意外!マイクロソフト「新しくなったWindows」のCMがアレな理由を調べてみたら、想像以上だった

こんにちは。出典マニアの調査報告です。

(2014/10/28追記)

サーフェスのCMに関しては別に書きました。ご用の方はこちらへお願いします。

要約:Executive Summary

1)とある違和感をきっかけに、マイクロソフトの「新しくなったWindows」のCMについて調べてみたら、次の3つのことがわかりました。

  1. 「元ネタ」がある
  2. 撮影は「日本国外」
  3. メインの役者さん以外は、みな「使い回し」

1点目までは予想範囲でしたが、2、3点目については、想像を上回っていました。

2)自覚のない田舎者は、時と場合によって罪だと思います。

マイクロソフト「新しくなったWindows」のアレなCM

マイクロソフトの「新しくなったWindows」というCMが、全部で4パターン放送されています(1/3現在)。

いずれも、YouTube のWindows Japan チャンネルから視聴できます。

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※画像は、Windows Japan チャンネル|YouTube

目にするのは、「研修医」「経理担当者」「旅行者」「先生」の4パターンです。

不評らしい

このCMシリーズに対し、ツイッターでは

  • イラッとする
  • ウザい
  • ムカつく

など、不快の意を表すツイートが相次いでいるようです。悪評ふんぷんであると言ってもよさそうです。

もっとも、自分のタイムラインで目撃したわけではありません。とある違和感をきっかけにこれらのCMシリーズについて調べ始めて、不評ぶりを知りました。

不快ではないが、引っかかる

僕自身は、このCMシリーズに出くわしても特別不快には思いません。ですが確かに、引っかかるような違和感はあります。

一連の「新しくなったWindows」のCMに対する自分の印象を一言で言えば、古い言い方ですが、「バタ臭い」です。

セリフ回しが、どこか不自然だからです。

それは、「日本」じゃない感

「バタ臭い」をもう少し詳しく説明します。

CMでは日本人(たぶん)が日本語で話しています。にもかかわらず、「日本」ではないように感じられるのです。

そこで話されているのは間違いなく日本語です。なのに総合して言えば、その日本語が純粋な日本語に聞こえません。

それはあたかも、日本暮らしの経験がない日系の外国人が、彼らの生まれ育った異国の地で、その国の言葉を話しているかのようです。

まとめると、《「日本」じゃない感》と言い換えられそうです。

調査対象の選定:「研修医」篇

「新しくなったWindows」CMシリーズの中で、「研修医」篇を対象に調査することとしました。

医療スタッフの格好をした女性が、紙コップを片手に「正直緊急事態でした」と話し始めるやつです。

新しくなった Windows: 「研修医」篇(2013/12/15)

選定理由:「日本」じゃない感が最も強い

その理由は、4つの中で僕がセリフ回しに《「日本」じゃない感》を最も強く感じるためです。

調査のきっかけ

といったわけで、こちらのセリフ回しに生じる違和感の正体を解き明かすための手がかりとして、「研修医」篇のセリフで使われている日本語フレーズの用例をあれこれ調べ始めたのでした。

語法に関する具体論は別途

ただしこの記事では、それら「不自然なセリフ回し」の具体論には立ち入りません。別途記事を分けて書くつもりです。

今回調べてみて判明した事実は、ある意味そんな些末な話などどうでもいいと思えるほど、予想を超えていました。

調査結果:違和感は正しかった。

結論から言えば、僕の覚えた違和感はほぼ正しかったと言えます。

冒頭の「要約」をくり返しますが、「研修医」篇に関して次の3つのことがわかったからです。

  1. 「元ネタ」がある
  2. 撮影は「日本国外」 
  3. メインの役者さん以外は、みな「使い回し」

以下、順に説明していきます。

事実1:「元ネタ」があった

僕は直感的に、これは「翻訳CM」だなと思いました。恐らくは、日本語でない「元ネタ」があるのだろう、ということです

それでYouTube を探してみましたら、思ったとおりでした。一覧用に、microsoft.com のスクリーンショットを貼っておきます。

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※画像は、http://www.microsoft.com/windows/en-us/honestly/default.aspx より

「研修医」篇に対応する「元ネタ」は、こちらです。

The New Windows: Paramedic(2013/12/04)

自身の乏しい英語リスニング能力と、YouTube の自動字幕起こし機能の助けとを動員した結果から判定すれば、100%同一ではないながらも、日本語の「研修医」篇とほぼ同じことを言っています。少なくとも、セリフの組み立てと流れは日本語版と共通しています。

実際こちらを元に、日本語版を作ったのでしょう。

paramedic とは

なお「paramedic」を辞書で引くと、こう説明されていました。

a person whose job is to help people who are sick or injured, but who is not a doctor or nurse;(OALD)

(病人やけが人を助けることが仕事であるが、医師/看護師ではない人)

視覚情報と合わせ、「救急隊員」ぐらいにとらえておきます。

北米2か国ではこれ

ちなみに、YouTube のMicrosoft Canada チャンネルにも同じ動画(2013/11/17)がありました。

米・加の2か国で放送されているようです。

cf. 他の動画へのリンク

「Honestly」シリーズの残りの動画へも、リンクを張っておきます。

「研修医」にアレンジされていたparamedic のケースと比べると、いずれも人物造形に違いがありません。

そしてざっとの聞き比べによる粗い判断ですが、言っている内容も、日本語版とほとんど差がないように思えます。

「英語版のみ」はNokia Lumia 1020 のやつ

ちなみに、英語版「Honestly」で日本語版の存在しないパターンはこちらです。

日本国内では取り扱いのない端末のようです。

参考

Windows Phone8が大躍進。MSがNokia買収で日本で販売開始まであとわずか?!(のはず)|More Access! More Fun!(2013年9月4日付)

事実2:撮影は「日本国外」

話を再び、日本語版の「研修医」篇に戻します。

この「研修医」篇のCMは、日本で撮影されたものではありません。ソースは、このCMで当の「研修医」を演じられている方のブログ記事です。

みやべほの・キオクノキロク。>「出演情報でっす。」(2013/12/20付)より。※下線は引用者

今放送中の「新しくなったWindows・研修医篇」CMに出演しております。
台湾で撮影だったのですが、(後略)

ある意味《「日本」じゃない感》は当然だったわけですね。

こちらは、同じエントリのコメント欄からです(2013/12/30付)。

CM撮影では、実際の病院の使ってないフロアをお借りして撮影しました。
美術さんが隅々までこだわって作ってくれました(^_^)

だそうです。

ここでみやべさんが嘘をついても「ダレトク」ですから、虚偽の情報である可能性も考えづらいです。

事実3:メインの役者以外はみな「使い回し」

となると、素朴な疑問が起こります。

疑問:なぜ台湾?

なぜ撮影場所が日本じゃなく、台湾だったのでしょうか。

そしてまた、みやべほのさんは、同じエントリのコメント欄でこうも述べられています(2013/12/28付)。

台湾のスタッフさんが、メイクや衣装、美術で病院らしさを作ってくれました。

CM制作スタッフも台湾の方だったようです。ですがなぜ、「台湾のスタッフ」だったのでしょうか。

答え:中国語版と一緒に作ったから

これも、YouTube を探して答えがわかりました。

中国語版と一緒に作ったからです。

それも、メインの役者さん以外は、ほぼすべてを共有した「使い回し」でです。

この事実は、自分の想像を超えていました。

中国語版「全新Windows」

YouTube のMicrosoft Hong Kong チャンネルに、中国語版のCM動画があります。4パターンすべてに、対応するバージョンが揃っています。

「研修医」篇|「paramedic」に対応するのはこちらです。

全新 Windows: 護理人員篇(2013/12/30)

僕の中国語のリスニング能力がほぼゼロであるため、「Office」「Facebook」「Windows」以外に何と言っているのか全然聞き取れません。

したがって印象だけでものを言いますが、セリフの流れは共通していそうです。

なおGoogle 翻訳に聞いたところ、「護理人員」というのは、看護師のことだそうです。

同んなじだ

日中2つの動画を見比べるとわかりますが、「研修医」篇、「護理人員」篇の撮影場所は同じです。背後で動いているエキストラも、同じ人でしょう。

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新しくなったWindows:「研修医」篇(2013/12/15)

CM終盤にカメラ背後から現れ、画面奥に向かっていく別の医療スタッフ役の女性も、日中両国語版ともに同一人物に見えます。

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全新 Windows: 護理人員篇(2013/12/30)

他のバージョンでは、「使い回し」がより顕著

他のバージョンでは、リソースの「使い回し」で、中国語版と日本語版を一緒に撮影したことが、より顕著です。

それぞれのキャプチャ画像を並べておきます。いずれも日本語版、中国語版の順です。

「間違い探し」としても楽しめますので、お好みでどうぞ。

Accountant(経理担当者)

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新しくなった Windows:「経理担当者」編(2013/12/01)

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全新 Windows: 會計師篇(2013/12/03)

Traveler(旅行者)

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新しくなった Windows:「旅行者」編(2013/12/01)

日本人じゃない

奥にいる、ヘッドホンをした太った男性について。

このバージョンを初めて見た時以来、僕の認知システムでは、この人を日本人と認識しませんでした。口角を引き上げたこの表情は、コロッケさんのような特殊な訓練を積んだ人は別として、日本語だけを使ってきた人が作れるものにはとても思えなかったからです。

中国語版で納得

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全新 Windows: 旅客篇(2013/11/26)

今回の調査により中国語版があると知って、どこか胸のつかえが取れた気がします。

Teacher(先生)

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新しくなった Windows:「先生」編(2013/11/29)

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全新 Windows: 教師篇(2013/11/15)

小まとめ的講評

どれも、撮影セットからエキストラからインサート画像から、何から何まで同じです。

逆に「セリフをしゃべる役者さんと、その言語が違うだけ」とする方が正確なのかもしれません。

きっと全部「日本」じゃない

これらの撮影場所も、恐らく台湾なのでしょう。よしんば台湾でないとしても、撮影地は「日本国外」である可能性の方がはるかに高そうです。

僕の《「日本」じゃない感》は、それほど的外れでもなかったようです。

考察:アレな理由は、ローカライズ不足

マイクロソフトの「新しくなったWindows」のCMは、「元ネタ」があり、その撮影地は(少なくとも1つは)台湾という「日本の外」で、しかも中国語版ともろもろ共用した「使い回し」によって作られたものであることがわかりました。

このような背景を持つCMが一部で悪評ふんぷんな理由を簡単に言ってしまえば、「ローカライズが不十分だから」だと言えそうです。

ローカル市場にフィットさせるため、不自然さや不快感を低減させる方向でことさらに品質を追い求めても、コストに比べて得るものは少ないという判断なのでしょう。

香港でも不評か?

そしてまた中国語版のYouTube 動画に、低評価の方が多くついている点からすると、香港でもやはり「全新Windows」CMに不快感を抱く方が相応におられるようです。

まとめ:世界の田舎者

ここまで見てきたように、日本で言うところの「新しくなったWindows」のCMには、少なくとも英語版、中国語版、日本語版、計3か国語によるバージョンが存在しました。

ここからは推測も含みますが、恐らくは、英語版が「元ネタ」としてあり、それを中国語版、日本語版にそれぞれローカライズしたものと考えられます。

ことの善悪、是非は別として、CM制作側あるいはマイクロソフト側としては、日本市場だけを向いてやっていないことは間違いありません。多国籍、多言語で展開しているわけです。「グローバル」と言っていいかもしれません。

日本向けのローカルなCMしか目に入らない一般視聴者とは、見ている世界が違うわけです。

「漢字圏くくり」で一緒くた

こうしたCM制作姿勢を根拠に言えるのは、マイクロソフトにとって、中国語圏と日本語圏は「漢字圏」として一緒くたになっている、ということです。

中・日両国語によるCMは、「全新Windows」「新しくなったWindows」それぞれで、撮影セットからエキストラから何から、ことごとく共有して使い回しています。

画面に直接は見えていませんが、きっと制作スタッフも共通なのでしょう。

そして英語版という、両者に共通する「元ネタ」がある。

そんな構図になっています。

おめーら日本だからってバカにしてんじゃねぇかんな?!(赤プルさん風)

俯瞰すればそういった構図があるにもかかわらず、「日本向け」というローカルな一部分だけを見てあれこれ反応しているのは、それが無意味とは言いませんが、どこか滑稽であり、かつ悲哀も誘います。

簡単に言ってしまえば、それは田舎者のふるまいです。

田舎者が騒いでるべな

もちろん、田舎者であること自体に罪はありません。田舎者が田舎で機嫌よく暮らしていくことに、何の咎がありましょうか。

しかし、田舎者であることを自覚していない田舎者は、時と場合によっては、罪だと思います。

そういう田舎者は、田舎でしか通用しない田舎者の発想なり行動原理なりが唯一無二の価値で、あたかも普遍の真理であるかのようにふるまうからです。

時と場合によっては、引っ込んでろ田舎者と言いたくなるのであります。

あーいいさ俺が悪りーべ ごめんねごめんね~
(U字工事風)

コメント

  1. 通りすがり より:

    ここまで調べて何故結論がマイクロソフト批判ではなく、日本の視聴者(批判者)批判になるのかがよくわかりませんでした…

  2. 通りすがり2 より:

    ウィンドウズのCMがアジア地区で統一して作られてるのは有名だと思ってましたが、まだまだ知られて無かったんですね。

    ちなみに記事中で「中国語」と紹介されているのは、正確には「広東語」です。

  3. ラビ より:

    私もずっと妙なCMだと思って気分も悪かったのですが よくまあこれほど調べてくれました ふだん見ている他の日本のCMとやはり製作者が違ってたんですね 最後のまとめ方は支持します

  4. 通りすがり より:

    アレな理由(違和感?)の大部分は、分析されているとおりだと思うのですが…

    「イラッとする、ムカつく」理由は、この女優さんのセリフ回し、演技、動き方に尽きるような気もします

  5. vice versa より:

    なるほど。面白い記事をありがとうございました。
    しかし、逆もまた然りですねぇ。

    しかし、余所者であることを自覚していない余所者は、時と場合によっては、罪だと思います。

    そういう余所者は、田舎では通用しない余所者の発想なり行動原理なりが唯一無二の価値で、あたかも普遍の真理であるかのようにふるまうからです。

    時と場合によっては、引っ込んでろ余所者と言いたくなるのであります。

  6. green より:

    >>4の意見のとおりだと思います
    言い回しが不自然だし、明らかに台詞言ってるなってのがひっかかる
    そんな大根芝居で我々視聴者が買う気になるとでも?という
    馬鹿にされてるという感覚が沸き起こるからかもしれません

  7. […] …と思っていたらすでになぜイラッとするかの分析記事がありました。言われてみてハッとする内容。件のCMにイラッとした経験のある方なら、ちょっとしたアハ体験が得られると思い […]

  8. 通りすがりより より:

    多国籍企業であるのならば、売りたい商品は、売りたい国に合うCMを作るものです。明らかに不自然であるのだとすれば、商品を売りたい企業は直す・修正すべき、直さなければなりません。なぜなら高いCM料(作成から放送まで)を払って購買意欲や会社に対する好感度を潜在的に下げてしまう行為は、意味がないどころか損失だからです。私はこのCMを視聴したときに、明らかに調査不足だと思いました。別に日本と台湾でなくとも、カンボジアとベトナムでもよいのですが、普通ならば、足を運ぶなり、人を雇うなりしてしっかりとメインに売りたい性別年齢、国民性や国民が好む傾向を調査します(このようなことは日本国内でも普通に行われていますが)。マイクロソフトはそれをしなかった。評判が悪くとも至極当然ですし、「日本だからバカにしているのではないか」、「日本だからと軽く扱っているのではないか」と思われても当然です。明らかに手抜きです。手抜きをするのであればもっと分からないようにすべきでしたね。貴方の分析は大変興味深いのですが、「おめーら日本だからってバカにしてんじゃねぇかんな?!(赤プルさん風)」、「田舎者が騒いでるべな」という項目に関しては大変視野の狭い、前半の記事を台無しにする残念な意見だと思います。

  9. ptg より:

    前半の分析はいいけど最後のまとめがなに言ってんの?て感じ

    視聴者が不快感を感じるCMづくりのMicrosoftが問題ではなく
    田舎者意識の視聴者が問題?え?

  10. mol より:

    憎しみを煽り立てる文を書く人物だな。。

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