こんにちは。
皆さん、話に付く「尾ひれ」のこと、知ってましたか?
恥ずかしながら、私は今までずっと勘違いしていました。
要約:Executive Summary
「余分なもの」「余計なもの」という意味の「尾ひれ」。話には何かと尾ひれが付きがちです。
この「尾ひれ」って、「尾」と「ひれ」のことなんですね。国語辞典にそう書いてありました。
私はこれまでずっと、「尾ひれ」と見聞きすると1つの物体をイメージしていました。知らんかったわー。
イメージ図
図で説明します。
「尾ひれ」とは、どうもこういうイメージらしいのです。
図1. 国語辞典で説明される「尾ひれ」※commons.wikimedia.org マオナガに加筆
辞書の「尾ひれ」
国語辞典では、「尾ひれ」を「尾」と「ひれ」と説明しています。いくつか抜粋して紹介ます。
広辞苑(第五版):
(本体でないものとしての)尾とひれ
明鏡国語辞典:
魚の尾とひれ
新明解国語辞典:
[生きた魚に不可欠なものとしての]尾と鰭。
デイリーコンサイス国語辞典(sanseido.net):
尾と鰭
教科書によく出る!小学生の慣用句絵事典(Google eブックス):「尾ひれがつく」
「尾ひれ」は、魚の尾とひれのこと。
とまあ、どれもそろってこんな具合です。
「尾ひれ」は複数
大ざっぱに言えば、「尾ひれ」は単数ではなくて複数だったのですね。「尾」やら「ひれ」やら、といった感じです。
知りませんでした。
今までのイメージ
今まで私は「尾ひれ」をずっとこんな風にイメージしていました。
図2. 先週までの「尾ひれ」のイメージ
それは「尾びれ」
辞書の次の項目に、きちんとツッコミが用意されていました。
それは「尾びれ」です。
魚の体の後端にあるひれ。
(明鏡国語辞典)
は、後ろの「ひれ」が濁って「尾びれ」となります。
なるほど、「尾」&「ひれ」の方が筋は通る
たしかに「尾ひれ」は、「尾」と「ひれ」と解する方が、「尾ひれ」の「余計なもの」感が一段とはっきり打ち出されます。いちおう納得できる説明です。
誤解している人多数疑惑
検索してみると、噂話に付く「尾ひれ」も、「尾びれ」と濁った形で使われている用例が少なからず見られました。
「話に付く余計なもの」について、先週までの私と同じようなイメージでいるのではと疑われます。
「尾ひれはひれ」も誤解の所産か?
加えて、
- 尾ひれはひれ
- 尾びれ背びれ
といった言い回しがあることもこの機会に知りました。
きっと「尾ひれ」の語感では「余分なもの」が足りないように感じられて付け加えられたのでしょう。
同類の語句として「根掘り葉掘り」の「葉掘り」があります。
どれもそのパーツ単体には意味がなくて、付け足されたトータルで語感が作られている表現です。
辞書に追随の兆し
「尾」と「ひれ」と説明している国語辞典の中にも、私が思っていた「尾ひれ」イメージに寄せ始めているものが見られます。
コトバンク > デジタル大辞泉の解説では「おひれ」の項に
魚の尾とひれ。おびれ。
と、「おびれ」の語を載せており、それを「尾びれ」とも言う感をかもし出しています。
今後「尾ひれ」がどう展開するか、日本語でされる話に付きがちなのはこれからも「尾ひれ」なのか、要注目です。
まとめ:厄介な「連濁」の世界
「尾」+「ひれ」→「尾びれ」のように、2語が複合して後ろの語頭が濁音に変わる現象を「連濁(れんだく)」といいます。
Webにある資料にざっと目を通したところ、この連濁というのは非常に厄介なしろもので、いまだ明解なる規則が見いだされていないようです。
この記事で見たように、たとえば「尾」「ひれ」の組み合わせでは、連濁が起こったり起こらなかったりします。
「ひれ」について言えば、生きたサメの「尾びれ」も、切り取ったら「フカヒレ」です。「えいひれ」も「ふぐひれ」も同じ構造です。
なんでこんなことになるのか、まったく謎です。
ほかにも
- 「浮草」の「草」は「くさ」か「ぐさ」か?
- 「中田氏」は、なか「た」か「だ」か?
- なぜ(透明な)「すまし汁」が「じる」で、(不透明な)「みそ汁」が「しる」なのか?
だとか、わからないことだらけです。
連濁の謎を解明し、連濁統一理論が確立できたら、確実に歴史に名を残せます。
謎に迫っていきたいのはやまやまですが、まったくカネの臭いがしないジレンマ。
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