こんにちは。デザイン芸人の「デザインや」です。
この記事において、文字(あんなの)は飾りです。
文字など読まず、ページの画像を順に「見る」だけで話がすむようにしてみました。
偉い人にはわからんのですよ。
この記事の「見方」
使用する画像だけで言いたいことを述べていますので、読むのがだるければ、順に「見る」だけでいいです。
はじめに
実は盗作騒ぎの起こる前から評判の悪かった、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会公式エンブレム。(以下「五輪エンブレム」とします)
mind-sonar.comでの「東京オリンピックのロゴマークが決まりましたが、「いいデザインだ」と思う人」(2015/07/26~29実施)というアンケートでは、YESの回答比率が24%でした。
私が思うに、この斬新さがいきなり理解されるにはいささか時代が早すぎたのかもしれません。
そこでこのたび、不肖のデザイン芸人が五輪エンブレム全力応援!プロジェクトを発足させました。その計画書がこちらです。
- 「東京五輪・公式エンブレム全力応援!プロジェクト」はじめました。―計画書(1)(2015/08/20)
- 五輪エンブレムへの「不評・悪評・異論」事業仕分け―全力応援!プロジェクト計画書(2)(2015/08/20)
「学年ビリからの五輪エンブレム入門」 表紙のことば
プロジェクト計画にもとづいた施策として、五輪エンブレムの魅力に触れるための「入門講座」を始めます。
名づけて「学年ビリからの五輪エンブレム入門」です。
たとえ読者がビリギャルであろうと、不見識の奈落にいようと、何びとたりとも見放しはしない。と、志だけは高く持とうという試みです。
第1回のテーマ
1回めの今回は、「日本らしさ」の感じ方がテーマです。
要約:エンブレム「日本らしさ」の感じ方
東京五輪エンブレムが「日本らしくない」「日本的要素ゼロ」とお怒り・お嘆きの皆さん。
これですからね。
しかし実は、これこそが「日本らしさ」全開の配色なんです。
画像検索1回でオッケー
このエンブレムの「日本らしさ」は、たった1回の画像検索で体感できます。
ご覧の端末で10秒あればできると思いますので、ぜひ一度試してみてください。
検索キーワード
使うキーワードは2つ、「日本」と「ラッカー」です。
ただし英語です。
「日本らしさ」を知るための画像検索結果
私のパソコンの場合、Googleの画像検索結果はこうなりました。
キーワード:japan lacquer on Google
エンブレムに通じる「日本らしさ」が現れているように思います。そちらはどうでしょうか。
「日本らしさがない」「日本的要素ゼロ」の阿鼻叫喚
五輪エンブレムへの「日本らしさがない」の声は、Twitterで「エンブレム 日本」と検索すると簡単に見つけられます。
その例です。
【五輪】 スペイン在住の日本人デザイナーが考案した扇モチーフのエンブレムが大好評 : http://t.co/KhJ4vXEqFX 何度も言うけど、別に佐野さんがパクったとかパクらないとかそんなのどうでもいい。私は単にあのデザインが暗くて日本らしさがないから嫌なのよ。
— AUGE(オージェ) (@Planet_grs) 2015, 8月 21
「日本らしさがないから嫌」
この葬式エンブレムを擁護している人は、どの辺に日本らしさや五輪らしさを感じていたのだろうか。私が選考する立場なら、応募作がこれ1つだけでも没にするレベルだ。
— 山佐 かぼ (@kabo777) 2015, 8月 21
「どの辺に日本らしさ…を感じていたのだろうか」
佐野デザインのそもそもの問題点は、 「あのデザインをみてだれも日本の文化と伝統をイメージできない」それでもイメージしたら、「喪章とか、葬式でつかう鯨幕」 この時点で佐野デザインは失格。ましてパクリだと論外。 (ボスが偉い人へ解説した内容w @vivakankan
— オフイス・マツナガ (@officematsunaga) 2015, 8月 20
「だれも日本の文化と伝統をイメージできない」
奈落感がすごいです。まるで阿鼻叫喚の地獄です。
奈落の阿鼻叫喚を救う、五輪エンブレムの「配色」論
こうした奈落に向け、五輪エンブレムの「日本らしさ」の糸を垂らし、阿鼻叫喚からの救出を試みます。
配色を決めている2つのモチーフ
五輪エンブレムの配色を決めている「元ネタ」は、大きく2つあります。
ひとつめ:日の丸
ひとつは、もちろんこれ。
日章旗、日の丸の旗です。「白地に赤く」の2色がまずあります。ここまでは問題ないかと思います。
問題は、もう片方のモチーフが見出されていないことです。
ふたつめは、「日本ラッカー」
その2つめとは、冒頭で述べたとおり「日本 ラッカー」です。
英語で「japan lacquer」を画像検索すれば、トータルでの「日本らしさ」はさほど無理なく感じられるはずなんです。
「日本ラッカー」概説
- 英語の「lacquer」は、全体にはほぼ日本語の「ラッカー」と共通の意味ですが、狭い意味では漆(うるし)のことを指します。
- うるし塗りの器を、漆器(しっき)といいます。
- そしてジャパンのラッカーといえば、うるし塗りのことです。
検索結果ギャラリー:japan lacquer
画像検索結果から目をひかれたものを数点ピックアップしました。
どれもきれいですね。美を感じます。
「japan」といったらこの色!
そして英語で、(大文字ではなく)小文字で始まる「japan」といえば、こういう意味です。
※強調・下線引用者
A black enamel or lacquer used to produce a durable glossy finish.
(耐久性の光沢仕上げに使う、黒いエナメルやラッカー)
具体的には、
Articles made in a Japanese style, especially when decorated with lacquer or enamellike varnish.
(日本式に作られた品物。特に、ラッカー(漆)またはエナメルのようなニスが施されたもの)
です。
つまりこういう品物を指します。これがjapanです。
そして漆黒の「黒」、これこそがjapanカラーです。
※ちなみにこれは、CGです。
「酷似」指摘がスペインでは「スルー」だった理由
五輪エンブレムには、ベルギー・リエージュ劇場のロゴに続いて、もうひとつ類似が指摘された既存のロゴマークがありました。スペイン・バルセロナ発のこちらです。
rebuild japan heystudio.esより
以上をふまえると、提訴により「事件」となっているベルギーの事案と違って、当のスタジオが指摘を「スルー」した理由もわかります。
なぜなら、この配色こそが「日本」を表現する色、すなわち「ジャパンカラー」構成色に他ならないからであります。
言い換えると、五輪エンブレムがこれをパクったのではなくて、スペイン側で「日本」の配色をパクっているのです。
若干、人聞きの悪いもの言いでした。
丁寧に説明し直すと、パクリというよりも
- この配色が「日本」
という理解が、しかる筋では共有できているとする方が、より適切な事態の記述でしょう。
ここまでで大体の主張はできましたので、後半はお楽しみ企画「検索キーワードしりとり」です。
お好みでどうぞ。
検索キーワードしりとり(1)makie編
漆黒ついでにひとつ知っておいてほしいのが、「蒔絵(まきえ)」のことです。※強調は引用者
まき-え【蒔絵】
漆を塗った上に金銀粉または色粉などを蒔きつけて器物の面に絵模様を表す、日本の代表的漆工芸
―広辞苑(第五版)
「金銀」が登場し、五輪エンブレムのカラーがこれでシャキーンとそろいました。
日本独特の技法だからでしょう、英語でもそのままmaki-eで通じます。
検索結果ギャラリー:lacquer maki-e
「lacquer makie」の画像検索結果を見ていきましょう。
こちらではこんな感じになっています。
lacquer makie on Google
こんな具合に漆の器に描かれているのが、蒔絵です。
エンブレムに描いてみた
エンブレムに、上の素材から取った蒔絵をそのまま描き足してみました。
五輪エンブレム(そのままmakieバージョン)
野暮な説明ですが、五輪エンブレムをかみ砕いて説明するならば、たとえばこんな姿も図柄と配色に込められているわけです。
これでも「日本らしさ」「日本的要素」をどこにも感じないでしょうか?
感じない?
それは困った。対策を考えて出直します。
でも、描き足さない方が美しい
エンブレムに「蒔絵」を描き足してみることで、デザイン芸人にも逆算的に次のような制作プロセスが感じ取れました。
恐らく、五輪エンブレムのデザイナーは、
- 現行エンブレム+「そのまま蒔絵」バージョンみたいなものも試したはずです。
- しかし最終的にそれらは全部捨てて、シンプルな図形のみで勝負しています。
若い人にはわからんのですよ
たしかにこういう渋みのある美は、一般に若い人にとってわかりづらい面もあります。私見では、ここらの良さが身にしみてくるのは、早くて50代後半あたりからです。
「五輪エンブレム」=「妙に仕上がりのいい工作の宿題」説
なので私は、このエンブレムは純粋に佐野研二郎さん個人(40代前半)の作ではなく、もっと年齢を重ねた誰か「おうちの人」が手伝ってこしらえてあげたのだろうなと思っています。
実学年以上にえらく仕上がっている、夏休みの工作の宿題のパターンです。
確証はありません。ただの直感です。
検索キーワードしりとり(2)まきえ編【閲覧注意!!】
japan → lacquer → maki-eと続いた検索キーワードしりとりの旅、最後は「料理」です。
maki-eと組み合わせて検索してみましょう。
ただし今度は、日本語に戻して「まきえ 料理」です。
検索結果ギャラリー:まきえ 料理
まきえ 料理 on Google
ameblo.jp/makiegg/entry-11391270741.html(2012/11/11付)
ameblo.jp/makiegg/entry-11208279516.html(2012/04/14付)
ameblo.jp/makiegg/entry-11025939987.html(2011/09/27付)
ameblo.jp/makiegg/entry-10582753473.html(2010/07/06付)
ここまでの、欣求浄土の念にも届く美の世界から一転して、一気に奈落へと突き落とされた感がいたします。
再びの、阿鼻叫喚地獄です。
まとめ:発見事項
発見事項をまとめます。
- 五輪エンブレムの配色は、「Japan」のフラッグと「japan」のラッカーのカラーでした。
- 海外のその筋では、五輪エンブレムこそが「日本」のアイデンティティカラーです。
- 漆器(japan, Japanese lacquerware)の美は、施された蒔絵(maki-e)とともに世界で高く評価されています。
- 蒔絵は英語でもそのまま「maki-e」です。
- 「そのままmakie」から「園山真希絵」へは、美に関して、およそこの世で想定できる最大の振れ幅を持っていました。
まきえの技法(美しい方) commons.wikimedia.org
美しくない方はもうたくさんです。
おわり
コメント
はじめまして。
いつも、精緻な論理が素晴らしいと思いながら拝見しています。蔭ながら応援させていただきます。