兼好吉田のすべらない話―『徒然草』の第五十三段を現代語訳したらこうなった

こんにちは。

先日、調べごとで久しぶりに『徒然草』にあたって、目に留まったくだりを読み直していましたら、第五十三段「これも仁和寺の法師」ってまさに「すべらない話」だよなーと気づきました。

それでこの段を「兼好吉田のすべらない話」にして嫁に話しましたら、思った以上に受けがよかったので、テキスト化して再現してみます。

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検索しますと、少数ながら同じことを思われている方がいらっしゃいました。そのような方にも楽しんでいただけたなら幸いです。

なお「すべらない話」のフォーマットへ寄せるため、一部原文に脚色を加えていることをあらかじめおことわりしておきます。

では始めます。

(サイコロ) 「お、吉田」

これも仁和寺の法師(『徒然草』第五十三段)

これ、ノリで後先考えんかったらシャレならんぞいう話ですけど。

京都にね、仁和寺ってお寺があって、そこのお坊さんの話なんですけどね、お稚児さんが法師になるいうんで最後お祝いするか、みたいにしてみんなで飲んでたんですって。

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仁和寺・金堂(Wikipedia 仁和寺より)

ほんで盛り上がって、ワー踊ってのってきたんで、近くの…足鼎(あしがなえ)って分かりますかね? 花瓶ゆうかお椀ゆうか、こう脚が3本ついててね、インテリア的に置いてあったやつなんですけど、

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足鼎(AncientPoint.com より)

それ頭かぶったれーゆうて、かぶってみたらきつきつやったんで、鼻を押さえてこう、ぐっ、ぐっぐっとね。ぐっ、ぐっとして、顔全部入れてもうて。ほえで鼎仮面や~~みたいな感じでね、踊って、われ覇者なりとかゆうて、えらい盛り上がってたんですよ。

ほいでまあひとしきり騒いで抜こうとしたんですけどね。あれ?ゆうて。ちょっとこれあかんぞと。抜けへんがなと。ね、なったんですよ。あれ? ん?ん?ん?て。全然抜けないんですよ。ほいでみんなにぎやかやったんも、おいおいどないすんねんゆうて。もうシーンってなって。

鼎ってね、かね(金属)でできてるんですよ。だから取ろう思てぐいぐいやってたら、擦れて首とか血出てるし腫れてくるしで。ほんで、きっつきつでかぶってるもんやから、苦しい~、苦しい~息でけへん~ゆうて。

いっぺんね、割ろうって、ガーンやったんですけどね、かねでしょ。割れへんのですよ。ガーン、ワンワンワンワンワン。ガーン、ワンワンワンワンワン。うるさいうるさいて。

でもうあかん、これは医者やゆうことなって。

ほんで頭から布かぶせて、手引いて、逮捕された人みたいになってね。京都の街を、医者のとこまで引っ張って連れて行ったんですって。もうね、街の人みなこんなん(指差すしぐさ)(ひそひそ)やったらしいですよ。怪しいですもん。そらなりますわ。

ほんでまあ医者んとこ着いて、診せたんです。こっち医者、ほんでこっち向かい合わせにね、鼎仮面。変な画づらでしょ。医者もね、そらなんやこれ言いますよ。

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英一蝶(1652-1724)「御室法師図」(個人蔵 画像は朝日新聞デジタルより)

でまあ一応医者も、どないですかて聞いて、本人何か言いよるんですけど、かぶってるでしょ。鼎仮面。もごもごもごもご、なに言うてるかわからんと。

そんで結局、こんなもん今まで症例もないし、どないせぇゆうのも聞いたことないですわ。みたいに言われただけで、そのまま寺まで帰ってきたんです。

ほんで仁和寺帰ってきてね。そいつのオカンとか、もうええ年ですわ、集まってきて、えらいことなったーゆうてわんわん泣かはるんですよ。でも本人それ聞こえてんのかどうかゆう感じで。

そしたらね、誰やったかな。もうこれは力ずくやろ。てね、言い出しよったんですよ。耳とか鼻とかダメージあるかしらんけど、力ずくで引っ張ったらなんかいけんちゃうんか、ゆうて。

ほんでみんなで、すきまにわらを差し込んで、身と離しといて、首ちぎるぐらいの勢いでね、無理からに。引っ張ったんです。ズボーンって。ほしたらね、ズッボーン取れたんですよ。取れたんですよ。いやマジで。

でもね、あのぅ…引かんといてくださね。耳と鼻もね、一緒に取れてしもたんですわ。

穴あいとんですよ顔に。取れたん持ってきても、つくかぁゆうて。そいつ、命拾いだけはしたんですけどね。えらい目遭うたゆうて。

まあまあ、そんな話ですわ。

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