こんにちは。デザイン芸人「デザインや」です。
4月25日に新たに選ばれた五輪エンブレムの件で、いまだ「なぜA案だったの?」と疑問を残している一般国民諸氏のために、不肖のデザイン芸人が次元の違う解説を試みます。
要約:Executive Summary
4作品の公表(4/8)後、デザイン芸人の目には「こりゃA案の勝ちだわ」「いや、ひょっとしたら…」と映っていた五輪エンブレムの最終候補たち。
※現代ビジネス(2016/04/14付)より
しかしいざ25日になってふたを開けてみたら、予想以上の差であっさりA案に決まってしまいました。
参考:東京五輪エンブレム、A案は一発当選 作者は野老朝雄氏「頭が真っ白」|news.livedoor.com(デイリースポーツ)(2016/04/25付)
女子卓球界と瓜二つだった
以来、「この感じ、どっかで経験したことあるよなあ」とぼんやり考えていたのですが、数日経ってやっと思い至りました。
女子卓球の「日本 VS. 中国」の決勝戦です。
始まる前は「そりゃ中国が勝つだろ」優位の一方「いや、ひょっとしたら番狂わせのワンチャンあるかも」と思いもします。近年の日本チームならびに日本選手は、世界大会の決勝に進めるぐらいには強いですから。
しかしいざふたを開けてみたら、だいたい予想以上の差であっさり中国選手が勝ちます。
そっくりです。
たぶん、あの平野さんも
恐らくは、ブログで
先頭に配置された1案だけが際立つ見え方は不適切であり、「A案」ありきのプレゼンテーションだと受け取りました。
032 1対3の構図 – 「A案」VS「BCD案」(2016/04/09付)
と書いていた平野敬子さんも、私流の言い方を使うと、「A案=めっぽう強い中国選手」に見えていたのでしょう。
というわけで、引用元のタイトル「1対3の構図」をいただきます。
真説・1対3の構図 – 「劉」VS「福原|平野|石川」
このセクションでは、平野敬子さん言うところの「1対3の構図」を女子卓球選手になぞらえて解説します。
配役
結論を先に述べると、女子卓球界「1対3の構図」はこうなります。※敬称略
- A案:劉詩雯 ←決定的に強い!
- B案:福原愛
- C案:平野早矢香
- D案:石川佳純
平野早矢香さんはこの4月に引退されましたので、「2016年第1四半期バージョン」とでもしておきましょうか。
ちょっとでも卓球界の勢力事情に通じている人の目には、この4選手なら「劉(A案)=最強」なのは明らかなはずです。浅葉克己さんもきっとそう言うでしょう。知らないけど。
BCD案:日本代表クラス
五輪エンブレム最終候補4作品を「卓球女子で実写化」するとき、BCD案になぞらえるのは、ロンドン五輪団体銀メダルの実績を誇る彼女たちが最適です。
画像は、YouTube > Table Tennis Women’s Team Semi-Finals Japan v Singapore Highlights | London 2012 Olympics(2012/08/06付)より
左から順に、石川佳純、平野早矢香、福原愛の3選手です。
ここでは、
- 久しく国民の人気が高い福原さんをB案に
- 早くから古武術の動きを取り入れ、剣士の風格も感じる平野さんをC案に、
- 「かすみ」の名が草花にも通じ、また可憐な外見とは裏腹に大舞台に強い石川さんをD案に
それぞれ配してみました。
余談:シンガポール戦2012がおすすめ
余談ですが、ロンドンでのメダル獲得を決めた準決勝のシンガポール戦は、日本のオリンピック史に残る名勝負でした。YouTubeで公式の動画が視聴できます。
Table Tennis – Women Team SF 1 – London 2012 Olympic Games|Olympics(2012/08/05付)
安易にも、シンガポールを陥れて意気軒昂だった1942年当時が思い出されます。
どっちも見てないけど。
A案:中国代表≒世界代表クラス
さて、そんな彼女たち日本選手に立ちはだかるA案です。ふさわしいのは、なんといっても目下(2016年4月時点)ITTFランキング1位の、この中国選手でしょう。
Liu Shiwen(2013) from commons.wikimedia.org
そうです、おなじみ劉詩雯選手です。
「雯」の字が環境依存文字かもしれないので念のため説明すると、「雨かんむりに文」という字です。
いずれにしても、まあ~呆れるほど強いんですほんと。後ほど具体的に紹介します。
そんな当代最強の劉選手ですが、1991年生まれ・161cm(en.wikipedia.org による)の彼女がちょいとドレスアップしたら、ちょっとだけガタイのいい今どきの女の子にしか見えません。
Liu Shiwen (left), Female Star of the Year / Photo by Rémy Gros; from ittf.com(2015/12/09付)
こういった格好なら、新宿ルミネあたりで「今日はちょいカワとかお探しの感じですか~?」などと話しかけてくるショップ店員の中に彼女が混ざり込んでいても、黙っていれば一般人にはまず気づかれないと思います。
国民投票なら
もし、今般の五輪エンブレムよろしく、「国民参画」の名の下に「劉・福原・平野・石川」の4人を最終候補にして意見募集をしたなら、好意的な票が集まるのはきっと「佳純ちゃん」「愛ちゃん」と親しまれている石川、福原の両選手でしょう。半ば理の当然です。
Kasumi Ishikawa and Ai Fukuhara(2011) from commons.wikimedia.org
実際、五輪エンブレムの最終候補作品でもそうでした。Yahoo!意識調査などの各種アンケート調査では、軒並みB案・D案が各々30%前後の得票を集め、残りをA案C案でだいたい2等分するという構図でした。
デザイン芸人評でA案は「次元の違う強さ」であるにもかかわらず、予想どおりに人気薄でした。
しかし卓球競技での勝敗は、選手個人の人気投票で決めるものではありません。強い者が勝ち、勝った者が強いのです。これも当たりまえの話です。
うまい具合に、実際に競いあった様子が動画になっていました。何かしら感じ取ってもらえるとありがたいです。
デザイン芸人的「A案最強」論
それではA案「組市松劉詩雯」がどれだけ強いかを見ていきましょう。
ありがたいことに、国際競技団体であるITTFが開設している公式のYouTubeチャンネル「Official ITTF Channel」で、対日本選手戦のハイライトが視聴できます。
ハイライトの見どころ
下に埋め込んだ動画を何10秒間だけでも視聴すれば、BCD案を「実写化」した各選手が、A案「組市松紋」劉選手に対して、
- 決して個々の出来が悪いわけでもなく、かつ、
- 部分部分で持ち味を十二分に発揮しているにもかかわらず、
- トータルではまるで歯が立たない
ことがわかると思います。
強調しておきますと、紹介する動画はすべて世界大会の「Final」=決勝戦のもようです。日本びいきの立場で言えば、まだこれほど差があるのかと気が遠くなりますほんとに。
VS. 「超える人」平野早矢香(2014)
惜しくも先日引退されましたが、全日本選手権で5度優勝している「女王」平野選手。プレー内外で彼女が見せる、いにしえの剣士をも彷彿とさせるストイックな姿勢は、他競技の選手からも広く尊敬を集めていました。
しかし劉選手は、その上をいってました。
ZEN NOH 2014 WTTTC Highlights: Liu Shiwen vs Sayaka Hirano (FINAL)
試合結果
JA全農・世界卓球2014東京大会 女子団体・決勝 第3試合(2014/05/05)
○劉 3{11-4, 11-2, 11-5}0 平野●
得票数は2票でした。
VS.「つなぐ輪、広がる和」福原愛(2016)
子供時代から広く国民に親しまれてきた「愛ちゃん」こと福原選手。10代の頃はまだまだ人気先行タイプでしたが、上下動が派手めのぴょこぴょこした打球フォームはそのままに、年を経るごとに実力も兼ね備えたプレイヤーに育ちました。
しかし劉選手は、ものともしませんでした。
2016 World Championships Highlights: Liu Shiwen vs Ai Fukuhara
試合結果
世界卓球2016マレーシア大会 女子団体・決勝 第1試合(2016/03/06)
○劉 3{11-5, 11-6, 11-8}0 福原●
得票はわずか1票と、予想外に伸びませんでした。委員のあいだに「今さら」感があったのかもしれません。
VS. 「晴れやかな顔、花咲く」石川佳純(2015)
最後は、「スナイパー」とも称される切れ味鋭い攻撃が持ち味の石川選手です。美しさ・華やかさと強さ・厳しさの両面を備えたプレースタイルで、なおかつ大舞台に強いと定評もあります。
しかし劉選手の強さは、まるで次元が違いました。
2015 Women´s World Cup Highlights: LIU Shiwen vs ISHIKAWA Kasumi (FINAL)
試合結果
2015 ITTF女子ワールドカップ仙台大会 シングルス決勝(2015/11/01)
○劉 4{14-12, 11-2, 11-9, 11-2}0 石川●
参照:ittf.com
得票数は5票と健闘した方でしたが、あらためてふり返ってみればまるで及びませんでした。
まとめ
ここまで一般国民の平均的知性を信じて、そのデザイン的な説明は一切省き、「組市松紋」の最強ぶりを女子卓球の劉詩雯選手になぞらえて申し述べてきました。
「ほんとにこんな感じなんですってば!」感だけでも伝われば幸いに思います。
言うまでもありませんが、平野・福原・石川の3選手も決して弱くはありません。事実、2012年のロンドンではこの3人が中心となって、ソウル大会(1988)で卓球が五輪の正式種目となって以来、初のメダル(銀)を勝ち取ったのですから。
世界レベルの大会で決勝戦に進み出るだけの力があるのに、まだなおこの実力差か、とため息が出ます。
ちなみに劉選手は、ロンドン大会に出場していません。
「素人には謎」な点まで共通
もうひとつ、A案=劉詩雯説の補強材料として挙げておきましょう。
A案と劉選手に共通するのは、
- 素人目には、どこが強いのかまったく釈然としない。
という点です。実際、私も説明できません。
劉選手の強さの秘密はたぶん、パッと見でルミネあたりにいそうなショップ店員にしか見えないところにあります(超テキトー)。
付記:「出来レース」説の真相【消極的否定論】
という具合に、デザイン芸人にとっての東京五輪エンブレム最終4候補は、たとえるなら卓球女子の国内大会で日本選手の中に1人とんでもなく強い中国選手を混ぜたようなものでした。
これでは旧エンブレムの選考委員だった平野敬子さんが「A案ありき」と表明してしまうのもわかります。だってどう見たって最強じゃんよ、こん中じゃ。
その一方で、エンブレム委員長を務めた宮田亮平さんが「A案ありき」を必死に否定するのもわかります。だってわかんないじゃん、実際試合してみなきゃ。
でもっていざ試合(投票)してみたら、予想以上にどえりゃあ強かったわけです。
大ざっぱに語るならば、だいたいそんな話です。
おわりに:注意事項
当記事ではA案を女子卓球の中国選手にたとえましたので、最後に、そちら方面の話が大好きなごく一部を想定して付け加えておきます。
どうか「A案が選ばれたのは国内反日分子に手を回した中韓の陰謀」とか、うっかり誤読しないでくださいませ。
建設的な議論にするには「そう思える」あるいは「自己紹介」以外の根拠を出してほしいところです。よろしくお頼み申し上げます。
ただし「出来レース」は確定(別次元の意味で)
なお、今回のエンブレム委員会による東京五輪エンブレムの選び方は、別の理由で終わっています。「出来レース」の疑いを晴らす手段が残されていないからです。
既に
- 【緊急特集】五輪エンブレム委員会、最終審査を待たず「詰んで」いた(2016/04/15)
にも書いていますが、読み直してもいまいち伝わる手応えがありません。そこらも課題として、詳しい話はまた別の機会に。
以上、雑すぎる説明ですが、嫁にはおおむね伝わりました。
いったんお返しします。
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