元気ですかー!
当ブログでは元気を研究しています。
「元気はもらうものか?」が研究テーマです。
はじめに
テーマへのアプローチとして、コーパスを参照して日本語文での用例を探ることにしました。
この記事では「元気をもらう」を含む、「元気を」に接続する語句の上位3つに絞って検討を進めることとします。
なお出現頻度の調査には、国立国語研究所とLago言語研究所が開発した「NINJAL-LWP for BCCWJ」を利用しました。謝意を表します。
要約:Executive Summary
当代の日本語で「元気を」に続く言葉は、「取り戻す」「出す」「もらう」がトップ3です。
ウェブテキストでは、元気を「もらう」が第1位です。
現状の確認―日本語コーパスから
「元気はもらうものか?」を研究する足がかりとして、現状を確認しておきます。
日本語コーパスでの「元気を」に続く言葉の上位3つは次のとおりでした。(NINJAL-LWP for BCCWJによる)
- 元気を取り戻す 100
- 元気を出す 82
- 元気をもらう 50
研究テーマとする「元気をもらう」は第3位です。
参考データ:『筑波ウェブコーパス』の場合
参考までにご紹介しますと、corpus.tsukuba.ac.jp(NINJAL-LWP for TWC)では、こうなります。
- 元気をもらう 1,253
- 元気を取り戻す 909
- 元気を出す 660
上位3つの顔ぶれは変わりませんが、順位が入れ替わって「元気をもらう」が第1位になりました。
こちらで検索されるのは、日本語のウェブサイトから収集して構築した約11億語のコーパス『筑波ウェブコーパス』です。
以上、「ちなみに」情報でした。
用例の確認
では、それぞれの用例をいくつか拾い出して具体的に確認していきましょう。
※強調は引用者
第1位 元気を取り戻す
何が「元気を取り戻す」のか、その主体に注目してピックアップしてみました。
捜査員は、ようやく元気を取り戻した長井頼子から事情を聴いた。
―森村誠一『野性の証明』(1978)
昭和六十二年九月二十二日、天皇は思わぬ病気で手術されたが、順調に回復され、約三か月後には、(略)早くも国事行為に復帰されるなど、すっかり元気を取り戻された。
―塚田義明責任編集『天皇の昭和史』(1988)
バカの神様は少し元気を取り戻していた。
―みうらじゅん『マイブームの魂』(2001)
ほかにも、元気を取り戻すものはあります。
連作障害は土が疲れてきた証拠で、土の元気を取り戻すために、夏にはソルゴー(41ページ参照)、冬にはエンバクのような緑肥作物を植え、それらの茎葉を細かく刻んで土にすき込みます。
―藤田智監修『わが家の片隅でおいしい野菜をつくる』(2004)
しおれている草花に水をやり、すきな肥料をやり、暑さ寒さを避けてやると、元気を取りもどして喜んでいるようです。
―宮島龍興『再び・わからないものですよ』(2002)
糖分を加えたことで、酵母菌が元気を取り戻し発酵を再開する場合がある。
―川崎磯信『正しいドブロク「役人ごろし」の作り方』(1997)
「元気を取り戻す」まとめ
- 人も神様も、みな元気を取り戻します。
- そのほか、土・草花・酵母菌といった、ざっくり農学部的なものも元気を取り戻すようです。
第2位 元気を出す
「元気を出す」の用例には、ひとつは自分(たち)に使うパターンがあります。
元気を出して犬の掃除を一通りしたら少し疲れたが、まあ元気が出てきた。
―水の江瀧子『ターキーの気まぐれ日記』(1998)
この五百兆円という巨額な数字を見ていれば、日本経済が行きづまると世界経済がクラッシュすることがわかる。われわれはもっと自信をもって元気を出さなければいけない。そこで言いたいのはGDP五百兆円のなかで三百兆円は消費だということである。
―猪瀬直樹『ラストチャンス』(2001)
それよりも目立って多いのは、次のような、誰か/何かに向かって呼びかける形式のものです。
ささ、大島さん、元気を出して。
―山根一眞『メタルカラーの時代』(2000)
例えば清家参考人が、雇用の安定を前提にして、物づくり産業の活性化によって地域が元気を出さなきゃいけない、(略)簗参考人も、いわゆる来月から栃木就職支援センターの立ち上げとか、あるいは雇用の安定ということを触れておられますけれども、そういう意味からすると、(略)こういうところもやっぱり将来展望を見ていく中で大きな要素としてとらまえていただきたいというふうに思うんですが、
―国会会議録・常任委員会(2004)
一方で、精神医学の方面からはこのような指摘がされています。
ただし、「しっかりしろ」とか「元気をだせ」というようなことばは、苦しんでいる患者さんをさらに落ちこませるだけで、害があっても益はありません。
―樋口正元『神経症を治す』(1995)
たとえば、うつ病患者に励ましは禁物なのに、家族が素人判断で、「そんなにいつまでも暗い顔をしてないで、もういいかげんに元気を出して」とか、「気のせいよ」などというと、本人にとってはさらにつらいことになります。
―遠藤俊吉・森隆夫『専門医が語るよくわかるこころの病気』(2001)
したがって、せめて
とりあえず牛丼でも食べて元気を出しな
―嵐山光三郎『変!』(1998)
のように、どうやって元気を出すのか、その手段もあわせて示すのが筋かと思われます。
「元気を出す」まとめ
- 自分に使うよりも、他者に対して使うケースが多数派です。
- しかし言葉だけでは、おうおうにして逆効果となります。
- 誰かに元気を出してほしいなら、具体的な手段が伴った提案をしたいものです。
第3位 元気をもらう
一般人のブログを除くと、「元気をもらう」の使用者は、3つのタイプに分かれます。
1)芸能人・芸能関係者
これまでたくさんの勇気と元気をもらってきたのだ。
―「TVぴあ」(2001)
彼女たちと話していると、たくさんの元気をもらいますが、仕事で忙しい感覚を、身をもって知っている私たちは、「元気? ストレスは抱えてない?
―川上麻衣子『ストックホルムからの手紙』(2001)
親しい友達と会って、自分を取り戻し、元気をもらってくる。
―財前直見『わたしがわたしであるために』(2002)
2)アレな感じの方々
人から元気をもらいましょう。
―赤羽建美『“幸せオーラ”がある女性のちょっとした習慣』(2004)
また、「親子触れ合い教室」講座へも講師、アシスタントとして参加し元気をもらっている。
―福留強ほか編『まちづくりボランティア』(2001)
実は私が、彼女たちから元気をもらっているのだ。
―武蔵国際総合学園編『不登校と向き合う』(2001)
3)地方自治体
自治体の広報誌がすごいのです。なんだこれ。
詳しくは別途。
「元気をもらう」まとめ
くり返しになりますが、一般人を除くと、「元気をもらう」の使用者は次の3タイプです。
- 芸能人・芸能関係者
- アレな感じの方々
- 地方自治体
地方自治体も、かなりアレな予感がします。
つづく
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