「Frozen」25か国語タイトル国際比較でわかった、邦題「アナと雪の女王」のオンリーワンぶり

こんにちは。名前を研究しています。

今になってふと、

「アナと雪の女王」の各国語バージョンでの映画本編タイトルは、「ひと系」「コト系」のどっちのタイプなんだろうか?

そんなことが気になってしまいましたので、調査して仕分けてみました。

結論

結論だけ先に述べます。

邦題「アナと雪の女王」は、よく言えばオンリーワン、悪く言えば変質者でした。

アナと雪の女王 (字幕版)

多数派からは、さしずめこんなツッコミになりそうです。

「人」て。しかもアナ・女王の「2枚乗せ」て。

補説:ひと系・コト系?

簡単に言うと、

  • 「ひと系」は人物を重視
  • 「コト系」は物事を重視

です。当ブログでちょくちょく登場するワードでございます。

調査結果ダイジェスト

大変興味深い結果となりました。ダイジェストしておきます。

仕分けの結果は、「ひと系」が5言語、「コト系」が20言語でした。

特徴的だなあと思った言語を分類リストの横に並べておきます。

ひと系:5言語

    (内訳)

  • 「女王」系×4  ※日本語
  • 「心」系×1

コト系:20言語

    (内訳)

  • 「氷」系×9  ※マレー語・北欧系諸語
  • +「王国」副題×3
  • +「物語」副題×2  ※中南米のスペイン語・ポルトガル語
  • 「王国」系×3
  • 「ロマンス」系×2  ※中国語・広東語
  • ハイブリッド「ド本質」系×1  ※タイ語

仕分け結果・分析コメント

地域別のバリエーションを含めた全25か国語を仕分けると、次のような結果となりました。

あわせて、気になった点をピックアップして述べていきます。

ひと系:5言語

5言語です。少数派です。

日本語のほか、フランス語(フランス・カナダ)・ドイツ語の4つが「女王」、ロシア語が「心」をフィーチャーした「ひと系」言語でした。

「ひと系ダブル」の日本語

「アナ」までタイトルに入れていたのは日本語だけでした。「ひと系」2枚のせ、「ひと系ダブル」です。

「2人のキャラクターを伝えることができるタイトルにしたい」と考えた宣伝マネージャーは、日本だけだったという話になります。後ほど詳述します。

「ひと系」+副題付きのドイツ語

ドイツ語では、「ひと系」タイトルにさらに副題を付けていました。若干くどい気もします。

コト系:20言語

残り20言語はすべて人以外に焦点を当てた「コト系」でした。

といっても、ソフトからガチハードまでのグラデーションがあります。

まずはガチハードなタイプから。

「凍った」「霜」系:9言語

こちらが最多となりました。

Frozen(5言語):英語・オランダ語・ハンガリー語・マレー語・フラマン語
Frost(4言語):スウェーデン語・ポーランド語・デンマーク語・ノルウェー語

余計な説明をしないガチなタイプです。

「Frozen」直輸入のマレー語

この分類に、マレー語が言葉もまんま「Frozen」で入っていることが面白かったです。

「凍る」という状況を言語が経験してこなかったのかもしれません。

「Frost」仮説

興味を惹かれたのは、北欧系諸語を中心とする「Frost」勢です。映画に出てくるアレ、「霜」なのか?

ひょっとすると、「Frost」となっている諸言語では、雪と霜を区別しないのかもしれません。比較的高緯度の寒い地域に偏っているのも示唆的です。

補足説明つき:7言語

「Frozen」系のメインタイトルに、副題を足しているタイプです。

足している内容により、次の2つに細分できます。

+「王国」×3

スペイン語・カタロニア語・イタリア語

地域が固まっているのが面白いです。

+「物語」×2

中南米向けのスペイン語・ポルトガル語で、「物語」を意味する副題が付いていました。

映画はたいがい「物語」だろと私などは思うので、ずいぶんとベタなセンスに見えます。

中南米は、ベタな説明がウケる地域なのでしょうか。

あま~い? ×2:中国・香港

中国語・広東語では、「奇缘」が付いていました。英訳させると「Romance」です。

あまーい。

ただし他の用例も見ていくとどうも日本語でのラブロマンスではなくて、物語のジャンルを表すニュアンスのようではありますが。

いずれにしろ、これもベタな説明に思えたり思えなかったり。

「王国」系:3言語

韓国語・セルビア語・ブルガリア語では、「王国」タイプの語をメインタイトルに据えていました。

ハイブリッド・ド本質系:1言語

最も印象に残ったのが、タイ語版タイトル「ผจญภัยแดนคำสาปราชินีหิมะ」です。日本語にすると「雪の女王の呪いの出来事」ぐらいの意味になるんでしょうか。上のタイトルを英訳させると「Adventure Snow Queen’s curse」となりました。

出来事(Adventure)の「コト系」ながら、「ひと系」要素も視野に収め、さらには物語の本質を衝いたフレーズをも取り込んでいます。

これもディズニーの宣伝部がタイの人に「見てほしいところ」「伝えたいところ」として付けた結果のはずです。そう考えてゆくと、こんな「お見通しタイトル」が流通している社会のすごさに震えがきます。

タイやばいな。

補足:調査に関するもろもろ

いくつか補足説明です。

復習:ひと系・コト系

くり返しますと、発想として「ひと系」は人重視、「コト系」は物事重視です。

例:日本語版・英語版を仕分ける

ですから、

  • 日本語タイトル「アナと雪の女王」は「ひと系」です。人のことです。
  • 英語のオリジナルタイトル「Frozen」(凍った)は、「コト系」です。抽象的・象徴的な表現であるためです。

「Frozen」が人を指す可能性も残されてはいますが、定冠詞theが付いていないことから、第一義としては人以外を指すと考え、「コト系」に仕分けました。

優劣論ではなくて、単なるタイプの違いです。

調査着手のきっかけ

こちらの記事を見つけ、着想を得ました。

本作品の宣伝プロデューサー廣村織香さん(ウォルト・ディズニー・ジャパン)は、邦題を『アナと雪の女王』と名付けた思いを次のように話す。

大事なところに線を引いておきました。「ひと系」思想であるのがわかります。

「今回の作品は、ディズニー・アニメーションで初の、アナとエルサという“ダブルヒロイン”。その2人のキャラクターを伝えることができるタイトルにしたいと思っていました。原題の『Frozen』では、日本人にとってイメージしづらく、また、アナとエルサというキャラクターに関心を持ってもらうために、もっとも相応しいタイトルを、ということで『アナと雪の女王』としました。

  • 2人のキャラクターを伝えることができるタイトルにしたい
  • 『Frozen』では、日本人にとってイメージしづらい
  • キャラクターに関心を持ってもらうために

だそうです。すんげー「ひと系」 です。

「タイトルは映画の言わば”看板”なので、どういう風に見てほしいか、どういうタイトルなら日本人に伝わりやすいか考えています」(廣村さん)。

廣村さんの発言からすると、ディズニーの日本支社は、「アナ雪」に対して

  • 「ひと系」で見てほしい
  • 「ひと系」のタイトルなら日本人に伝わりやすい

と考えているという話になります。なるほど。

日本はバリバリの「ひと系」でいくと。そこはわかった。じゃあ、あとの世界各国はどんな感じだったんだろうか?

それで、各国語版のエルサ役の歌唱をつないだ《Let It Go》の「In 25 Languages」動画のことを思い出したのでした。

「アナ雪」映画タイトル・言語別「ひと系/コト系」仕分け結果

Let It Go – Behind The Mic Multi-Language Version (from “Frozen”)|Disney VEVO(2014/04/01付)

に出てくる25か国語版の映画タイトルを仕分けました。

出典情報

タイトル情報は、Wikipedia「アナと雪の女王」に対応する各国語版に依拠しました。表記はそちらのコピペです。リスト中にリンクも付けておきました。

一覧の記述形式

登場順に「○○語〈対応の英語・原語〉」の形式で一覧にしました。

<凡例>

  1. ○○語〈英語・原語リンク〉ひと系/コト系判定結果
    ○○語版でのタイトル
    英訳
    日本語訳

の形式で記述しています。

英訳は、Google翻訳の「言語→英語」翻訳結果がベースです。9割方そのままです。

【リスト】仕分け結果一覧

詳しい結果がこちらです。登場順です。

  1. 英語〈Englishコト系

    Frozen|
    _|
    凍った

  2. フランス語〈French・Françaisひと系

    La Reine des neiges|
    Snow Queen|
    雪の女王

  3. ドイツ語〈German・Deutschひと系

    Die Eiskönigin – Völlig unverfroren|
    The Ice Queen – Completely unabashed|
    氷の女王―全くブレず

  4. オランダ語〈Dutch・Nederlandsコト系

    Frozen|
    Frozen|
    凍った

  5. 中国語〈Mandarin・中文コト系

    冰雪奇缘|
    Snow Romance|
    雪のロマンス

  6. スウェーデン語〈Swedish・Svenskaコト系

    Frost|
    Frost|

  7. 日本語〈Japanese・-〉ひと系

    アナと雪の女王|
    Anna and The Snow Queen|
    _

  8. スペイン語(ラテンアメリカ)〈Latin American Spanish・Españolコト系

    Frozen: Una Aventura Congelada|
    Frozen: A frozen adventure|
    凍結:とある凍った物語

  9. ポーランド語〈Polish・Polskiコト系

    Frost|
    Frost|

  10. ハンガリー語〈Hungarian・Magyarコト系

    Jégvarázs|
    Frozen|
    凍った

  11. スペイン語(カスティーリャ)〈Castilian Spanish・ Españolコト系

    Frozen: El Reino del Hielo|
    Frozen: The kingdom of ice|
    凍結:氷の王国

  12. カタロニア語〈Catalan・Catalàコト系

    Frozen: El regne del gel|
    Frozen: The kingdom of ice|
    凍結:氷の王国

  13. イタリア語〈Italian・Italianoコト系

    Frozen – Il regno di ghiaccio|
    Frozen – The ice kingdom|
    凍結:氷の王国

  14. 韓国語〈Korean・한국어コト系

    겨울왕국|
    Winter kingdom|
    冬の王国

  15. セルビア語〈Serbian・Српски / srpskiコト系

    Залеђено_краљевство|
    Frozen kingdom|
    凍った王国

  16. 広東語〈Cantonese・〉コト系

    魔雪奇缘|
    Magic Snow Romance|
    魔法の雪のロマンス

  17. ポルトガル語〈Portuguese・Portuguêsコト系
    (ポルトガル)

    Frozen – O Reino do Gelo|
    Frozen – The kingdom of ice|
    凍結:氷の王国

    (ブラジル)
    Frozen – uma Aventura Congelante|
    Frozen – A chilling adventure
    凍結:とある冷たい物語

  18. マレー語〈Bahasa Malaysia・Bahasa Melayuコト系

    Frozen|
    Frozen|
    凍った

  19. ロシア語〈Russian・Русскийひと系

    Холодное сердце|
    Cold heart|
    冷たい心

  20. デンマーク語〈Danish・Danskコト系

    Frost|
    Frost|

  21. ブルガリア語〈Bulgarian・Българскиコト系

    Замръзналото_кралство|
    Frozen kingdom|
    凍った王国

  22. ノルウェー語〈Norwegian・Norsk bokmålコト系

    Frost|
    Frost|

  23. タイ語〈Thai・ไทยコト系

    ผจญภัยแดนคำสาปราชินีหิมะ|
    Adventure Snow Queen’s curse|
    雪の女王の呪いの出来事

  24. フランス語(カナダ)〈Canadian French〉ひと系

    La Reine des neiges|
    Snow Queen|
    雪の女王

  25. フラマン語〈Flemish・Vlaamse〉コト系

    Frozen|
    Frozen|
    凍った

参考サイト

Wikipediaの当該項目にリンクがなかった言語については、以下のサイトから情報を得ました。

以上です。

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