亀倉雄策、「札幌1972」のシンボルマークdisりまくりの巻―『曲線と直線の宇宙』から

こんにちは。デザイン芸人「デザインや」です。

用件はタイトルのとおりです。

ひとつ前の

からのスピンオフ的記事です。

隠れお楽しみポイント:悪口

亀倉は文章に好き嫌いがはっきり表れていて、筆致が小気味いいです。特に、悪口が冴えています。

こちらは違う方向で、腰を抜かしました。

亀倉雄策の「札幌1972」へのdisりがひどい―「雪の美学」(1976)

「雪の美学」(1976)という一文からです。

もう数年前のことだから、今ここに書いてもいいと思うが、実はサッポロ冬期オリンピックの時、シンボルマークのデザインを私も依頼された。この依頼には数人の第一線のデザイナーが選ばれた。そのなかで、いちばん優れたものを採用するという方針である。私がここに並べた結晶のひとつに文字を組み合わせて提出したが、残念ながら不採用となった。

という経緯からの

採用となったオリンピックのマークは雪のパターンと日の丸だった。

という話です。

そのマークがこちら。

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札幌冬季オリンピック シンボルマーク 1971|ndc.co.jp

亀倉の悪口は、ここからです。

ご記憶のことと思うが、この雪は結晶ではなくて、雪が解けようとしている形である。このパターンは日本の古い紋章のなかにある「淡雪」という図がらである。要するに春のあわ雪だからスキーを滑るわけにゆかない。ベチャ雪ではスキーはやれないのだ。

本書で知りましたが、亀倉が唯一たしなむスポーツがスキーだそうです。

いかに優れたデザインでもおかしいと思うのは私だけでなく、スキーを知っている人たちは、みな首をかしげた。このマークを評価した審査員も、これをデザインしたデザイナーも、スキーに対して、雪に対して、ほとんど知識を持っていない人たちだった。

なかなかの悪口です。

デザイナーの言い分

ここで、前掲の「札幌冬季オリンピック シンボルマーク」に記載の「デザイナーの言い分」も参照してみましょう。

冬または北海道を象徴するものとしての雪の結晶は、現実のとんがった結晶ではなく、日本の古い紋章の中から「初雪」と呼ばれる紋章を選び出し、カーブの線を造形的に整理して、シャープにデザインしなおした。「雪」であると同時に「初雪」であるという、いわば日本における雪の象形文字といえる文化遺産であり、日の丸とよくマッチして、力強い日本美を象徴し得たと思う。

筆者クレジットは、永井一正さんです。発表後ひと月あまりで取り下げとなった、「幻」の東京五輪エンブレムの選考委員長でもおなじみです。

こちらでもざっと調べたところ、この紋章の名前は永井さんの言うとおり「初雪」のようです。

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初雪|家紋のイラストより

20150902_km1883

春の雪|家紋のイラストより

なので、「雪に対して、ほとんど知識を持っていない」という亀倉の「disり」は言いがかりに思えます。

ただし1972年以降に、当該の家紋の呼び方が「初雪」に変わった可能性は残されていますが。

そんなところです。

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