元気ですかー!?
ごぶさたしておりました。「元気はもらうものか?」をメインテーマにしたシリーズ「元気の研究」、第5回以来1年以上進捗がなくこのまま放置かと思われていたところ、ここへきて大きな進展を見せました。
要約:Executive Summary
- 近ごろ、元気がギフト化しています。あげたりもらったりしているからです。
- そんななか、日清オイリオギフトの2015年夏のコピーが「あなたの元気が、いちばんうれしい。」となっていました。
- 不穏な事態です。ギフトの元気化すれすれです。まるで元気クーデターです。
- かかるギフト的扱いから元気を取り戻したいです。
オイリオギフトカタログ|日清オイリオギフトより
元気のギフト化
はじめに、元気の研究が進んだきっかけを述べます。
パオロ・マッツァリーノさんの『「昔はよかった」病』(2015)を読んでいたら、「第9章 ハイテンションな元気をもらいました!」にこんなことが書いてありました。
いつから元気はもらったりあげたりできるお中元のハムみたいになったのでしょう? (p.148)
ああそうか。元気はお中元・お歳暮化しているわけか。
納得です。
つまり、今日の「元気」とはギフトなのです。
日清オイリオの「元気」はいま
元気がギフト化している。
それで思い出すのは、このギフトです。
そうです。「夏|暮れ の元気なごあいさつ」、日清オイリオギフトです。
それでサイトを訪れてみたところ、日清オイリオギフトがいまや危機的状況に陥っていました。愕然としました。
まったくうかつでした。
確認:日清オイリオギフトは「ごあいさつ」だった
最初に確認しておきましょう。
日清オイリオのギフトといえば、久しく
- ♪~ 夏の/暮れの 元気なごあいさつ
でおなじみでした。
いいですか。ここ大事ですから、よく聞いてください。
日清オイリオギフトの世界では、ギフトとは「ごあいさつ」なのです。
ギフト=ごあいさつ
という等式です。
従者だった「元気」
そして「元気な」は、言ってみれば「ごあいさつ」につき従う家来みたいなもんです。「ごあいさつ」を修飾する語(形容動詞)という関係だからです。
ついこのあいだまでは。
「元気な」はどこへ?
ところが卓球の福原愛選手がCMタレントを務める現在、CMギャラリーから「日清オイリオギフト」“選ぶ理由 お中元” 福原愛 篇(15秒)を視聴すると、こう言っています。
夏のごあいさつに、オリーブオイルを、選びました。
「ごあいさつ」はいいとして、「元気な」の言葉が出てきません。
「元気な」は、自分の主であるはずの「ごあいさつ」を離れてどこへ行ってしまったんでしょうか?
福原さんの背後には、大きく「夏のギフトに新提案。」の文字も見えます。
イヤな予感がします。
「元気」はここに。ヤバい!
もしや?と参照した日清オイリオギフトのトップページが、大変なことになっていました。
キャプチャしておきましたのでご覧ください。
あなたの元気が、
いちばんうれしい。
ですってよ。驚きました。「元気」が「ごあいさつ」をギフトの座から追い落としにかかっているではありませんか。
「元気」の専横、跳梁跋扈もここまで至ったかと震撼します。危険です。
まるで元気クーデターです。
わかりませんか?
検証:日清オイリオ内部の「元気クーデター」
日清オイリオ内部では、「元気クーデター」とでも呼ぶべき事態が進行中でした。
それを、同社ギフトのCMソングの歌詞と比較対照することで確認していきましょう。参照する歌詞とはもちろんこれ、中高年世代であれば旧式の
♪日清サラダー油セット
時代からおなじみの
♪日清オイリーオギフト
のCMソングです。
失われた「笑顔」
最初の
- ♪夏の元気なごあいさつ
- ♪暮れの元気なごあいさつ
に続くフレーズは、日本人なら大半が答えられるでしょう。
- ♪あなたの笑顔が見たいから
ですよね。
だのに、先ほどのコピーは
あなたの元気が、
いちばんうれしい。
でした。「笑顔」がいません。
うれしいのは何だ?
穴埋め問題にしてみました。
問. 下線部に入る適切な語句を答えなさい。
- あなたの「__」が、いちばんうれしい。
従来の日清オイリオギフトなら、ここは「笑顔」のポジションだったはずです。なのにそこにはいまや「元気」が立ち、「笑顔」がどこかに追いやられてしまっています。
血の気が引きました。
視点の確認
CMソングが誰の目線で書かれているかを確認しておきます。
♪~
{夏の/暮れの}元気なごあいさつ
あなたの笑顔が見たいから
ですから、贈る側と解釈するのが自然ですね。
「あなたの元気が、いちばんうれしい。」の解釈
いくつか視点を変えることで、日清オイリオギフトのコピー:
あなたの元気が、いちばんうれしい。
が、どういう世界観に基づいていそうかを検討します。
(1)贈る側:ギフト=ごあいさつ
まず、従来のCMソングと同様に、贈る側の視点から考えます。
これも従来同様の「ギフト=ごあいさつ」という世界観で文言を補うと、こんな感じでしょうか。
- (ごあいさつに日清オイリオのギフトを贈った結果)あなたの元気が(満ち足りることが)、いちばんうれしい。
こう読めば意味は通じます。
ただ、ずいぶんと回りくどい感じがします
(2)贈る側:ギフト=元気
もしも、ギフト=元気ならば、どうでしょうか。
- (日清オイリオの元気が)あなたの元気(に届いて加わること)が、いちばんうれしい。
だいぶシンプルになりました。
(3)受け取る側:ギフト=元気
そのまま受け取る側にもしてみましょう。
- あなたの(日清オイリオ製)元気が、いちばんうれしい。
これが最もシンプルな解釈となってしまいます。
危険です。
総括
あなたの元気が、いちばんうれしい。
この言葉は、従来どおりの「ギフト=ごあいさつ」という世界観をもとに読んでも意味は通じます。しかし「ギフト=元気」にすると、はるかにシンプルに読めてしまうのです。
これはすなわち、「ギフト=ごあいさつ」の等式に「元気」が割って入り、「ごあいさつ」に取って代わろうとしていることを意味します。
「ごあいさつ」を追い落とし、「元気」がギフトのカウンターパートになろうとしています。
つまり「元気」は、
ギフト=元気
を目指しているわけです。危険です。
彦摩呂さんならここで、こう言うかもしれません。
まさに、元気のクーデターや~
日清オイリオギフトという周辺有事
このままでは、日清オイリオギフトのラインナップに「元気」そのものが加わるのも時間の問題です。
元気の専横と暴走が始まっています。非常に危険です。
世が世ならここで集団的自衛権を発動し、ただちに治安部隊を出動させて然るべき事態です。
全力で阻止しなければなりません。
提言的まとめ
日本を、取り戻す。いや違う。
元気を、取り戻す。
いま取り戻すべきは、断じて日本ではありません。元気なのです。
いまや盆暮れのギフトのごとくなりつつある元気を、面妖なる世界観から取り戻そうではありませんか。近い将来、日清オイリオギフトのラインナップに「元気」が加わるような事態は、断じて招いてはならないのであります。
まっとうなギフト界での元気の姿とは、
- 贈る人の「元気なごあいさつ」で、贈られた人が「元気が出る」「元気になる」。
であるはずです。それがいまや、この記事で確認したとおり、日清オイリオギフトの世界では、「元気」自身がギフトになる足場を着実に固めていっているという、世にも恐ろしく面妖な事態が進行しようとしていました。
この流れを、なんとしてでも押しとどめなければなりません。
次回予告:解決プランの新提案。
そのためには、どうすればよいか?
結論だけ述べると、ギフト化されている「元気」を「病気」にすればいいのです。
そうすることが、うっかり元気をもらったりあげたりしてしまうような人をも含めて、みなが各自相応の元気を備えるための早道であると、私は強く確信しているのであります。
この道しかない。
つづく
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