「ネタバレとは何か?」を数式で表現してみました。

こんにちは。

これまでおざなりにしてきた「ネタバレ」問題の考察が、「シン・ゴジラ」体験を機に喫緊の課題となりました。緊急に嫁と話し合いを持った結果、だいたい次のような結論を得ました。

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※写真と本文は関係ありません。

定義:「ネタバレ」とは?

「ネタバレとは何か?」を定義してみました。

文字で書くと、

作品体験の満足度が下がる事前情報

数式で書くと、

Sk < Su

です。

ここで、

  • Sは満足(Satisfaction)の度合いを表す関数
  • kは、ある何かを「知っている」状態(known)
  • uは、「知らない」状態(unknown)

を意味します。次項で詳述します。

定義

変数

ある作品(映画・小説・マンガ・ゲームetc.)に関する

  • 情報全体の集合をI
  • Iを形成する個々の情報をi
  • 作品体験の質をEq
  • 満足度をS

と表すとする。

変数間の関係

このとき

  • IはEq(体験の質)を決定するパラメータ
  • EqはIを入力(の1つ)とする関数
  • SはEqの関数

である。すなわち

  • Eq=f(I)
  • S=f(E)

という関係である。

ネタバレ評価関数 [Sk, Su]

ある1人の体験者を想定し、ある個別具体的な情報(i)を伴う状態を「k(known)」、伴わない状態を「u(unknown)」とし、両者の満足度の関数Sを比較する。

SkがSuを下回る、すなわち

Sk < Su

なら、そのような情報「i」はネタバレである。

例:映画「FAKE」のネタバレ判定

映画「FAKE(2016)」を例に、2点ネタバレ判定してみます。

ネタバレ

上のページを映画「FAKE」鑑賞前に見ると確実にネタバレです。注意です。閲覧避けて正解でした。

鑑賞後に読むと、映画の仕掛けたアングルに見事に組み込まれていて、楽しいです。弁護士には頭が悪くてもなれることがわかる一例でした。

not ネタバレ

一方、「FAKE」公式サイトの煽り文句にあった

誰にも言わないでください、衝撃のラスト12分間。

ここに関する事前情報には接しませんでしたが、たとえ概要を知ってしまったとしても、私にとってはそんなにネタバレでなかったです。想定内でした。

ざっとそんなところです。

問題:ネタバレの反対語は?

ここでふと、

  • 日本語には「ネタバレ」の反対語が見当たらない。

という事実に気づいてしましました。

SkとSuの関係にはあと2種類あります。すなわち

Sk = Su (→知っていてもいなくても、満足度にまったく影響しない情報)

Sk > Su (→知ると興味関心がいや増す情報)

の2パターンです。

Sk=Suの場合:「どうでもいい情報」とでも呼べばいいと思います。アナログタロウさんが得意です。

しかし、

Sk>Suの場合:これをどう呼べばいいのか、困ってしまいました。

つまり

あらかじめ知っていると満足度・興趣がいや増す情報

を端的に言い表せる語句が、日本語には見つからないのです。困ります。外国語にもないのかもしれませんが。

「いいネタバレ」?

仮に「いいネタバレ」と呼んでおきますが、そういう情報は実在します。

いいネタバレ(仮)の例

私の場合は、封切の初日(7/29)に発表された「シン・ゴジラ役は野村萬斎」がそうでした。

鑑賞予定を前倒しさせる、いいappetizerになりました。

「シン・ゴジラ」究極のネタバレ=「ゴジラ」

8月あたまに「シン・ゴジラ」を4DXで体験してきました。上映中にふと、既に自分が「ゴジラ」という存在を知っていることが、究極のネタバレだなと思ってしまいました。

むろん作る側も、大多数の観客の「ゴジラネタバレ」を承知です。そこを超える仕掛けがしてあったと、ネタバレさせておきます。

外国語の「ネタバレ」

比較対照用に、2つの近隣諸国言語の例を紹介します。

英語

英語では「ネタバレ」を「spoiler」といいます。「ダメにするもの」ぐらいの意味です。「spoiler: 」「spoiler alert」なんて用例をちょいちょい目にします。

Oxford dictionary「spoiler」の語釈が明快でわかりやすかったです。

1.2
A description of an important plot development in a television show, movie, or book which if previously known may reduce surprise or suspense for a first-time viewer or reader.

【拙訳】

テレビ番組、映画、本において、初めて見たり読んだりする人が事前に知ると驚き(サプライズ)やドキドキ感(サスペンス)を損ないかねない、物語の枠組みや事実関係の記述

日本語の「ネタバレ」に比べて、「(ネタバレのうち)台なしにするもの」と、より具体的に絞り込んだもの言いです。やたら説明的で理屈っぽい英語の良さが出てるなと思います。

韓国語

また韓国語でも、「스포일러(スポイルロ)」と、英語由来の言い方をするようです。

스포일러(スポイルロ)=「ネタバレ、映画の内容などを見ていない人に話すこと、またその人」|TODAY’s はんぐる(2014/12/02付)に詳しかったです。

映画レビューには「스포주의(スポチュウィ・ネタバレ注意)」の注意書きがあるものも。

だそうです。

あとの言語は調べていません。

まとめ

ネタバレを定義し、数式で表現してみました。

さらにその過程で、少なくとも日本語には「ネタバレ」の反対語が見当たらないことが発見できました。

ネタバレの何が問題なのか?

この問いに対し、より本質に迫って答えようとするならば、

言明と含意の両者が乖離していること

となりましょうか。「ネタバレ」という表現で描きうる領域よりも、それが実際に表す意味が限定されていて、乖離が生じているのが問題です。

それが、日本語世界での「ネタバレ」論議が紛糾する一因のように思われます。

こちらからは以上です。

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