ヤシロでございます。
毎日がサザエさん症候群です。
- 「煙の形」というデマ
- 勝ちやすくはできる
- ランダムネスって
ごらんの3本でお送りします。
はじめに
毎週日曜、サザエさんと全国3000万と言われる視聴者との間で、じゃんけんという名の死闘がくり広げられています。
この記事では、その必勝法について考えます。
1.「煙の形」というデマ
エンディングで、一家が飛び込む家の煙突から出ている煙の形でじゃんけんの手がわかる、といった情報がTwitterで出回っていることを知りました。いわく、
- 煙がわっか状 → グー
- 煙がひも状 → チョキ
- 煙がない → パー
というのです。
デマです。
画像検索で探して見つけられた煙は全てわっか状で、ひも状や煙の出ていない映像は確認できませんでした。
『サザエさんじゃんけん』には必勝法があるという噂がTwitterで広まる|秒刊SUNDAY(2011/10/16付)でも、「都市伝説」と結論づけられています。
デマ発信源をたずねて
2011年10月以前の日付指定検索をしたうち、最も日付の古かったものは、こちらのツイートでした。
ED曲の最後、サザエさんを先頭に一家で入る家の煙突から煙の形が輪っか状→その後のじゃんけんがグー、紐状→チョキ、出てない→パー #フジテレビ #fujitv #サザエさん #トリビア #豆知識
— verpoma (@Jospdeck) 2011, 9月 25
このアカウントが真の発信源かは定かでありませんが、仮にそうだとして、このケースでは「思い込みが強い人」とも考えづらいです。
デマ受け売りという、理解に苦しむふるまい
ウソの情報をわざと出す心理は、まだ想像ができます。この場合は、ちょっとした実験気分というところでしょうか。
むしろ理解に苦しむのは、デマと知ってか知らずかによらず、確かめればすぐにウソとわかる情報を右から左へ受け流す方です。自分の語彙では、頭の悪いふるまいとしか言えません。
2.勝ちやすくはできる
サザエさんとのじゃんけんに必勝法は存在しないのでしょうか?
いいえ。「必勝」とまでは言えないにせよ、勝ちやすくはできます。
今回調査して、実際に高い勝率を収めている人がいることを知りました。こちらです。
素っ気ない見た目に惑わされてはいけません。現時点で1100回を越える過去の「手」がすべて記録されているなど、すごいサイトです。
勝ち方
「サザエさんじゃんけん研究所」の中の方は、
引き分けで今年の勝率8割をキープ!来週(5/18)のサザエさんは過去の傾向(チョキ→パーの次に出た手の統計)からチョキを出す可能性が高いので、私は来週はグーで勝負することにします。
— ΗΚΝ (@jq1hkn) 2014, 5月 11
という具合に、過去2回の「出目」から次の手を予想するという方法で勝負されています。
2013年の成績:有意に「勝っている」
今年(2014年)はまだ進行中ですので、確定しているデータとして「サザエさんの手の予想と勝負結果(2013年)」を見ますと、2013年の年間成績は25勝9敗17分けだったそうです。
1割7分しか負けていません(9/51)。勝ちは5割弱ながら、引き分け(あいこ)を除けば、勝率は0.735です(25/34)。
1対1の通常のじゃんけんなら、想定される負けの確率は3分の1、あいこを除いた勝率は2分の1ですから、有意に高いと言えそうです。
最新情報はこちらで
※ご要望にお応えして追加しました(2014/11/03)
3.ランダムネスって
一部のサイトには「サザエさんが何を出すかはランダム」のような記述が見られました。
間違いです。ランダムではありません。
なぜなら、過去2回の「出目」を元にある程度勝てる予想ができるということは、出される手の傾向が偏っていることを意味するからです。
「サザエさんじゃんけん研究所」のよくある質問と回答には、こうありました。
Q1:サザエさんの手は誰がどうやって決めているのですか?
A1:アニメーションを製作している株式会社エイケンの動画編集担当者(エンディングで「編集」とクレジットされている人)が個人的な思いつきで決めています。
この情報だけでは真相について何とも言えません。
しかしはっきり言えるのは
- サザエさんがじゃんけんで何を出すかは、偏った方法で決まっている
ということです。ランダムであること、すなわち「ランダムネス」が担保されていないわけです。
たとえて言えば、サザエさんじゃんけんで振られているのは「記憶するサイコロ」です。
データがそれを物語っています。
偏りを示す驚愕のデータ
サザエさんじゃんけんには「同じ手を続けて出さない」という偏りが見られます。
サザエさんじゃんけん研究所に、過去の手の分析結果のデータがまとめられていますので、そこから集計してみました。
3回連続で同じ手が続いたケースは、のべ1100回を越えるサザエさんじゃんけんのうち、たった14回しかありません(グー7回・チョキ4回・パー3回)。
少なすぎます。
しかも、2008年11月2、9、16日(#860, 861, 862)に3連続でチョキを出して以来、ここまで5年以上、回数にして250回近くにわたり、まったく出現していません。
難しい統計的な検定を行わなくても、明らかに偏っていることがわかります。
ランダムな場合との比較
確認のために比較しておきます。
仮にサザエさんが、じゃんけんで何を出すかを完全にランダムで決めているとしましょう。その場合、確率はそれぞれ次のとおりとなります。
グー・チョキ・パーの確率
グー・チョキ・パーを出す確率は、毎回等しく3分の1ずつです。ここ重要ですが、前に何を出したかは関係ありません。くり返します。毎回等しく3分の1です。
2回連続同じ確率
同じ手が2回続くパターンは、全部で9通りのうちグー・チョキ・パーの連続する3通りですから、確率は3/9=3分の1です。
3回連続同じ確率
そして同じ手が3回連続する確率は、同様に計算して、3通り/3*3*3=3/27=9分の1となります。
偏りは明白
ですからもし、サザエさんじゃんけんの「出目」が完全にランダムであるならば、1100何回目かのここまでで「3回連続同じ手」が120回あまり出現していてもなんら不思議ではありません。
なのに、14回しか実績がありません。3回どころでなく「5回連続で同じ手」(確率1/81)のレベルです。
偏っています。
次週予告:サザエさんと憲法9条
さーて、サザエさんが突如、番組の最後にじゃんけんを挑むようになったのは、1991年10月のことです。
1991年といえば、イラクのクウェート侵攻に端を発した湾岸戦争が起こった年です。この戦争に日本は135億ドルもの資金を出したにもかかわらず、戦後、侵攻された側のクウェートが在米大使館を通じ米紙に出した感謝決議広告に、日本の名前はありませんでした。その事実が、「カネは出すが汗をかかない」と批判されているといったトラウマを日本国民に植えつけました。
国民的と称される番組に長く出演するサザエさんも、きっとサザエさんなりに思うところがあったのでしょう。
わが国の憲法は、国の交戦権を認めていません(第9条)が、サザエさんの交戦を禁じてはいません。
当分の間、日曜が来るたびにあの不気味な笑い声が全国の家庭に響きそうです。
うふふふふふ
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