の問題

鉄道各社の運行実態を思い起こしてみても、「都内各路線は」の文言は不自然です。

通常の運行ルートが「都内」に限られる路線を挙げてみると、パッと思いつくところでまずは東京モノレール、次にJR山手線、都営地下鉄大江戸線、都電荒川線、あとは東京メトロ含む私鉄線のいくつかの路線です。いずれにしろ少数派です。

その他東京都内を走る鉄道路線の多くは、隣県の神奈川、千葉、埼玉へと伸び、あるいは他社線と相互乗り入れし、ネットワークが緊密に張りめぐらされています。そんななかで運行情報を「都内」に限って述べることに、私は積極的な意義を感じません。

小まとめ

くり返します。

  • 鉄道の運行実態も、
  • ラジオ・テレビ局の放送エリアも、
  • そしてリスナーの関心エリアも、

どれを評価しても鉄道各路線の運行情報を「都内」に限って提供することはヘンです。不自然です。

優先したのは「京急推し」

ならばなぜ、「シン・ゴジラ」の脚本はリアリティを半ば無視し「都内各路線は」と言わせていたのでしょうか?

私はこう思います。

京急の状況を前面に打ち出したかったからです。

4日の時点で「首都圏各路線は、京急を除いて運転を再開」とは言えません。なぜなら神奈川県内でなら京急本線も運転できるからです。

調べてみると、都内に最も近い京急線の車両基地は、神奈川新町駅の隣にありました。

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ならばきっと、京急本線は京急川崎で折り返し運転ができます。

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参考:Wikipedia「新町検車区」「京急川崎駅」。画像も両ページより

ただ「蒲田くん」が直下を通ったことにより京急蒲田駅にダメージがいくらかあったと想定すれば、空港線は不通になっていた可能性もあります。

けれども「京急空港線を除き」じゃ弱い。何より北品川から第一京浜まで飛ばされた800形が浮かばれません。全面協力してくれた京浜急行電鉄さまにも申し訳が立たない、そんな御社と弊社の事情も見え隠れします。

まあどっちにしても、些細な話です。

まとめ:Facts and Findings

「東京モノレールはどうした?」問題をまとめます。といっても、冒頭のくり返しです。

  • 天王洲アイル駅付近で、並走する首都高羽田線ともども壊されました。
  • したがって11月4日の運行状況は、「羽田空港第2ビル駅から昭和島駅の間で折り返し運転」です。
  • がんばろう大田区・品川区・ちょっぴり港区

けれども新たに、こんな発見がありました。

  • リアリティを軽視し、一般に「首都圏」とするところをあえて「都内」と言い換えて、各所との整合を図っていた節が見られます。
  • その最大の理由は「京急を除いて」を強調したかったためと推測できます。

以上、大して気に留めていなかったのですが、「あれはおかしい」とごく一部で騒がしかったので検証してみました。すると上に書いたとおり、本当におかしいところは別にありました。おかしくないものをおかしいと言い募るのって、カッコ悪いよ。

もちろん、より整合性の高い所見をいただければ訂正する用意はあります。異論・反論を大いに歓迎いたします。

と留保しつつ、これでファイナルアンサーだろうなという気がそこそこしています。よかったら参考になさってください。

礼は要りません。遊びですから。

おわり

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