荒木香織さん「人生のパイセンラジオ」(1)(2016/06/18早朝 OA)

こんにちは。

荒木香織パイセンがインタビューに答えた、NHKラジオ深夜便「明日へのことば 荒木香織」のストリーミング配信が7/31までなので、消える前にテキストにしておきます。

2016-07-11_1214

画像は、ストリーミング|ラジオ深夜便 より

概要

番組内容についてはこちらの告知が詳しいです。

ラグビー日本代表を変えたスポーツ心理学<6月17日(金)深夜放送>|R1ブログ(2016/06/15付)

6月18日(土)午前4時台の放送でした。ラジオの世界では、翌朝5:00までは「深夜」のくくりになるようです。

ラグビー日本代表を変えたスポーツ心理学(1)

話の区切りで適当に見出しを付けています。

インタビューする聞き手は、声だけ聞くと後藤繁榮アナウンサーかな?と思います。自信はありません。違っていたらご指摘ください。

導入・アイスブレイク

――荒木さんよろしくお願いします

荒木「よろしくお願いいたします」

荒木さんは京都、のご出身で今も京都にお住まいと、いうことで、京都放送局でお話をうかがいます。去年秋のラグビーワールドカップイングランド大会で日本代表が世界を驚かせました。ラグビー人気の方は続いていますけれども、荒木さんの方は落ち着かれましたか

「それがですね、落ち着くと思っていたんですが、なかなか落ち着かない毎日を送ら、過ごしています。はい」

赤ちゃんは大きくなりましたか

「1歳と7か月になりました」

元気ですか

「とても元気です」

元気すぎるぐらいですか

「そうですね。はい」

男の子?

「男の子です」

将来ラグビーですか

「どうしましょう。サーフィンでもいいですかね」

サーフィンお好きなんですよね

「そうです。はい」

ご主人はどんなスポーツを

「もともとは、私たち2人とも陸上競技です」

そうですか。陸上は、させたくない?

「いや、そんなことはないですね。ちょっと、走るの速くなるんじゃないですかね、はい」

急に決まったイングランド行き

――本題に入ります。イングランド大会では過去2度優勝して世界ランク3位、という南アフリカに勝ちました。スタンドでご覧になったんですね

荒木「そうですね。あのぅ行く予定ではなかったんですけれども、やっぱり来た方がいいんじゃないかっていう話になりまして、はい。急きょ、ええ、1戦目は観戦しました」

「ほんとは国内の合宿で終了の予定で計画を立てて、4シーズン取り組んできてたんですけれども、まあ選手はそれを知らなくてですね、来ないんですかと。やっぱり何かあったら話をしたいので、来てもらってくださいていう要望をコーチに出していたみたいなんですけど、はい、はい」

わりと急だったんですか

「めちゃくちゃ急でしたね。5日ぐらい、出発の5日ぐらい前に電話がかかってきまして、来てください。ガチャ!みたいな感じで。はい、はい」

それで赤ちゃん連れていらしたんですね

「置いていくことはねぇ、できないので。連れていくしかないですよね、はい」

開幕までのコーチング

――現地に着いたのが、最初の試合が南アフリカ戦でしたよね。その何日前ですか

荒木「んと、2週間ぐらい前ですね。はい」

そのときに、選手たちは、どんな様子でした?

「まあ2週間ぐらい前ですから、まだそこまでね、緊張感はないですし、やっとこのワールドカップが始まったのかなーぐらいで、選手たちもそんな実感がないとは言っていました、はい」

それがだんだんだんだん試合が近づいて、どんな様子になったんですか

「まあそうですね、全員が全員そのねぇ、変化があったわけではないですが、まあ選手の中には、眠れない人もいましたし、食事が進まない選手もいましたし、あと汗が止まらない選手とか。そんなに寒くないんですけど、寒い寒いと言ってね、ジャージを着込んだりとか。あとはなんでしょうねそわそわしたりもしますし、いろんなまあ、現象は、ありましたね。はい」

眠れないと困りますよね。そういうときはどういうこう、アドバイスをしたんですか

「うーん、まあ1日ぐらいね、眠れなくてもいいんですけど」

ああそうですか

「はい、はい」

あ、それぐらいの気持ちでいいんですね

「そうですね。でもあんまりそのね、3日も4日も眠れないとなると、疲労が回復できないので、そのへんに対してはやはり介入をして助けてあげる必要があるかもしれないですよね」

具体的にはどうしたんですか

「うーん、眠れない理由を見つけていくんですけど。話し合いをしながら、なぜ眠れないのかを見つけていく、しかないですよね。なんかその魔法をかけてね、眠れるようにするとか、お薬を飲んで眠るとかっていうことはできないので、やっぱりこの自分がどのように物事を受け止めてたりとか考えてたりするかをね、確認して、不安材料があるのできっと眠れないんで、不安材料を消し去るような、働きかけをしますよね、はい」

その選手の場合は、何が原因で、その不安を感じていたんですか?

「ミスをしたらどうしようとか。あと、うまくいかなかったらどうしようとか。あとまあ、4年間、まあ4シーズン準備をしてきてるので、その準備がパーになるような、ことが起きたらどうしようとか」

「まあいろんなことを考えますよね。まだ起きてないんですけど、その何日か先にある試合について考え始めると、なんかネガティブなことしか浮かばなくて、寝られなくなるっていう、はい」

で、具体的には、どういうふうにしたらいいっていうふうに、アドバイスをしたんですか?

「うーんまあ、ポジションにもよるんですけど、まああの、自分の判断ていうものをあまりその不安に思わないで、どんな判断をした場合でもチームメイトはいますし、もし、判断が悪かったとしてもラグビーは15人でするので、そのあとの選手がフォローしてくれればそれはミスではなくなるので。そういうふうにチームとしては練習してきてるから、そんなふうにどうしようと思っているよりは、何をしたいか、どんなプレーをしたいかを考える方が、勝ちにはつながるので、そういう話はしましたね」

「私たちはたぶんその寝られない時って、2つ3つのことしか考えてなくて、それがぐるぐるぐるぐる回るだけで解決策がないのでどうしようどうしようと思っているだけで。そこから抜け出すにはやはり何が不安なのか、何が気になるのか、を明確にして対策を立てると、その対策を立てたことに対して取り組めば、きっと不安はなくなるっていうのはわかっているので」

「まこれまでねぇ、4シーズン一緒に取り組んできてますから、だいたいの感覚でねぇ2人で話し合いをしてこれをすれば大丈夫だっていうのはもうわかっているので。その日初めて急に話をしてもなかなか解決にはならないですけど、今までの取り組みがあるので、見直してみたり見返してみたりとか、確認をしてみたりとか、ていう作業ですよね」

「自分にできることはその自分の物事の受け止め方っていうのをもう1回確認して、それを変化させることはできますし、相手、試合相手は変えられないですし、相手の体の大きさも変えられないですし、あのぅどんなプレーが出てくるかラグビーはわからないので、それもコントロールできないですし。ただコントロールできるのは自分の心構えとか、準備のしかたとか、当日のそのね、あのぅ判断がうまくいくようにっていう練習で準備をしていくってことはできるので、はい」

つまり変えられないことをいくら悔やんでもしかたがないということですか

「そうですね、過去もそうですよね。過去はもう変えられないので、あの時失敗したからあんなふうになったらどうしようと思ってもね、もう過去のことなので。いま、何ができるかですよね」

でその選手には具体的に今なにができるかという点ではどういうことを言ったんですか

「えーっとですね、まあたくさん、まあいろいろあるんですけど一例としては今まで深呼吸を使ったりとか、指にテーピングを巻いていてそのテーピングの色を変えたり指に字を書いたりっていうことで、心を落ち着かせたりとかもう1回集中をし直すっていう作業をしてきてるので、その確認の作業はしましたね、はい」

劇的すぎた南アフリカ戦の勝利

――でこの試合は結局、南アフリカ戦は勝ったんですが、荒木さんは勝ちそうな予感っていうのはあったんですか

荒木「予感ていうか、勝つためにみんな、準備してきてるので、私たちは勝つと思って試合をしてるので。あんな劇的な勝ち方するとは思ってなかったです、はいはい、はい」

その劇的な勝ち方なんですけれども、もうほんとに試合終了の直前でしたよね。29対32という、3点リードされていて、日本がペナルティキックを得ました。でここで、そのペナルティキックが入ると3点で同点になるんですね。でも、選手はスクラムを選んで、結局逆転トライ、になったんですが、トライの場合は5点でこれで逆転になるわけですね。34対32。あのシーンですけども、荒木さんはどんなふうにご覧になってました?

「あのぅ、現地でそのねぇ、見ていると肌で感じるものっていうのはありますし、選手のその表情とか動きを見ていると、そこで五郎丸選手が出てきてキックっていう雰囲気ではなかったので、フォワードの選手が自分たちでスクラムを組んでトライを取りにいくだろうなっていう雰囲気はあったので」

はい

「エディーさんはね、3点取りに行けって五郎丸選手に蹴れって指示を出しているんですけど、誰も聞いてなかったですよね」

ジョーンズヘッドコーチは見えたんですか

「あ、すぐ後ろに、いました」

ふり返って様子見たんですか

「見ました見ました、見ました。はい」

でその時は?

「……まあ、これだけのしっかり準備をしてきて、エディーさんは、選手のことをね、息子のように一人ひとりのことをものすごくよく理解して考えて進めてきて大切に、準備してきたのに、この瞬間に俺のことを裏切るのかと、そういうすごい表情でしたし、なんかちょっと物を投げたりっていうような、ほんとにもう感情が抑えられないようなあのはい、感じはありましたね、はい」

ジョーンズさんはまあ勝たなくても、同点で、次に進みたいっていうふうに思ったんですね

「そうですよねぇ。ここで負けることはまあねぇ、誰も考えていないですから勝つためにやってきたので」

もったいないですよね

「はい」

同点でも勝ち点もらえますもんね

「そうですよね。で五郎丸選手はけっこう安定してたんで、必ず入るだろう、位置的にもね、入るだろうという位置だったんで、まあエディーさんはキックでって思ったんでしょうね、はい」

でも荒木さんは、わりと、あ、きたかと思った?

「まあそこまで冷静だったかどうかはわからないですけど、でもあの、3年目の、チームのそのメンタルの、セッションを通しての目標っていうのが『歴史を変える』っていうのを掲げていたんですよね。あとは4年目は主体性を持ってやっていくっていうことをメンタルの目標としてやってましたんで、その辺の言葉は選手から出ていて試合中に。歴史を変えるのは誰だ?っていう言葉を入れながら、みんなで、決めていたみたいなので。まあその判断をするときに、あの場面で全員がした判断ですから、はい。それはもう逆転ていう判断ですよね」

主体性というものが大事なんですね

「やっぱりそのやらされてるっていう、感じでは、世界とは戦っていけないので、世界で戦うにはしっかり自分たちで考えながら、自分たちの、意志を持って判断ができるように、意思決定ができるようにしていく必要があって。それはフィジカルの練習を通してはできないので、やっぱりメンタルのトレーニングを別にしていくべきですよね」

自主性というのはまず大事なキーワードなんですね

「そうですね、はい」

勝利のリアクション

――で、勝ちました。逆転トライ。もう感動のシーンでしたね。あのとき現場にいらして、どんな感じだったんですか

荒木「息子を、もちろん抱いてたんですけど、すっごい歓声なので、息子が大泣きしてるんですよね。で私たちは違う意味で大泣きをしていて。もうぜーいん(全員)が泣いていて。たぶん、息子を産んだときの感動よりも感動したと思います」

いやいやいや

「人生のうちでいちばん、感動しました。驚いたのと感動したのと、すごく喜びとが、いい感情がすごく交じり合っているので、あんなにいろんな感情がすべて、前向きなものがまじり合うことはないんじゃないかなあと、思いますね」

行ってよかったですね

「呼んでもらってよかったです。なんかこう、来てくださいって言われてよかったと思って、呼んでもらってよかったなと思いました。はい」

ジョーンズHCのチームづくり

――で、サモアとアメリカに勝って3勝したんですが、スコットランドに大差で負けて、決勝ラウンド、ベスト8に進めませんでした。しかし日本のラグビーが世界に通用したと。でこのチームを作ったのはまずエディーさん。どんなところがすごいんですか?

荒木「すべてですね」

すべて?

「はい」

相当ハードな練習をこう、課したんでしょ?

「ラグビーにしてはハードだったと思いますけど、時間が短いので質が高いですよね」

ほう

「回数もあります。1日3回から4回練習しますから。ただ従来の日本で行われていたようなラグビーの練習っていうのは1回に3時間4時間だったりする集中力もたないし、何も考えずに練習、体だけ動かすような練習が多かったんですけど、そういうのをガラッと変えましたよね。はい」

エディーさんはしっかり管理するほうなんですか

「あの人は選手を管理するというよりは、理解をするという作業はしますよね。観察をして話をして理解をしていく。必ず活動について報告しますし、1日に1回か2回はエディーさんと話をして、なんかこう進捗については、レポートはしますし、コーチミーティングスタッフミーティングでも毎日あるので、はい」

選手がいまどういう状態で、何を考えているかっていうのを、把握していたわけですね

「はい。完璧に把握してたと」

完璧ですか

「ほぼ完璧に。それはご自身のその観察力とかコミュニケーション力もありますけれども、私たちスタッフから上がってくる情報っていうものと組み合わせながら、ほぼ完璧に、すごいと思いますね。はい、把握していたと思います。出された食事で、たとえば脂っこいものを食べてはいけない選手が食べた場合とかも叱られる場合がありますよね。君はこれを食べるべきじゃない人だ、みたいなね。はい、あるでしょうね」

わりとじゃあ風通しはよかった

「ああもうのすごくよかったと思います。スタッフ間のコミュニケーションもすごく取っていましたし、メンタルといってもフィジカルのね状態があってのメンタルですから、はい」


つづく

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