林修さんの特別授業をテキストにしました(3)「あすなろラボ」2013年6月9日OAより

こんばんは。林修ナイトの時間です。

6月9日OAの「あすなろラボ」が大変素晴らしかったので、研究のベースラインとするために、録画から授業内容をテキストに起こしています。

林さんの発言と注釈は分けて書き、感想は別記事にします。

「落ちこぼれのヤンキー」生徒たちに、林さんは考える力を高めることを今がんばってほしいと訴えます。(2)からのつづきです。

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「考える力」を高めるため勉強は必要

「ほんとに、今ちょっとやろうと思ってる? 必要だと思わなかったから今まで勉強やってこなかったんだけど、それは漢字であろうがなんでもいいと思う」

北島さん(採石工場)「真剣な話言うと、働き始まって、漢字読めないと、損はする。恥ずかしい」

「やっぱ恥ずかしいって思い大事だよね。まだそういうの感じてない?」

斉藤さん(施工業)「いや、最近になってそうちょっと思うようになりました」

「じゃ、いつ漢字覚えるの?」

斉藤さん(施工業)「今… 違うって できないって」

「できない?」

斉藤さん(施工業)「言わせないでくださいそれ。すっげぇ恥ずかしかった」

「恥ずかしかった? てことはオレはすっげぇ恥ずかしいことやってる人間なんだ」

斉藤さん(施工業)「いやいやそういうことじゃなく」

「オレも恥ずかしいんだけどさ。でも、漢字が読めないと、人がせっかくくれてるヒントとか知恵とかをもらい損ねるよね。それってすごくもったいないと思う。けっこういいこと書いてああそうかと、自分が悩んでいることを既に100年前に答え出してくれてるヤツとかいたりするわけだ。もちろん、自分とはちょっと違うかもしれないよ。でもそこで、字が読める漢字がわかることで、あ、オレこう考えればいいんだ。勉強って、しているともののとらえ方そのものが変わってきたりする。すごくむつかしく考えてたことが、いやいや実はこうこうこう考えればいいでしょっていう」

学校で学んだこと 日常生活に役立つ!?

「僕は、もうこの年で、もうほんと50近いけど、学校でやった問題の解き方が、意外と役に立つなという気がしてる。オレなんか国語教えてるのに、日常生活すごい数学使ってんの。数学でつくった頭がものすごい生きてるの。たとえばものごと考えるときオレすぐこういうふうに考えるのよ。みんなこんなふうに考えるかどうかわかんないけど」

(板書)(十字に縦軸と横軸を引く)

「頭ん中ですぐこうやってこうやって軸を引く癖があるのよ。自分がやってることってどういうふうかなって、こうやって軸で分析してみるとよくわかるわけだ」

「好きなことと、嫌いなことがあるでしょ? ね、やりたいこととやりたくないこと。それと、やって役に立つことと、立たないことがあるよね。自分のやってることがここ(右上ゾーン)だったら問題ないでしょ。好きで役に立つこと。ね。で嫌いで役に立たないことはやんなくていいよね。嫌いだし役にも立たんてことはやんなくていい。問題は、ここ(左上ゾーン)だよね。好きだけど役に立たないこと。たとえば、ギャンブルとかゲームとか。楽しいよ好きだよ。だけど、役に立つかどうか微妙でしょ。じゃここ(右下ゾーン)逆にどう? そうここなんだってここへの向き合い方なんだって。それをやれば役に立つけど嫌いなことっていっぱいあるでしょ。君らにとって勉強」

生徒「嫌い」

「だよね。だけどたぶん役に立つよね。役に立つこともあるよね。全部じゃないけど。と、数学をしっかりやってきたことで、自分が今どうかってのをこう考えるのにはけっこう僕は役に立ってるの。ね。そういえばこういうのを(縦軸、横軸を引く動作)学校でやった覚えがぼんやりあるでしょ?」

斉藤さん(施工業)「いやぁ、ちょっとだけ」

「ちょっとあるでしょ。でなんかこんな直線と直線の交点求めろとかってやらされなかった?」

斉藤さん(施工業)「かすかに」

「でしょ。確かに日常生活の中でさ、直線と直線の交点求めようと思うことはないよ。あったらちょっと、病気だね。朝起きてああちょっと直線と直線の交点求めようなんて、大丈夫かって言いたくなるよね。でもそんなことはないんだけど、あの直線が走ってた座標、それをこういうふうにものを考えるのに使える人もいるわけだ。役に立たないっちゃあ役に立たないけど、根本の考える道具になるものを実は学校っていっぱい教えてくれたとこなんですよ。だけどそういうふうに使えるよって教えてないから。ね、ましてや点数つけてすぐおらできたできないってやられちゃうから、君たちがイヤだって拒否してきたのわかるけど、上手に活用すると一生の中でけっこう役に立つんだよ。オレすぐこういうふうに考えてるよ。だから、学校の勉強を嫌いだってはねちゃったかもしれないけど、まあまあ使える部分もあって、だからやれとは言わないけど、ここ(解決・創造)につながるような訓練のためにもし君たちがこれから、何か本を読むとか、ね、歴史の勉強するとかって気になったら、それはぜひやってくださいよ。最終目標はここ(解決・創造)だよってこと。点数取りに行くことではなくて。まだそんなトラブル起きてないですか人生で」

植村さん(アルバイト)「はい」

「起きてない?そう。だからまだそんなに追い詰められてない」

どん底人生 借金1800万円 そして…

「オレもぅ、オレの話とかけっこう最近テレビ出てるけど、昔、やりたい放題やったらさ20代で。2000万ぐらい借金抱えちゃってさ、1800万ぐらいか」

北島さん(採石工場)「それはなに、ギャンブル?」

「ギャンブルも含めて。会社も失敗して。大学出て銀行入って、ちょっと合わないなってすぐ辞めたの。そう君らと一緒なんだって。高校入ってここ合わないなってポッて辞めたの。で自分でやり出したらさ、まあうまくいかんいかん。で借金ばっか。でもなんとかなるさ、オレならできるさ、そう思ってやってったらボンボコボンボコ借金膨らんで。なんとでもなるしなんでもできるって思ったけど大間違いだった。自分ができることなんて限られてるね。1人の人間ができることなんてそんな限られてなんでもできるわけじゃなくて」

佐藤さん(無職)「でそこまで借金して人生投げ出さないでいれた支えってなんなんですか?」

「ただオレこの人を教えるって仕事っていうのは自信があったから、この仕事を専念して一生懸命やれば、なんとかなるだろうと思ってた。でもなんでやんなかったかっていうとこれあんま言いたくないんだけど、一応オレ東大法学部出てんのね。と、オレの仲間ってさぁ、官僚とかね、すっげぇ活躍してるわけ。うんちっちゃい塾とかでやってるっていうのがなんか、なんかみじめな思いがして、イヤだった。オレもあいつらと同んなじように会社ド派手に作って、官僚にはなれなかったからね、そういうふうにやりたいと思って見栄張ってやってみたんだけど、そんなもんダメなんだよ。やりたいことやってってうまくいくヤツはラッキー。だけどなかなかそれは、もうほんとにそういう人は運がいいけど、オレにはできなかった。だからやりたいこととやるべきことを分けて、このやるべき仕事、これだったら勝てるっていうこの教える仕事で失敗したら、ほんとにオレもうたぶん、この世にいなかったかもしれない。でもここへ戻ってくれば絶対になんとかなると思ってて、で戻ってきたら実際なんとかなってる」

誰にも負けない長所を見つけて勝負する

「だからいっぱい負けたからだって。20代にいっぱい負けていっぱい借金していっぱい勝負して負ける。その中でここしかない。可能性をどんどんどんどん消してきた。それで今ここしかないなって思ってる。今こうやってやってきたら、たまたまさっきから言ってる巡りあいがあってやりたいことをやらせてもらってるようになったの」

「でよく言うんだよ授業で。努力は裏切らないって言葉は不正確だ。

  • 正しい場所で
  • 正しい方向で
  • 十分な量なされた

努力は裏切らない。じゃあオレにとってどこが間違った場所か言おうか? オレがたとえばじゃあジャニーズ入りたいって努力する。どう? 正しい? 正しい場所? うーん」

斉藤さん(施工業)「それで、なれたら誰でもなれるもん」

「そう誰でもなれるよ」

やりたいことと仕事は別 お金をもらう責任を!

「僕はこう思ってるの。好きなことは趣味でやればいい。仕事っていうのはお金をもらってやることだから、それはお金を払う人に対して責任を取らなきゃいけない。こっちが好きか嫌いかなんてどうでもいいの。向こうがお金を払ったことに対して責任を取れるか。そういうことがちゃんとできてるってプライドを持てるか。そこだけでいいと僕は思ってる。ひとつの考え方だけどね。だから好きなことはお金を払ってやればいい。仕事はお金をもらうことだから、自分がやれる、やるべきことをやる。っていうのが僕の考え方」

「何か思いがあったら語ってしまった方がいい。ツイッターでもいいしブログでもいい。それは人によって向いてるものがあると思うフェイスブックでもいいけど。なんかこう言ってしまうことで、ちょっとやってみないか、じゃあオレ力貸してあげるよっていう人が昔に比べて、非常に簡単に現れる時代になっているから、夢はねぇ、書いちゃった方がいいよ。発表した方がいい。」

どういう相手を好きになるべきか

「あと質問がなければ授業終わりますけど…」

市川さん(解体屋)「はーい。どういう女の子を好きになればいいですか?」

「… じゃ残酷な現実言おうか」

市川さん(解体屋)「はい」

「オレの莫大な経験で言って、自分のことを好きになってくれる女の子は人によって率が違うけど、オレも少ないのよ。だいたい100人のうち1人か2人いるかいないか。君もそんなに多くはないと思う」

市川さん(解体屋)「そうですね」

「残念ながら。これはもうお互い諦めよう」

「福山雅治だと、100人中ね70とか80になるの。もっとかな? だからそこを見きわめるんだ。つまり自分のことを好きになってくれる相手を見る目ってものを見つけなきゃいけない。好きにならない子はならないから」

「オレの場合だったらわかりやすく言うと、亀田兄弟のファンっていうタイプは絶対にオレの方来ないのよ。わかったでしょ。逆に言うとオレのこと好きってタイプの女の子は残念ながら君のとこ絶対行かない。ね。そういうふうにして自分のことを好きになってくれるゾーンを見つけてかなきゃダメなんだよね」

恋に落ちるときの男と女の違い

「しかもねぇ… ちょっといい? 恋愛のシステム解説するね」

「脳が違うの男と女は。これはある本に書いてあったこと僕そのまま書くけど、男の脳は、ね、一目惚れゾーンっての広いの。ポーンと飛び込んでくる。と、この子好きとなって、だけど実際にですねこう付き合っていくと、あれーなんか意外とルーズだなぁとか、あれなんかだらしないなぁ、あれなんだ鼻くそほじくってんなぁとか、いろんなことで減点して普通ゾーンに落ちていっちゃう」

「女の子は違うんですよ。女の子は一目惚れってのほんとに少なくってここ飛び込めるのはキムタクとかね福山とかそういう一部の人。一般人無理。で、だいたい普通がこう広いんです。でここに生理的に受け付けないゾーンっていうね、地獄のゾーンがある。だから男はここに入らないように清潔にしとかなきゃいけないの」

生徒「リアル」

「わかる? もうここ入っちゃったヤツは絶対もう動かないよ。でしょ」

生徒「女もそうだよね」

「男の子優しいから。女の子厳しいから」

小沼さん(教習所事務)「絶対ウソ」

「ほんと」

小沼さん(教習所事務)「女の子優しいよ」

「女の子厳しいよ」

小沼さん(教習所事務)「優しいよ女の子」

「しかも女の子は、いきなりここ(一目惚れゾーン)来ないからね。ここ(普通)にいて、いろいろがんばってると点数積んで積んで積んで、あ意外といい人じゃん、3点ゲット。あこんな優しいとこあんだ、5点ゲット。あなかなか、あ、あ、あで、はい合格チーンみたいになんの」

「でここにピンとゾーンが変わって恋愛になんの。なんであの人、いつの間にか私の心に住み着いちゃってみたいなことを言うわけだよ。わかる? だからこの恋愛のメカニズムを生かして、自分のゾーンをしぼって、その子の前でこういろいろがんばることによって点数をゲットして、こっちへ移ってください」

八木さん(運送業)「じゃあ、最後に 授業いつ終わるの?」

「…今でしょ!… いやあ、なかなか厳しい授業。でも、なんかひとつは、持って帰ってくれるよね。全部(持って帰れないの)は当然だオレいろいろなこと言ったから。なんかひとつふたつ持って帰って今後の君たちの生活に生かしてくれれば、いいなと。ということでじゃ、今日の授業これで、おしまいにします」

(チャイム)

授業を終えて

ディレクター)どうでした?

「いや負けですよ。多少取り返したかもしれないけど基本は負けですよ」

「ただまあ唯一の救いは、その負けてるのを知らんぷりして、さも勝ってるかのように見せなかったこと。もう負けたよってことを素直に言った。それが彼らに、は通じたんで。まあそっから多少は取り返したと思うけど」

「最初のやっぱり覚悟が足りなかったね。理屈を頭に持って入った時点でこの勝負は負けでしたね。だからシナリオなんか用意しないで、ただ目の前の連中に、ドーンとぶつかっていけば、まだ勝機はあったかもしれないけど、だけど基本的に僕が持っているものが、彼らにとってそれほど大事なものじゃないんで」

ディレクター)点数で言うと何点ぐらいになる?

「うーん… 50点。うん」

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