経産省「Mazer」が証明する、外務省「JAPAN HOUSE」の末路

こんにちは。デザイン芸人「デザインや」です。

2014年11月18日の五輪エンブレムの審査会。8人の審査委員は最終的にどの作品に投票したのか?

いまだ解明されていない謎に迫る過程で、この記事が生まれました。

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Mazer(マザー)

2012年付で、こんなニュース記事がありました。

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アナタのアイデアを企業が買う!! 日本初アイデアオークションサイト「Mazer」1 月9日(月)オープン! 片山正通、森本千絵、伊藤直樹らがクリエイティブ・ディレクターとしてアイデアを募集|PRTIMES(2012/01/10付)

マザー制作委員会(代表:伊藤直樹)は、より良い日本を創るための施策の一環として、アイデアオークションサイト「Mazer(マザー)」を開発、1月9日(月)より運用を開始いたしました。

「クール・ジャパン戦略推進事業」らしい

なんでも、

Mazer制作委員会は、経済産業省クール・ジャパン戦略推進事業の委託を受けて伊藤直樹(PARTYクリエイティブ・ディレクター、CCO、ファウンダー)が設立しました。

各界の著名人、文化人からクリエイティブ・ディレクターとしての協力を得ながらMazerプラットフォームを運営します。

だそうです。ついぞ知りませんでした。※下線は引用者

そのサイトはいま

どんなサイトだろうと、画像で判読できるURL(mazer.jp)を見たら、ありゃりゃ?

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「車売るならmazer」と、一括査定サービスへの誘導サイトになっていました。

思い出の「帽子」

それで脳裏に浮かんだのは、ひところ流行った

母さん、僕のあの帽子、どうしたでしょうね?

という、今や懐かしの中高年ギャグとなったフレーズです。マザーだけに。

元ネタ動画

以後、こちらの予告編動画をふまえて進めます。

人間の証明|KadokawaPicturesJP(2012/09/20付)

適宜、BGM用などにご活用ください。再生時間内に以後のテキストを全部読み終えられるようにしたつもりです。

中高年ギャグがうっとうしい年齢層の諸氏におかれましても、上をふまえておくと、この先楽しめるかもしれません。

記事要約:Executive Summary

要するにこういう話です。「元ネタ」と並べておきます。

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母さん
伊藤直樹さんのあのMazer
どうしたでしょうね

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一個のアカウントと古い雑誌と議事録
を残して、ひとつの若いサイトが
謎の死を遂げた―――

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そして
経済産業省=外務省を結ぶ
壮大な人間愛のドラマが
今はじまる

Mazer(マザー)の証明

完全にここからパクります。

#01:Do you remember?

伊藤直樹さん、あなたのあの帽子、どうしたでしょうね?

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METI Journal[経済産業ジャーナル]2011年8・9月号(PDF)p.08 より

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コミュニケーションは広告の枠を超えた 重要なのはクリエーティブの力|adv.asahi.com(2012/06/14付)より

ええ、ひところよくかぶっていた、あの帽子ですよ。

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Twitter:@naokit より

いやいや、帽子じゃなかった。「Mazer」ですよ。

さっき見たら、「車売るならmazer」でしたよ。

whois.jprs.jpでWHOIS情報を照会すると、こちらのドメイン

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2014年11月から今の持ち主が登録したみたいですけど。

あのMazer、どうしたでしょうね。

#02-1:Mazer、謎の死

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碓氷湖霧積温泉 金湯館|安中市

残された一個のアカウント

ツイッターに、公式アカウント@Mazer_jpがありました。

発信は、2012年4月の「お題32」で終わっています。

すっかり「死んで」ますね。

「Mazer」投稿アイデアから「クールジャパン大賞」決定|アドタイ(2012/04/02付)によれば、

「Mazer」は現在、アイデアの募集は終了しているが、オークション機能は4月以降も活用できるようになっている。

といいます。なんだ、あっさりやめちゃったんですね。

最後のツイートが、2012/06/28付のリプライでした。※2016年3月末閲覧

4月に募集終了のはずがなんで?と文脈がよくわからなくて探したら、こういう話のようですね。

運営の実態がうかがえます。

壮大な実験って

それはそうと、

伊藤 このプロジェクトはある意味で壮大な実験であり、これまでの思考・生産様式を見直すターニングポイントになると、私は思っています。

出典:METI Journal 2011年8・9月号(PDF)p.09

「ある意味で壮大な実験」とはこういうものなのでしょうか。私とは壮大の概念がまったく違います。

「壮大な実験」でもいいのですけれど、実験の結果はどうだったのでしょう。どこかに出したレポート、見てみたいです。見つからなかったもので。

人を集めて表彰状出すのは結果報告とはいいませんからね。

#02-2:Mazer「死」の謎をたどる

2012年にMazerに起こった「死」。その謎を捜査しました。

「歪曲」の跡―遺留品その2:古い雑誌(2013)

2013年になると、雑誌で

かつて、「Mazer」というブレスト手法をWebサービス化した。

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出典:特集 僕らが「中村洋基」になるための方法―Google ブックス > Web Designing 2013年11月号(マイナビ出版) p.091

この「Mazer」という手法は、初心者に力を出させることに向いている。

形而上で考えるスキルのない、そのへんの女子大生などからも、面白いアイデアを引き出すことができるぞ。PARTY伊藤直樹のアイデアだ。

のごとく、「実験」どころか伊藤さんの名前を持ち出していっぱしの「実績」気取りをしている人が出てくる始末です。

nakamurahiroki.com/works/ にも載せちゃったりで、「やってやったぜ」ぐらいの勢いで語っているわけです。

誰ですかこの人。お知り合いですか?

「過去」扱いの謎―遺留品その3:古い議事録(2012)

経済産業省はどういう認識でいるんでしょうか。

サイト内で「Mazer」を探していると、こんな議事録が出てきました。※下線は引用者

○梅澤委員 ありがとうございます。
伊藤直樹さんと松岡さんで設計をされて、原さんもクリエイティブディレクターをやられた「マザー」というオンラインのイノベーションプラットフォームがありました。

出典:経済産業省 > クール・ジャパン 官民有識者会議 > 第10回 議事概要(PDF)(2012/03/28開催)

ちょっとしたWebサービスを「オンラインのイノベーションプラットフォーム」呼ばわりもたいがいですが、それより「ありました」って、運用中だったのになぜに過去形?

これも1つの実験ではあると思いますけれども、アイデアをどうやって日本じゅうあるいは世界じゅうから集めて、それを未来につなげていくかと。

もう1回言います。

失敗でもいいよ。実験の結果報告出してよ。

重要参考人―参加していたアンビシャス委員

「Mazer」にまつわ人物について補足します。引用したテキスト

伊藤直樹さんと松岡さんで設計をされて、原さんもクリエイティブディレクターをやられた「マザー」

に出てくる「松岡さん」とは、松岡正剛さん。そしてこちらがポイントですが、「原さん」とは、「アンビシャスおじさん」と(私に)呼ばれている原研哉さんなのであります。

原さんはクール・ジャパン 官民有識者会議の民間委員として、第1回(議事要旨; 2010/11/19開催)から参加していたのでした。

補遺:「アンビシャスおじさん」の由来

なお「アンビシャスおじさん」の呼び名は、世界のグラフィックデザインシリーズ『原研哉 ggg Books 58』に寄せられた序文の書き出し

原研哉の印象を一言でいえば、控え目で繊細で、しかもアンビシャス

に由来します。序文のタイトルは「繊細なるアンビション」、筆者は隈研吾さんです。

#03:経産省~外務省を結ぶ、壮大な人間愛のドラマ

「ロンドン、ロサンゼルス、サンパウロに行かしてくれませんか」(松田優作風)

外務省は,平成27年度予算の成立を条件に,ロンドン,ロサンゼルス,サンパウロにおける「オールジャパン」の発信拠点であるジャパン・ハウス(仮称,以下略)の設置を検討しております。

海外広報 > 「ジャパン・ハウス(仮称)」の創設・運営業務|外務省(2016/03/18付)

宿願ご成就のほどお慶び申し上げます。

2010年のクール・ジャパン 官民有識者会議第1回の時から、外務省は「在外公館施設を活用したプロモーション活動の実施」を訴え続けていたわけです。

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出典:資料11 外務省(PDF)|クール・ジャパン 官民有識者会議(第1回)‐配付資料|経済産業省

このほど、www.japanhouse.jp サイトも開設されております。立派なロゴマークがお迎えしてくれます。

同じくwhois.jprs.jpでWHOIS情報を確認してみましたら、

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がっつり外務省でした。とってもクールジャパンです。

秀雄小林の箴言

人のセリフをパクって、皆さまに申し上げます。

こんなものと日本と間違えちゃいけませんよ。
(小林秀雄, 1974)

「なぜ徒党を組むのか」(小林秀雄講演 第2巻―信ずることと考えること所収)から都合良く切り取ってみました。

PROOF OF "JAPAN HOUSE"

まとめます。

外務省「JAPAN HOUSE」の末路とは?

以上のとおり、かつて経産省の「Mazer」がたどった道のりを鑑みますと、今回、外務省の「JAPAN HOUSE」の末路もおのずと予見できるというものです。

総合プロデューサーは、もちろんあの人

さて、このたび外務省「ジャパン・ハウス」の総合プロデューサーを務めるのは、デザインを携えて生きる人(@haraken_tokyoより)または、おなじみ「アンビシャスおじさん」、原研哉さんです。

この事実は、

などで確認できます。

外務省の目線で言えば、ようやくここまでこぎつけることができました。クール・ジャパン有識者会議の民間委員を引き連れて、やっと在外施設のハコモノ予算を積み増す理由づけができたわけです。思えば長い道のりでした。

そうこうしているうちに、2010年の「クール」から2016年の昨今は「オールジャパン」へと流行り言葉も移ろい、ますますの無責任体制を感じる今日このごろとなっております。

デザイン芸人のクソバイス

人間の証明のテーマ
秋山公良
¥150

原さん、僕のあのジャパン、どうしたでしょうね?
ええ、夏碓氷から霧積へ行く有識者会議で、谷底へ落したあのクールジャパンですよ
原さん、あれは好きなジャパンでしたよ

―デザイン八十「ジャパン」より抜粋

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※画像は、鼻曲山(霧積山塊)6 霧積温泉「金湯館」の一夜(後)|オコジョの散歩道(2015/05/29付)より


総合プロデューサーの原研哉さんにおかれましては、先行して

○原委員

(前略)

無理につくってしまったこじつけというのは、日本がみても世界がみても余り美しくありませんので、そこは無理をしないということが大事だと思います。

出典:経済産業省 > クール・ジャパン 官民有識者会議 > 第10回 議事概要(PDF)(2012/03/28開催)

といった有識者によるありがたい進言も既に出てございますので、まめやかにまめやかに、地に足を付けた活動を続けてゆくのがよろしいかと存じます。

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Twitter:@haraken_tokyo より

足ついてないね。

おわり

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