こんにちは。新語捕物帖シリーズです。
はじめに
ドヤ顔
「ドヤ顔」という言葉があります。
「どや(どうだ)と言わんばかりの顔」というのを縮めてそう言っているのだろうと理解しています。
その言葉を取り入れた「Oh!どや顔サミット」(ABC系 2011-2013)というテレビ番組もありました。
みんな、それこそドヤ顔で使っています。
僕は使わない
僕の場合、用例として適切ならば「ドヤ顔」が使われることへの抵抗はないですが、それでも自身でこの言葉を使うことはありません。
といっても、「使うべからず」と自分に課しているわけでもないです。将来「ドヤ顔」としか言いようがない顔つきなり物腰なりに出会えば、使うこともありましょうけれども、今のところ使わなくても間に合っているだけです。
いま、他の人が「ドヤ顔」と言うであろう状況でも、僕なら別の言い方を使うと思います。
使わない理由
その理由を簡単に言うと、昔からある言葉ではないからです。
「いつか使う」を前提とした言い方をするなら、自分の中で機が熟すのを待っている段階と言えるかもしれません。
「ドヤ顔」用例調査
「ドヤ顔」の来歴を確認するため、用例をたどっていくことにします。
はじめての「ドヤ顔」
はっきり記憶していますが、僕がはじめて「ドヤ顔」という言葉を聞いたのは、2006年のM-1グランプリ決勝戦(12月24日)の生放送を見ていてでした。
岩尾レンジャーと後藤店長からなる「フットボールアワー戦隊」のネタに対する、審査員の松本人志さんのコメント:
「後藤くんねぇ、ツッコんだあとドヤ顔でこっち見んのやめてくれる」
が、僕にとっての“初出”です。
※画像は吉本興業>芸人プロフィール>フットボールアワーより
補足しておくと、フットボールアワーは2003年に1度グランプリを獲得しており、この2006年では「2度目のグランプリを目指しての挑戦」というアングルでの決勝進出でした。
そうした背景が後藤さんの「ドヤ顔」を生んだ一因であるとも言えそうです。
既に確立していた用語だったもよう
僕は初めて聞いたのですが、しかし既にこの時点で、少なくとも関西の芸人さんの間では「ドヤ顔」が普及し用法も確立していたものと推測されます。
というのも、このとき、そう言われた後藤輝基さんも、コメントを受けて「ドヤ顔」を使いつつ話をつないだ司会の今田耕司さんも、「ドヤ顔」を十分承知してのふるまいに見えたからです。
あるいは今田さんはここで「まだ世間に浸透していない芸人同士の言葉だが、説明がなくても伝わる」といった判断を瞬時にされていたのかもしれません。
もっと古い用例を探す
くり返しになりますが、僕がはじめてこの言葉を聞いた2006年末時点では、既に「ドヤ顔」が芸人用語として確立されていたように感じられたわけです。
そこで、日付指定でGoogle 検索することで、2006年のM-1グランプリ以前の用例を探してみることにしました。
ただこの方法による調査は、Web サイト側のタイムスタンプが必ずしも正確ではないために、ノイズも多かったです。
2004年末までさかのぼれた
そんななか、いちおう事実関係を信頼してよさそうな情報としては、その2年前までさかのぼることができました。
2004年12月23日にルミネtheよしもとで開かれたライブイベント「千原Jr. のセンマ」で、「ドヤ顔」という言葉が使われていたようです。
千原Jr. のセンマ(2004)
ライブの観客によると思われる、イベント内容を伝えるページが2つ見つかりました。引用します。
千原Jr. のセンマ(geocities.jp)より。
タイトルでは何のライブかまったくわからないですが、まあJr色の濃いライブ、”即興性”というのを重視したゲームというかネタのライブであった。
ちなみにタイトルの”センマ”とは、Jrのおじいちゃんの名前らしく、タイトル映像、セットのバックにはおじいちゃんの写真がエキセントリックに飾ってあった。
「ドヤ顔」の用例はこちら。
○ #8 Jrドヤ顔選手権
いろいろなテレビで活躍しているJrさん。しかし、さまざまな場面で面白コメントを言った後、必ず「どやっ!」という顔をする。
それを集めて、一番ドヤ顔なのかを決めようというコーナー。
どや顔をする直前に、ふと どや顔の一歩前の表情をみせることを、あつむさんが
第一どや顔 と表現していた。
Jrさん「チンポ汁みたいに言うな」
ははは。
また、別のサイトでは、コーナー内容がより詳細に伝えられていました。 以下、引用はすべてこちらのページからです。
千原Jr.の「センマ」|YamaRan’s:備忘録(2004/12/23付)(jugem.jp)
<コーナー主旨>
#8「Jr.どや顔選手権」
(略)TV出演時、回答を出した後などに見せる「どやっ!」というキメ顔=どや顔を紹介し、審査員が“どや度”を判定。
<審査員の方々>
審査員は、「大阪時代から数々の“どや顔”を見てきた」と言う渡辺、「縦列駐車して車降りたときも“どやっ!”って顔しはるんですよ」と言う小堀(略)。
<ドヤ顔のラインナップ>
紹介されたどやTR(=どや顔VTR・笑)は、「虎ノ門」第5回しりとり竜王戦から2ヶ所、「メレンゲの気持ち」で陣内智則のエピソードを披露する場面、「松紳」で腹にサランラップ巻いてると言われた後の返し、「笑っていいとも」テレホンショッキングでの裁判傍聴話の最後の部分。
わざわざ“どや顔”部分をカウントダウンして見せて、さらにクローズアップでリピート(笑)。
<千原ジュニアさんのリアクション>
初めのうちは「そんな顔した覚えはない」と言っていたJr.も、次第に「これは…相当イタイな(笑)」と否定出来ない状態になり、最後はイスから落ちてのたうち回ってました、恥ずかしさのあまり。
<結果発表・総評>
判定は、30点満点のはずなのに35点をマークした、テレホンショッキングでの“どや顔”に決定。
これに懲りず、今後も自信満々の“どや顔”を見せていただきたいものです(笑)。
暫定結論
というわけで、ネットで確認できる範囲での「ドヤ顔」の草分けは、千原ジュニアさんということになります。
まとめ:その先の「答え」を求めたい
ただし言うまでもなく、これだけで千原ジュニアさんがドヤ顔グループ創業者、ドヤ顔チェーン発祥の1号店と認定するわけにはいきません。
そこからさらに源流をたどるべく、「ドヤ顔」がどのような過程を経て成立してきたのか、
出演:千原Jr、渡辺あつむ(ジャリズム)、小堀裕之(2丁拳銃)、ケンドーコバヤシ、あべこうじ
など、関係者の方から証言を聞き出せる機会がほしいところです。
『答え』(千原浩史, 2004)
コメント
確かドヤ顔の語源は東野幸治さんだと思います
いろもん2という番組で共演の鶴瓶さんがどうやっ!て自慢げな顔したという話を数回使ってるうち、どうや顔→ドヤ顔となっていった記憶があります
広まったのはダウンタウン松本さんが使うようになってからだと
情報提供ありがとうございます。
Wikipediaで「いろもん貳」の放送期間見てみました。1998~2000年のどこかということですね。
記事に書いたとおり、自分は2006年のM-1グランプリまで知りませんでした。
https://www.youtube.com/watch?v=OWRq2ulIpGE
2001年に松本人志が使ってますね。