それは「路側帯」なのか?

こんにちは。

ひとつ前の「自転車の右側通行は全面禁止にしようよ(歩道も)―旭川の死亡事故に思う」(2014/09/20)からのスピンオフ記事です。

この記事で言いたいこと

世の中には、それでないものを「路側帯」と呼んでいる人が少なからず実在します。

元来、自動車運転免許を持っているなら区別できて然るべきことなのに、路側帯とそうでないものとの区別ができない人だらけです。

百歩譲って一般人はいいとして、シビアな語法を求められる立場の人には、正しく使い分けてほしいです。

「路側帯」への疑義

こちらのWeb記事を見ました。

現場の歩道、自転車よく走行 交通量多く路側帯は危険 旭川の衝突事故|どうしんウェブ(2014/09/17付)

路側帯なのか?

記事の本論と関係ないところで、ひとつ指摘します。※下線引用者

歩道の反対側には路側帯があるが、

本当でしょうか?

事故発生地点周辺をGoogleマップのストリートビューで見てみましたが、歩道の反対側に路側帯があるかは微妙です。私個人は、手放しで「路側帯」と呼べないです。

証拠画像

ストリートビューのキャプチャ画像を貼り付けておきます。

それ「路側帯」なんでしょうか? 微妙です。

「路側帯」というなら、その根拠を示してほしいです。

路側帯とは

路側帯について述べていきます。

法的定義

道路交通法での定義を引用します。

路側帯 歩行者の通行の用に供し、又は車道の効用を保つため、歩道の設けられていない道路又は道路の歩道の設けられていない側の路端寄りに設けられた帯状の道路の部分で、道路標示によつて区画されたものをいう。

(第二条(定義) 三の四)

だらだら一次元に記述しているので読みづらいですね。要約します。

まとめ:路側帯の3要件

要は、次のア.イ.ウ.の要件3つすべてを満たすものが、「路側帯」です。

ア.該当する条件

    次の両方

  1. 帯状の道路の部分で、
  2. 道路標示によって区画されたもの

イ.設置場所

    次のどちらか

  1. 歩道の設けられていない道路
  2. 歩道の設けられていない側の路端寄り

ウ.設置目的

    次のどちらか

  1. 歩行者の通行用
  2. 車道の効用を保つ

路側帯のようで路側帯でない??

旭川市の自転車事故発生地点(道道37号線 東旭川町旭正付近)のストリートビューでは、「道路標示によって区画された」「帯状の道路の部分」が見られます。

路測帯のようにも見えます。

しかし実際にそうであるかは、判断しかねるところです。微妙です。

歩道のある側

まず、こちらは路側帯ではありません。

上の「設置場所」に示す要件のとおり、歩道のある側に路側帯はありえません。

車道端に標示されている区画線(車道外側線)と歩道との間は「路肩」です。こちらの図がわかりやすいので参照してください。

2014-09-20_1814

出典:「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン(PDF)」(2012, 国土交通省・警察庁)

歩道のない側

一方の「歩道の設けられていない側の路端寄り」についても、「帯状の道路の部分」と認められるかは微妙です。

なぜなら、その幅が狭すぎるからです。

施行令での幅員規定

道路交通法施行令には、路側帯の幅員に関して次のような規定があります。※下線引用者

法第四条第一項 の規定により公安委員会が路側帯を設けるときは、その幅員を〇・七五メートル以上とするものとする。
(第一条の二 第2項)

目視では、0.75mには足りていません。

ただし、この規定には続きがあって、

ただし、道路又は交通の状況によりやむを得ないときは、これを〇・五メートル以上〇・七五メートル未満とすることができる。

となっています。0.5mはあるかもしれません。なのでひょっとすると、北海道当局はここを「路側帯」扱いしているかもしれません。

ただ個人の感覚としては、仮に幅が0.5mあったとしても、この現場が「道路又は交通の状況によりやむを得ないとき」にも、「歩行者の通行の用」や「車道の効用を保つ」ものにも見えないです。

「歩行者は反対側の歩道へ」が、この道路の建設・管理側のメッセージと受け止められます。

ケース:地裁の事実誤認

このほかに、「路側帯」に関する一審での事実誤認が、控訴審で訂正されている判例を見かけました。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/334/002334_hanrei.pdf(PDF) から紹介します。

控訴人Aの運転する自動二輪車を、左折してきた被控訴人の自動車が巻き込んだ衝突事故に関する損害賠償訴訟です。

原判決(事実誤認)

一審での原判決はこうです。

原判決は,「控訴人Aは,通行を禁止された路側帯を,前方注視を怠った状態で進行していたのであるから,本件事故について大半の責任がある。(略)」旨判示し,7割の過失相殺をした。

控訴審判決(訂正)

控訴審判決で、こう訂正されていました。

(2) 原判決2頁19行目,同4頁15行目の各「路側帯部分」をそれぞれ「車道外側線部分」と,同4頁19行目,26行目の各「路側帯」をそれぞれ「車道外側線」と,同頁26行目から同5頁1行目にかけての「左路側帯」及び同5頁1行目,同6頁3行目の各「路側帯」をそれぞれ「車道外側線の左側」(略)と各改める。

控訴理由での主張を認める

記載されていた控訴理由からです。※下線引用者

控訴人Aが進行していた道路の左側には歩道が存在するので,第1車線の車道外側線の左側部分も車道である。したがって,控訴人は,車道左端を進行していたに過ぎないから,何ら過失はなく,原判決には明らかな誤りがある。

下線部の主張が全面的に認められています。

感想

「何ら過失はなく」かは措いて、原判決には明らかな誤りがありました。

しっかりしてくれ地裁の判事。

まとめ

こと「路側帯」に関しては、正確な理解に基づいた表現が求められている場面ですら、誤った、もしくは怪しい記述が実在しました。

そう呼んでいるそれは本当に「路側帯」なのか、いっぺん確認しましょう。

ご静聴ありがとうございました。

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