米AIGAによる「スペックワーク」の定義

こんにちは。デザイン芸人「デザインや」です。

をきっかけに、「スペックワーク」という言葉を知る人も少なからずいらっしゃったようです。

ここに乗っかって、上の件の発信元である「米グラフィックデザイン団体」AIGAのページにあったAIGA position on spec work から、「スペックワーク」の定義をかいつまんで紹介します。

そんな「右から左」記事です。

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※写真と本文は関係ありません

スペックワークとは

米国のグラフィックデザイン団体AIGAのページでは、「スペックワーク」がこう定義されていました。

Speculative or “spec” work: work done for free, in hopes of getting paid for it

スペックワーク:支払いを期待して無料で実施する仕事

【出典】AIGA position on spec work > What is spec work?

くり返すと、スペックワークとは

  • お金の支払いがあると期待して(だが確定ではない)
  • 無料で行う

そういう仕事のことです。

スペキュラティブ(speculative)って?

スペックは「スペキュラティブ(speculative)」の省略形です。

「speculative」を英和辞典で引くといろんな訳語が載っています。英辞郎on the webだと、「思索の」「推測の」「投機の」といった具合です。一見、意味がばらばらでつかみづらいかもしれません。

でも大丈夫です。

speculativeの根底的な性質として「不確か」というのをおさえておけば、だいたいうまくいくと思います。

ということで、「スペックワーク」の性質をひとことで言うと「支払いがありそでなさそで、うっふーん」という、そんな仕事のことです。つまり、金銭的報酬が不確か=スペキュラティブ」なわけです。

「金銭」が焦点となります。

相次ぐ新語への疑問

しかし「タダ働き仕事」には、既に他の名前もついています。「ボランティア」とか、日本語なら「サービス残業」とか。これらとどう違うのでしょうか?

わざわざ新しく「スペックワーク」という名前をこしらえる必要があるのでしょうか?

「ボランティア」「インターンシップ」「プロボノ」との違い

そんな疑問に答えるため、かは知りませんが、同じくAIGAの「What is spec work?」では、スペックワークに似た仕事についても説明が加えられていました。

具体的に述べると、「ボランティア」「インターンシップ」「プロボノ」です。

ポイントとなるところに線を引いておきます。

Volunteer work: work done as a favor or for the experience, without the expectation of being paid

ボランティア:親切として、または経験とひきかえに、支払いを期待せずに行う仕事

Internships: a form of volunteer work that involves educational gain

インターンシップ教育的成果を含む、ボランティアの一形態

Pro bono work: volunteer work done “for the public good

プロボノ:「公益のために」自発的に行われる仕事

「コンペ」との違い

また、「コンペ」についての説明はこうです。

Competitions: work done in the hopes of winning a prizein whatever form that might take

コンペティション:(どのような形態であれ入賞を望んで為された仕事

コンペ=スペックワークではない

東京五輪エンブレムの公募を筆頭に、日本のデザインコンペは、スペックワーク案件になりがちです。

五輪エンブレムの場合、今回AIGAから指摘された2度目の公募はもちろん、応募資格を主な賞の入賞実績のあるデザイナーに絞っていた1度目も、スペックワーク案件です。応募時には支払いが約束されていないからです。

しかし、世のコンペがすべてスペックワークではありません。コンペの重点は「prize=賞」であって、「無料」が要件ではないからです。

たとえば、過去の実績(作品)がノミネートされて競いあうようなコンペなら、それはスペックワークと言えません(きっと)。ノミネートされる過去の実績仕事は、そのコンペのために新たに「タダ働き」したものではないからです。

ですので、文学の芥川賞・直木賞などは、スペックワークではないコンペと言えそうです。一定期間内に発表された小説を対象に候補作のノミネートを行い、委員による選考で授賞作が選ばれています。

亀倉雄策賞など、デザインの賞にもこのパターンはあります。

毎年『Graphic Design in Japan』応募作品の中から、年齢やキャリアを問わず、最も輝いている作品とその制作者に贈られます。

という具合に、応募作を選考対象にしますが、応募者は受賞を狙って「タダ働き」するわけではありません。

まとめ

以上、ぐだぐだ説明を加えつつ、AIGAによる「スペックワーク」と類似の各用語の定義を見てきました。

違いの微妙さに問題か

「ボランティア」「インターンシップ」「プロボノ」、そして「コンペ」は、いずれも、金銭の支払いがあったりなかったりという点はスペックワークと変わりませんが、重点が微妙に違います。

各者は概念的にとても近いところに位置するので、ときに区分が難しいケースも十分に起こりえます。

スペックワークをめぐる議論がややこしくなりそうな一因かなと思います。

2016年の「スペックワーク元年」成立を目指して

日本語の世界では、まだまだ「スペックワーク」は「元年」以前の「夜明け前」の状態に思います。

まずは言葉が広く知られるという意味で、2016年が「スペックワーク元年」になればいいなと思いつつ、ぼつぼつと続けていきます。

とりあえずそんなところです。

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