百田尚樹さんの「アホ」論―『全国アホ・バカ分布考』再読(2)

こんにちは。

「百田君」の書かれ方を確認するため、「探偵!ナイトスクープ」のプロデューサー(当時)、松本修さんの著書『全国アホ・バカ分布考』(1993, 1996)を読み直しました。

検証:百田尚樹さんはそういう人か?―『全国アホ・バカ分布考』再読(1)」に続くこの記事では、同書の第七章で「百田君」が開陳するアホ論を紹介します。

ここまでのあらすじ

詳細は同書を参照してもらうとして、年単位で続けてきた「アホ・バカ」調査により、松本さんは次の結論に達します。

本書に登場した順に記します。

  1. 日本全国の多種多様な「アホ・バカ」表現は、どれも元は京の流行り言葉
  2. バカの語源は、白楽天の諷諭詩に出てくる「馬家の宅」
  3. アホの語源は、中国・江南の方言「阿呆(アータイ/アーガイ)」

「百田君」のアホ論

「残る疑問」であった「アホ・バカ」の語源について、松本さんが「百田君」「日沢君」2人の放送作家に披露するくだりからです。

黙って聞いていた百田君は、やがて真剣な表情でこう言った。
「今までの話を聞いて、ぼくは『アホウ』だけが他のすべてと違う、別格の言葉だという気がしてきましたね」(p.458)

先に要諦をまとめると、その理由はつぎのとおりです。

  • ムダがない
  • 理屈がない
  • 単純明快
  • 響きもいい

続くやり取りから、ポイントを抜粋します。引用文中の下線は引用者によるものです。

ムダがない

「…『阿呆(あほう)』の『呆(ほう)』、その一字だけで、すでに意味をなしている。つまり『阿呆』は、ムダをすべて削(そ)ぎ落とした表現であるという点なんです」(p.458)

理屈がない。単純明快

「他のアホ・バカ表現は、全部、たとえなんですよ。(略)馬家もまさにたとえですよね。つまり、アホ・バカ表現は、すべて理屈なんです」
「そう。そのとおり」(p.458)

「しかし、ただひとつ『阿呆』にだけは理屈がない。『呆』であること、すなわち『間の抜けていること』そのものを一音で示す単純明快さなんです。(pp.458-459)

百田君は理屈を嫌い、単純明快さを好むことがうかがえます。つづき。

原始時代から中世にかけて日本人はさまざまなアホ・バカ表現を考えてきた。そして考えに考えつくした果てに、ついに中国から『阿呆』を手に入れて、もうこれ以上、新しい表現を考える必要がなくなったのです。それは『阿呆』こそまさに、何千年もかけて日本人が探し求めてきた、究極のアホ・バカ表現だったからではないでしょうか!」
「なるほど。面白いなあ」(p.459)

求めていた究極の「ホ」

「しかもです。『ホー』だけでまとめてしまったところに、この言葉の偉大さがある。日本人はずっと『ホ』を求めていたんですよ。ホッとする、ボーッとする、ホッコリする、ホノボノ、ホンワカとした気分。『ホ』のつく言葉は、心や体の弛緩(しかん)した状態を表しています。そして『ホウケモノ』『ホレモノ』の『ホ』」(p.459)

「ついに日本人は究極の『ホ』を手に入れたんです。(略)『アホウ』はまさに、和漢の文化が融合した最後の結晶としてあるんです。(p.459)

響きもいい

しかも『アホウ』は、実に響きがいい。音楽的にも美しい。日本語を理解しない外国人が聞いても、この言葉にだけは、雰囲気(ふんいき)の違うものを感じるはずです」(pp.459-460)

ほんまかいなという話ではあります。

ミニ情報:百田君はフルヴェンが好き

フルトベングラーを熱愛するクラシック・ファンの百田君は、言葉の響きにまで言及してとどまるところを知らなかった。(p.460)

「フルトベングラー」は、第2次大戦前後に活躍したドイツの指揮者です。

Wilhelm Furtwängler(1886-1954)

CDの規格は彼の指揮する《第九交響曲》を1枚に収めるために決まったという説もあるほどです。
参考:CDが74分なのは|The Web KANZAKI(2005/12/27 最終更新)

松本修さんの切り返し

さて、

異常なまでの「アホウ」の褒(ほ)めっぷりである。

と、そんなホの字な百田君への、著者松本さんの切り返しがふるっていました。つづきからです。

「百田君」
と、私は思ったままを言った。
「関西ナショナリズムに酔うてるんと違う?」
「えっ」
と百田君はあわて、そして高々と笑った。
「やっぱり、ばれましたか」(p.460)

まとめ:私のアホ論

ということで、今後の処し方をまとめます。

  • 近ごろ、百田君時代のナショナリズムが一段と肥大しているようです。
  • いろんな意味でホの字組の百田さんを罵りたいときは、アホが最適です。
  • 日本には、まだまだアホが足りていません。百田さんをめぐる昨今の騒ぎには、アホが決定的に欠けています。
  • 百田さんがザコキャラに見えるほどの壮大なアホを掘り起こすこともまた、大事ではないでしょうか。

現場からは以上です。

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