こんにちは。
「トゥギャれよ」と言われそうなところをブログにしている、そんなサイバーパンク記事です。
要約:Executive Summary
港の空の色は、空きチャンネルに合わせたTVの色だった。
という『ニューロマンサー』(ウィリアム・ギブスン 1986, 原書1984)の冒頭の一文。
いわゆる「砂嵐」の色だと思われていた、この港の「空の色」に「青空」説があるそうです。
関連のツイートを収集してみました。
※画像は、commons.wikimedia.orgより
私の見解
調査した感触から私見を述べますと、「青」というのは、ボタンの掛け違い的なズレが重なった末に生まれた珍説に思えます。ありていに言えば、デマです。
詳しくは、記事を分けて別途述べることにします。
『ニューロマンサー』ってなに?の諸氏へ
なお『ニューロマンサー』については、ニューロマンサー|ニコニコ大百科(仮)が簡潔でわかりやすかったです。
『ニューロマンサー』「空の色」問題・関連ツイート
日本語訳:
港の空の色は、空きチャンネルに合わせたTVの色だった。
原文:
The sky above the port was the color of television, tuned to a dead channel.
となっている『ニューロマンサー』のこの書き出し、はたして
♪お空の色はどんな色?
※出典|YouTube
なのでしょうか。
発端
タイムラインでこんなツイートを見かけました。
ニューロマンサーの「港の空の色は、空きチャンネルに合わせたTVの色だった。」って冒頭、長いこと砂嵐の灰色をイメージしてたけど、アメリカのテレビの空きチャンネルは真っ青つまり快晴のイメージだったらしいと聞いてカルチャーショックを受けたのは結構最近のことだった。
— 九岡望 (@kuokanozomu) 2014, 11月 27
ショックの声
このツイートに対し、「衝撃の新事実!」「それマジ?!」的な反応があがります。
ニューロマンサーのイメージが変わったorz
— 内科部長(ミートクズ) (@naikabucho) 2014, 11月 27
他の本ならそこまでショック受けないんだけど、ニューロマンサーはなあああ、読後に私の本棚の構成をがらっと変えた本だからな……なんかまだ動揺しよるよ
— 犬居 のすけ (@inui_nosuke) 2014, 11月 27
えーっ!ニューロマンサーの「テレビの空きチャンネル色」って今まで曇天の描写だと思ってたよ!アメリカでは空きチャンネルって真っ青なのかよ!ショック!
— サイバー斎藤 (@cybersaitoh) 2014, 11月 28
疑問の声も
一方、
ニューロマンサーの空きチャンネル色の件、ソース不明情報につき注意 ▸ スプロール住民各位
— Cntrftr (@ANI3) 2014, 11月 28
「タイプライターもろくろく使えない」ほどのメカオンチだったギブスンが、ニューロマンサーの冒頭を書いた当時(少なくとも1984以前)、カナダの一般的なテレビの空きチャンネルがどう見えたかって想像すると、ブルースクリーンは眉唾だと思う。
— Cntrftr (@ANI3) 2014, 11月 28
いやいや、ホワイトノイズ感知して青色画面&無音にする回路積み始めたのってTVが真空管時代抜けてビデオ端子が標準化してリモコン使って入力切り替え普通にやるようになってからでしょ。「今だと空きチャンネル色って青だよね」て冗談はニューロマンサー邦訳時からあったかなあ。>RT
— ふみいち (@fumi1ts) 2014, 11月 28
と、背景や技術史的側面から疑問を呈する声もありました。
関連証言
単体での真偽は不明ながら、「青」説への疑義を補強する証言も散見されます。
ニューロマンサー冒頭で描写される「空の色」。ちょっと読み進むとすぐに「TV空の眩しい光」だの「毒を含んだ銀色の空の下で」とか出てきて、これはちょっと青じゃないだろう、と。そもそも夜空でもあるし。
— Zig_mac (@Zig_mac) 2014, 11月 28
ニューロマンサーは監修ティモシーリアリー、テーマ曲DEVOという珍面子で90年ごろ米国でゲーム化されてるんだけど、そっちだと空は灰色砂嵐だったなあ。
— ginsho (@ginsho) 2014, 11月 28
ニューロマンサーの「空きチャンネルに合わせたTVの色」は青だった説見かけたけど原文のフレーズでイメージ検索すると普通の砂嵐だった https://t.co/KorS1q0AjP pic.twitter.com/RjnzOCZIW3
— 止まらないダンプカー (@uasi) 2014, 11月 28
たしかに小説の世界観に「青」は合わないなという気がします。とか言いながら、私は小説の存在すらまともに知りませんでした。
諸説あります
そんなこんなで、元のツイートをされていた方も
なんか色々解釈があるらしいがどうなんだろう。でもテレビが全地デジ化して久しい今じゃ空きチャンネルに合わせると真っ黒だから、この世代の人が後に件の分を読むと真っ黒な夜空をイメージするんだろうか。えすえふを感じる。
— 九岡望 (@kuokanozomu) 2014, 11月 27
と、「諸説あります」的なところに落ち着かせています。
次回予告
出典マニアの私はそれでは気がすまないので調べてみました。だいたい謎は解けました。
結論を言えば、「空きチャンネルの色=青」説は、技術の進歩により「砂嵐」が体験しにくくなってリアリティーが薄れてきた結果生まれた「珍説」です。
悪しざまに言ってしまえば、デマです。
類似問題:「どんぶり勘定」
この問題は、ちょうど、「どんぶり勘定」の丼というのは、腹掛け・前掛けのポケット状になった部分のことなのに、食器的な何かと勘違いしている人がいるのと同じ構造をしています。以前に記事にしました。
「どんぶり勘定」と聞いて食器的な何かイメージしてるヤツちょっと来い (2014/03/21)
つづく
Neuromancer|William Gibson Official Website
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