こんにちは。
この記事で言いたいこと
「草葉の陰」は死体置き場と考えた方が筋が通ります。
「浄相の持続」(松井冬子, 2004)
『字統』での発見
うちには漢字の字典がなかったので、今さらながら白川静先生の『字統』を買いました。
最初に読んだのは「死」の項です。エロい言葉を引きたがる中学生と発想が変わりません。
「死」
うれしいことに、さっそく発見がありました。
人の死するや、まずその屍は草間に棄てられた。風化を待つためである。
だから「草葉の陰」なのですね。はじめてこの言葉の意味が納得できました。
そして風化した骨をとって葬るので、いわゆる複葬の形式をとる。
のだそうです。
葬は死(屍)の草間にある形。
とも。なるほど、それでくさかんむりなのですね。
いろいろ理解がクリアになりました。
※画像は、紙本著色九相図(部分)(14世紀) 九州国立博物館収蔵品デジタルアーカイブ より
国語辞典の説明はいまいち
そうしてみると、国語辞典での「草葉の陰」の説明は、やや、ピントが外れている感が出てきます。
《草の葉の下の意から》墓の下。あの世。 (goo辞書:デジタル大辞泉)
(2)墓の下。あの世。草の陰。 (kotobank:大辞林 第三版)
手持ちの電子辞書含め、見た範囲ではどれも「墓の下」という説明を入れていました。しかし「墓の下」ですと、どこを指すのかがあいまいです。
1)「墓の下」を「地面の下」の意味に取ると、草葉の「陰」と合わないです。
陰(かげ)というのは「隠れた所」であるはずです。草を分ければ、あるいは別のところへ回れば、視界に現れるという意に取るのが自然でしょう。
2)「陰」を生かして「草に隠れた、お墓の土台の部分」という意味に取るのも変です。
草に隠れていてもそこはあくまで地面の上であって、「そこに私はいません」という話だからです。
3)さらに、そもそも「墓」は適切なのかということにもなります。死人がそこに「眠ってなんかいません」という話もありますし、墓と草葉の結びつきが、こじつけにも見えてきます。
「草葉の陰」本来は「死んでから風化するまで」になる
『字統』での「死」の項の説明からすると、本来「草葉の陰」が使えるのは、「死んでから草葉の陰に置かれて骨になるまでの期間」という話になります。
まとめ
当分の間『字統』で遊べそうです。
白川静先生は偉大です。
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