宮田亮平さんを知る語録(2):「イルカおじさん」篇

こんにちは。デザイン芸人「デザインや」です。

引きつづき、「東京藝術大学学長」という肩書きではつまらない人のためのシリーズです。

シリーズ要約:Executive Summary

好きなのを使ってください。

宮田亮平さんは、

  • イルカおじさんです。
  • 鵺(ぬえ)のような人です。
  • 金平糖じじいです。

この記事では、「イルカおじさん」について詳述します。

イルカおじさん

宮田亮平さんといえば、イルカです。

基本的にイルカづくしのおじさんです。

イルカファッション

宮田さんがスーツ姿で臨むエンブレム委員会の会見では、決まってイルカ柄のネクタイを締め、胸元にイルカのブローチを光らせています。

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五輪エンブレム、応募要項が決定 グループで子供の応募も可能に 1枚目の写真・画像【写真:竹内みちまろ】|RBBTODAY.COM(2015/10/16付)より

胸元を拡大してみました。

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イルカ&イルカです。

ネクタイの方は、いろいろ情報が得られました。

イルカの「シュプリンゲン・ネクタイ」

このネクタイは「シュプリンゲン・ネクタイ」の名前で、芸大美術館ミュージアムショップで販売されています。

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いずれも10,260円(税込・送料別)です(2015年10月現在)。

これは、実は僕のブランドなんです。ミヤタリョウヘイって書いてるでしょ。

一番最初は売るものがなくて、仕方がないから、ネクタイのデザインをいっぱいして。その売り上げを学生たちに還元した。

一般の方に来てもらわないと困る。内輪で買ってどうするんですか。

テキスト出典:佐藤しのぶ『明日へ続く歌:出逢いのハーモニー』(2014)p.201

とのことです。面白いことをされています。

なお、宮田さんが会見で身に着けられていた図柄は「横向」パターンのようです。

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シュプリンゲン(springen)とはドイツ語で「飛び跳ねる」の意。
宮田作品のモチーフでもある躍動感のあるイルカがネクタイとして登場。
デザインも宮田学長自らが施しました。
ネクタイ裏面には、サインがプリントされております。

以上「シュプリンゲン・ネクタイ プリント横向 深緑地に水色|芸大美術館ミュージアムショップ」より

ただしあいにく、ズバリの同色まではショップに見当たりませんでした。販売終了品なのかもしれません。

イルカの理由(1)

宮田さんにとって、イルカとは「日本らしさ」です。

2014-2015年にかけて東京・京橋のLIXILギャラリーで開かれた「宮田亮平展 -海へ-」に寄せて、次のようなストーリーを語っていました。

あれは僕が45歳のときだから、かれこれ四半世紀近く前のことになるのかな。マイスターの工芸技術を学ぼうと、ドイツに約1年間、在外研究員として留学した。ちょっと「日本脱出」の気分があった。

1990年のことです。

あるとき僕は梅酢や大根おろしや米ぬかを使う日本古来の独自の金属処理方法を伝えた。よみがえった美術品を見て、ドイツ人たちがどれほど感動したか。

でも僕は逆にそのことに感動させられた。(略)日本の金属工芸が持つ伝統技法のすばらしさを再認識し、日本人としての誇りを持って帰国することになった。

帰国したはいいけれど、じゃあいったい日本らしさって何だろう?となると、これがよくわからない、困った、となる。

でもあるとき、生まれ故郷の佐渡から東京に、戻るフェリーのうえで思い出したんだ。ずっと昔藝大を受験するために佐渡から小さな連絡船で上京するときに、僕はイルカの群れを見た!ということを。

余計な情報ですが、このときの藝大受験は不合格でした。宮田さんが東京藝大に入学するのは、二浪したあとです。

その鮮烈な映像は目に焼き付いていて、自分にとっての日本はここにあるじゃないかと思った。それから20年余り、僕は夢とエネルギーをイルカに注ぐことになる。

出典:「宮田亮平展 -海へ-」アートニュース(PDF)「なぜイルカなんですか?」

語りがこなれている感があります。どうやらこの質問は宮田さんにとって「FAQ」であるようです。

イルカの理由(2)

イルカとはまた、宮田亮平さん自身の姿でもあります。

イルカをモチーフにした「シュプリンゲン」シリーズ誕生について、自著で次のように語っていました。※下線は引用者

絶対に必要だったのはあの躍動感だ。僕が勇気をもらったように、作品を見る人が元気を得られると思ったからね。ドイツ語で「シュプリンゲン(飛翔)」という言葉がとても好きでね。ドイツで日本の美を再発見したとき、僕は飛び跳ねるように生き生きしたね。そう、あのイルカは自分なわけ(笑)。だからタイトルもそれでいこうと思った。(p.46)

宮田さんが自身の半生を語ったこの著書のタイトルからして、『イルカのごとく』(2009)なわけです。

余談:応募要項の面白い符合

ところで、現在エンブレム選考特設ページからダウンロードできる、「東京2020大会エンブレム」応募要項の中には、ちょっと面白い小ネタがあります。

展開案テンプレートになっているこちらの写真:

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展開案 > 街頭装飾(バナー)

この後ろに見えている建物は、東京建物京橋ビル(Wikipedia)です。窓の配置が特徴的ですね。

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commons.wikimedia.orgより

週末、銀座で歩行者天国が行われる通りから正面に見えます。

20151022_320px-Car_Free_Ginza

Wikipedia「東京建物京橋ビル」より(2008)

このビルの2階に、先述の「宮田亮平展」会場だったLIXILギャラリーが入っているという事実は、とても面白い符合です。

「偶然」で片付けてしまうのはなんとも惜しいので、「どうせ出来レースでしょ」みたいな話が好きな人は材料に使ってください。

展開案テンプレートは、なぜか少し昔の写真

細かいついでに、展開例用として使われている写真が少し古いものであることもわかりました。理由まではわかりませんが。

参考に、撮影地点近くのGoogleストリートビューを載せておきます。撮影日時は「6月2015」となっていました。

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テンプレートの写真と比べてみると、

  • ビルの下部(1、2階部分)の外装の色
  • 街灯の形

が違っていることがわかります。

なぜか「応募」要項

加えてもう1つ申しますと、大会組織委員会の名で出ている書類の名前が、「募集要項」でなく「応募要項」となっていることが、私には少しだけ気持ち悪いです。

飯間浩明さんもここに反応されていました。

会見で宮田さんは、終始「募集」の趣旨で「応募」と言っていますので、「応募要項」の名称もたぶん「宮田カラー」です。

個人的な感覚としては、こちらのアクションである「応募」を使うなら、後ろは「要項」でなくて「要領」としてほしいところです。

余談でした。

というわけで最後はだいぶ脱線しましたが、「宮田亮平=イルカおじさん」というお話でした。

たぶんつづく

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