こんにちは。
この記事では「円安」「円高」のややこしさを解明します。
強引な覚え方ではなく、小学生にも伝わるような、日本一わかりやすい(※当社比)記事を目指します。
はじめに:円安・円高のややこしさ
円安・円高はややこしいです。
たとえば、1ドル=100円が80円になったら「円高」です。100円から80円に下がっているのに円安ではありません。
反対に、1ドル=100円が120円になったら「円安」です。上がっているのに、「安」です。
ややこしいです。
ややこしさの謎が解けた
以前、なぜこんなややこしいことになっているのかを考えて、ひとつの結論に達しました。
詳細を大学院卒の知人に話したら「何をいまさら」という反応でしたが、高卒の嫁にはそこそこウケが良かったので、話の内容をブラッシュアップして記事にします。
要約:Executive Summary
円安・円高はなぜ、ややこしいのでしょうか?
それは、日本語表現での記述がねじれているからです。
「記述がねじれている」とは?
すなわち、高い安いを問題にしたいのは「円」であるはずなのに、
- 1ドル=xxx円
のように、他の通貨(通常、ドル)を基準とした記述形式になっているからです。
そのため、円の数値の大小と「高い」「安い」の関係がねじれてしまっており、直感的に理解しづらくなっているのです。
解消方法はある
ですから、
1ドル=xxx円
という記述形式を「円」を基準とした記述のしかたに改めれば、ねじれの問題は解消できます。
すなわち、「1ドル=xxx円」ではなくて、
- 100円=y.yyドル
のように記述するスタイルに変えればいいのです(私はこれを「100均スタイル」と呼んでいます)。
こう記述すれば、右辺の数値が上がれば円高、下がれば円安となり、直感的にもつじつまが合います。
だが、採用されない
しかし世間一般でこのスタイルが採用されることはありません。
相変わらず「1ドル=xxx円」とねじれた記述のままです。
ねじれが解消されない理由
なぜねじれていてややこしいのに「1ドル=xxx円」のスタイルのままでいるのか、考えてみました。
思うに、日本の社会では「円安・円高を直感的にわかりやすく記述したい」というニーズよりも、
- ものの値段を「円」で表す
というルールの方が、はるかに強力であるためではないか、との結論に達しました。
確認:円安・円高のややこしさ
まず、円安・円高のややこしさを確認していきます。
先行事例の参照
円安、円高とは何でしょうか? 「先行研究の参照」として、既存の説明を探してみました。
正確だけどわかりにくい
日本銀行 > 教えて!にちぎん > 円高、円安とは何ですか? からです。※下線は引用者
円高とは、円の他通貨に対する相対的価値、言い換えると、円1単位で交換できる他通貨の単位数が相対的に多い状態のことです。
逆に、円安とは、円の他通貨に対する相対的価値(円1単位で交換できる他通貨の単位数)が相対的に少ない状態のことです。
このうえなく正確です。何も付け足すことはありません。
しかし、わかりにくいです。
例:ハワイで1万円を両替
引用元の日本銀行のページには「ハワイで1万円をドルに替える」という例が出ていました。
内容を整理して挙げておきます。
- (1ドル=100円のとき)
- 1万円=100ドル
これを基準とすると、
- (1ドル=80円のとき)
- 1万円=125ドル →円高
- (1ドル=125円のとき)
- 1万円=80ドル →円安
となります。
正確です。しかし、わかりにくいです。
ややこしや
例での設定値を引き継いでくり返すと、
- 1ドル=100円が
- 80円になったら、円高
- 125円になったら、円安
です。ややこしいです。
小学生なら、にわかに理解できないでしょう。
実際、小学生当時の私は理解できなかった記憶があります。「なんで安くなっているのに円高なの?」と思っていた気がします。
小学生にもわかる「円安」「円高」の説明
以下、小学生にもわかる説明を目指します。
※個人の感想です。
値段の表しかた(1)日本
単位は「円」
日本では、ものの値段を円で表します。
たとえば、「うまい棒1本は10円」という具合にです。
「高い」「安い」とは
値段を表す数字が大きくなると、値段が上がる、すなわち「高い」と言います。
反対に、数字が小さくなると、値段が下がる、「安い」です。
例1:ガソリンで考える
ガソリンを例に考えてみましょう。
とあるガソリンスタンドで、ガソリンを
- 先々月 1L=80円
- 先月 1L=120円
- 今月 1L=160円
で売っていたとしましょう。
- 1リットル=80円よりも120円、さらに160円の方が、ガソリンが「高い」です。
- 1リットル=160円よりも120円、さらに80円の方が、ガソリンが「安い」です。
このように、何か(この例では、ガソリン)の「高い」「安い」は、その値段を表す「円」の数字の大小でくらべます。
一定の量(1リットル)と引きかえるのに必要な金額の大小で、ガソリンの「高い」「安い」を言い表せます。
ここまではよいかと思います。
【大人向けの補注】
どのガソリンも質的に差がない同等の品だというのが隠れた前提です。
続・「高い」「安い」―100均の場合
「高い」「安い」の表し方には、値段の大小で表すほかに、実はもう1種類あります。
その「もう1種類」に日常生活でお目にかかれる場所とは、なんでも100円均一で売っている、いわゆる「100均」ショップです。
100均での売り値は基本的に100円です。そのとき、「高い」「安い」はどう判断すればよいのでしょうか?
例2:100均グッズで考える
100均グッズ、たとえば文房具のペーパークリップを例に考えてみましょう。
とある100円均一ショップで、クリップを
- 先々月 80個入り
- 先月 120個入り
- 今月 160個入り
で売っていたとしましょう。値段はどれも100円です。
- 100円=80個入りよりも120個入り、さらに160個入りの方が、クリップが「安い」です。
- 100円=160個入りよりも120個入り、さらに80個入りの方が、クリップが「高い」です。
80→120→160と、右辺の数が増えれば増えるほど、クリップの値段は「安く」なっています。
反対に、数が減れば、クリップの値段が上がり「高い」です。
【大人向けの補注】
どのクリップも質的に差がない同等の品だというのが隠れた前提です。
小まとめ
ここで答えめいたものを書き記しておくと、円安・円高というときの「円」は、この「100均のクリップ」の例と同じ表現形式を取っています。
ですから、数が増えると「安く」、減ると「高く」なるのです。
こうも言えるはず:「100円」基準
こんな言い方はめったにしませんが、100均の例では、同じことをこうも言えるはずです。
- 100円=クリップ80個よりも120個、さらに160個の方が、100円が「高い」です。
- 100円=クリップ160個よりも120個、さらに80個の方が、100円が「安い」です。
引きかえに手に入れられるクリップの数の多い少ないで、100円の「高い」「安い」を言い表せます。
※小学生のみんなには少しむずかしいと思うので、わからなければそのまま飛ばしてもらって構いません。
値段の表し方(2)ドル
ここでは日本人の目線から、アメリカの通貨単位である「ドル」というものを考えます。
ドルの「高い」「安い」
端的には、ドルの「高い」「安い」を見ていきます。
ドルに置き換えてみる
先ほどのガソリンスタンドの例の「ガソリン1リットル」を「1ドル」に置き換えてみましょう。
1ドルの値段が、先々月、先月、今月でそれぞれ80円/120円/160円だったとします。
- 1ドル=80円よりも120円、さらに160円の方が、ドルが「高い」です。
- 1ドル=160円よりも120円、さらに80円の方が、ドルが「安い」です。
「ガソリン1リットル」を「1ドル」に置き換えただけです。
これは問題なく理解できるかと思います。
アメリカの「100均」=99セントストア
アメリカにも「100均」はあります。その均一価格から「99-cent stores」と総称されているようです。
※画像は、How to Survive in New York on 99 Cents|nytimes.com(2008/03/26付)より
99セントストアで考える
先ほどの「100均でのクリップ」の例を、99セントストアに置き換えて考えてみましょう。
とある99セントストアで、同じクリップを
- 先々月 80個入り
- 先月 120個入り
- 今月 160個入り
で売っていたとしましょう。値段はどれも99セント(=1ドル-1セント)です。
ドルの値うちは
先ほどの例で述べた「こうも言える」パターンから書きます。
便宜上、両辺に1セント足して、左辺を「1ドル」にしておきます。
- 1ドル=クリップ80個よりも120個、さらに160個(+1セント)の方が、1ドルが「高い」です。
- 1ドル=クリップ160個よりも120個、さらに80個(+1セント)の方が、1ドルが「安い」です。
「100円」を「1ドル」に置き換えただけなのに、100円と違ってなぜかしっくりきます。
クリップを基準にすると
今度はクリップを評価対象にして、その「高い」「安い」を述べてみます。
- 1ドル=クリップ80個よりも120個、さらに160個(+1セント)の方が、クリップが「安い」です。
- 1ドル=クリップ160個よりも120個、さらに80個(+1セント)の方が、クリップが「高い」です。
クリップ=1円とすると
最後に乱暴に、クリップ1個を1円玉に置き換えてみます。
つまり、クリップ1個=1円です。
- 1ドル=80円よりも120円、さらに160円(+1セント)の方が、円が「安い」です。
- 1ドル=160円よりも120円、さらに80円(+1セント)の方が、円が「高い」です。
「円安」「円高」は、実はこういうものの言い方をしているのです。
こうしてみると、ずいぶんとねじれたもの言いであることがわかります。
まとめ
まとめます。やや大人向けを想定した文章にします。
値段を表すのは「円」
日本では、ものの値段を円で表します。
その「円」の値の大小を比べて、「高い」「安い」を判断します。
記述の一般形:物量[固定]=値段[変動]
よって、何かの「高い」「安い」を判断するときの記述形式は、
- ガソリン1リットル[物量]=xxx円[値段]
という具合に、判断したい対象の物量を左辺に固定しておき、相当する価格を右辺に書き表すのが普通のやり方です。
このとき、右辺の値(価格)が上がれば「高い」、下がれば「安い」です。
左辺が「大根1本」でも「株券1枚」でも、何であっても同じです。
唯一、値段を円で表せないものが「円」
日本では、ものの値段を円で表します。
ところが、「円」の値段だけは、円で表せません。ちょうど、カメラがそのカメラ自体の写真を撮れないようなものです。
円の値段を表すには、ほかの何かが必要です。
円の値段を表すのは「ドル」
円の値段を表すための「ほかの何か」は通常、米国の通貨であるドルがその役目を担っています。
ですので「円安」「円高」というときは、「ドルに対して」というのが暗黙の前提です。
表しているのは「ドルの値段」
よくよく見てみれば、
- 1ドル=xxx円
の場合も同じく、値段(右辺の値)が上がれば「高く」、下がれば「安く」なるのは、「ドル」の方です。円ではありません。
というか、そもそもこの形式で表そうとしているのはドルの値段であって、円の値段ではありません。
値段を記述する一般形式に照らして考えれば、しごく当たりまえの話です。
ねじれた読み方も可能
しかし、
- 1ドル=xxx円
という形式はそのままに、ねじれた読み方もできるといえばできます。この形式を、右辺にいて変動する「円」の値段を表していると読み取ることもできない相談ではありません。
ちょうど、100円均一ショップでの
100円=クリップ80個/120個/160個入り
の例で、(100円の側ではなく)クリップの「高い」「安い」を判断したようにです。
記述がねじれている
くり返しますと、「1ドル=xxx円」の記述形式で円の高い安いを論じるのは、その記述スタイルからすればねじれた読み方であり、裏を返せば円に対してねじれた表現形式と言えます。
勘違いを生む「1ドル=xxx円」
ところが日本国内では、
- ものの値段を「円」で表すというルールが強力
であり、そこに加えて
- 円の値段だけは「円」で表せないことに気づかれていない
- 円の値段を表している「ドル」という存在が一般人の日常生活上なじみがなく実感を伴わない
ために、「1ドル=xxx円」という形式もまた、円の値段を表しているという勘違いが生まれがちです。
特に子供は、「1ドル=xxx円」という形式から円の高い安いを論じるために必要となる、上で述べたような込み入った論理を理解することは困難です。
よって、
円高と円安の違いがわかりません。
1ドル125円のものが100円になるということは,円が安くなっているから円安ではないのですか?
出典:進研ゼミ中学講座 > 中学生からの質問(社会)
といった具合に勘違いしてしまいがちです。※下線は引用者
念のため付け加えておきますと、この例で安くなっているのは円ではなく、ドルですね。125円が100円になっています。安いです。
「1ドル125円のものが100円になる」という表現からも、混乱が見てとれます。
正しく書くなら「125円の1ドルが100円になる」ですね。ドルが安くなっています。ひっくり返して言えば、円高です。
ねじれの解消方法
このねじれを解消するのは簡単です。ドル円の為替相場の記述形式を「100均方式」にすることです。
すなわち、高い安いを判定する興味関心の対象は「円」なのですから、円の定量を左辺に置いて固定してしまえばいいのです。
書き換え例
冒頭での例にある値:
- 1ドル=80円
円高↑ ↓円安 - 1ドル=100円
円高↑ ↓円安 - 1ドル=125円
を「100均スタイル」に書き換えると、こうなります。
- 100円=1.25ドル
円高↑ ↓円安 - 100円=1.00ドル
円高↑ ↓円安 - 100円=0.80ドル
右辺の値が増えれば「円高」、減れば「円安」です。値の大小がそのまま「高い」「安い」と素直に直結しています。
定着する望みは薄い
しかし残念ながら、日本で円相場の値を表すときに、こうした「100均スタイル」の記述形式が定着することはないでしょう。なぜなら既に述べたとおり、「ものの値段を円で表す」という国内ルールが強力であるためです。
加えて、次の4点が日本人一般には理解されておらず、今後も当分理解されることは困難であることも挙げられるでしょう。
- 円の値段だけは円で表せないこと
- 円の値段が通常ドルで表現されているのがそのためであること
- 「1ドル=xxx円」という記述形式は、第一にドルの値段を表すものであること
- 「100均スタイル」の方が、「円」というものの値段を素直に記述できていること
よって、ねじれたややこしい記述のまま、今後も理解せざるを得ない状況が続くと見込まれます。
以上です。ご静聴ありがとうございました。
コメント
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答えが欲しかったけど
結局説明が長くて分かりずらかった。
通りすがりです。
私もいい大人ですが、円高という言葉に
翻弄され小学生並みの理解でした。
でも、ネットで色々見てやっと
わかりました(笑)
まず、ドル目線になる。
ドルしか持ってない。
日本のお金と交換したい。
1ドルが200円のとき→100円玉2枚ゲット
やった!得した2枚もらえた!
ドルが得をするからドル高、円安
1ドルが100円のとき→え?1枚しか
もらえないの?ドルから見て
円、高いじゃん!…だから円高、ドル安
ドルが得する時、ドル高円安
日本が得する時、円高ドル安
で、いいですよね。
ドル目線になって、なるほどと
思いました(*^o^*)
イイ歳をして!と思われるのは必定。アタシよりスゴイ人に聞けばバカにされるし、ヒドイ人に聞けば分からない─と言うことで悩んでいましたが簡単明瞭なご説明でよく分かりました。有難うございました。長い闇から抜け出せました。
これ読んだらもっとややこしくなったわ
全然分かりにくい
賢い人が教える内容ではないですね。
理解してる人は少ないと思います。
酷い説明だな
ページ消してくれ迷惑だ
前置きから、どんなに分かりやすく書いてくれているんだろうとワクワクしたけど、だらだらと長いしあらゆるところに大人向けだとか品質の前提だとか前置きもごちゃごちゃして、答えの部分にたどり着く前に離脱しました。
自分も結局、sechuさんの考え方にたどり着きました。円が基準ではなくドル目線になる。
クソ馬鹿(私の事です)は、円の金額を極端にすると、よりハッキリするような気がします。
1ドルが1万円のとき、1ドルが10円のとき…と(笑)
日本一だなんて大それたこと書いてるけど全然わからない。
全然、納得できない。
というか、、、
円安、円高の定義が
他の貨幣をベースにしていることがナンセンス。