2013年9月15日「あすなろラボ」での林修さんの恋愛論授業で使われた名言・格言の出典調査報告です。
ここへ来て、進展がありました。
一覧はポータルページにまとめています。他の名言はそちらからどうぞ。
名言(整理番号 11)
多くの女性を愛した人間よりもたった一人の女性だけを愛した人間の方が、はるかに深く女というものを知っている。
ロシアの小説家 トルストイ/Tolstoy(1828-1910)
出典
『アンナ・カレーニナ』(1877)(原題:Анна Каренина)です。第3部・21章のセルプホフスコイの言葉に出てきます。
光文社古典新訳文庫(望月哲男訳, 2008)から引用します。※強調は引用者
セルプホフスコイは腰を上げて、彼[ヴロンスキー]の前に立ちはだかった。
「何もかもこれまでどおりでいいと言うんだね。僕にはその意味がわかるよ。でもいいかい、僕たちは同い年だ。そしておそらく、知っている女の数はぼくよりきみのほうが多いだろう」そっと慎重に痛い問題に触れるけれど、心配は要らない――セルプホフスコイは笑顔と身振りでそう告げていた。「だがぼくは結婚している。そして、いいかい、誰かが書いていたことだが、たとえ何千人の女を知るよりも、愛する妻を一人知ることによってこそ、すべての女がよくわかるんだよ」
裏を返せば「女を知るには結婚しろ」と言っていますから、これは恋愛論の名言というよりも、結婚の優位を説いた文句ですね。
原文
archive.org で公開されている、『Anna Karenina』(1903)から引用します。ニューヨーク公共図書館の蔵書を電子化したもののようです。
— Но я женат, и поверь, что, узнав одну свою жену (как кто-то писал), которую ты любишь, ты лучше узнаешь всех женщин, чем если бы ты знал их тысячи.
邦訳では、最後の「」内に相当する部分です。
ちなみに、ロシア語ならタダで全編まるごと読めます。また、ru.wikisource.org でも、同じくオンラインで全文が読めます。ロシア語読めないけど。
※画像はvorotila.ruより
参考英訳
archive.org の英訳版『Anna Karenina』(1919)からです(Constance Garnett訳)。ブリガム・ヤング大学の蔵書とのことです。
“But I’m married, and believe me, in getting to know thoroughly one’s wife, if one loves her, as some one has said, one gets to know all women better than if one knew thousands of them.”
英訳の『Anna Karenina』なら、ロシア語同様にオンラインで無料で読めます。音声読み上げ機能まで付いていました。
同じくGarnettによる英訳版がKindleストアにもありました。
謝辞
松原様より英訳資料数種と一緒に出典をご教示いただきました。ありがとうございます。
あるいはこんなことも
つづくくだりでは、こんなセリフもありました。同じく望月哲男訳から。
邪魔にならずに女を愛する唯一の便利な手段が、結婚というわけだ。
女はみんな男よりも即物的だ。われわれは恋愛を何か大事のように考えたがるけれど、女にとっては日常茶飯事(テール・ア・テール)なのさ
女性の皆さんのご意見をうかがいたいところです。
こちらからは以上です。
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