こんばんは。林修ナイトの時間です。
林さんの出演された12月14日の「SWITCHインタビュー 達人達」(NHK・Eテレ)をテキストにしています。(2)のつづきです。
Vol.30 今やるカリスマ先生 はみだすスーパーエリート
後半
ナレーション)後半は舞台をスイッチ。実は林は20代の頃、経済アナリストになりたいという夢を持っていた。経営には興味津々だという
林「組織っていうのはこれ統一体ですよね。ひとつのコスモスを作り上げて、そのなかで自分の仕事をやっていかれる」
林「組織の長(おさ)、一つの組織を統べる人間として、企業という社会的存在、を、まあ何と言うんですかね、トップとして、どういうこう責任感とか、どういう価値観を持ってやってらっしゃるか。そんなことをうかがえればと、思ってます」
ナレーション)岩瀬大輔は37歳にして社員数100名の生命保険会社を率いている
ライフネット生命本社オフィス(東京・麹町)へ
ナレーション)ネット専業の生命保険会社として創業して6年。生命保険の常識を次々と打ち破るビジネスモデルは、業界に衝撃を与えた。保険商品の販売を担う社員や、いわゆる生保レディーなどの外交員は一人もいない。代理店も作らない。人件費や広告費を徹底的に抑え、その分保険料は大手の半額から7割程度を目指した。20代から40代を中心に、契約件数は6年目で19万件を突破した。2012年には開業3年10か月という異例のスピードで東証マザーズに上場した。林が若き経営者の素顔を突撃取材
企画部・枡野恵也さん「そうですね。なんでも相談しやすい兄貴分なんですかね。兄貴分なんですけど、ちょっとわがまま言ってくる兄貴分。兄貴のわがままをみんなで作ってくみたいな」
岩瀬「働く母の代表で」
マーケティング部・川端麻清さん「こんにちは。はじめまして」
岩瀬「立派なお弁当で」
コンビニのカレー弁当
林「1000カロリー近くありますね」
川端さん「会社の公式ツイッターとか担当してるんですけど、よくやり取りを見てくれていて、もっとこうしたらって意見をくれたりするので、すごくあ見ててくれてるんだなっていうのがわかって、やる気になります。ときどきケンカもしますけど」
岩瀬「よくね、なんか、お言葉ですがって怒られるんで、ごめんなさいって言うんですけど」
ナレーション)ハーバードビジネススクールで上位5%の優秀な成績を修め、日本人4人目となるベイカースカラーを手にした岩瀬。起業の道を選んだ理由とは
オフィスの一室にて
林「そもそもの話なんですけど、いろんな業種があるなかで、生命保険を選ばれたっていうのは何か理由があるんですか?」
岩瀬「そうですね、アメリカに留学してて、やっぱり新しいベンチャービジネスが社会を変えていくさまを見て、自分もそういうことをやりたいなと思ったんですね」
ベンチャー成功3つの条件
岩瀬「成功する新規事業の3つの条件ていう話を聞いたんですね。それは、1つは、みんなが買っている商品を扱えと。つまり市場が大きいことなんですね。生命保険業界って40兆円あるんですよ。大きい市場。2つめは、そこでお客さんがみんな不満に感じていることと。で3つめに、そこで大きな変化が起きていることと。それは技術革新だったり、生命保険業界ちょうど規制緩和っていうのをやってたんですけど、その3つが揃ったときに、大きな市場に大きな非効率、不満があって、それを変える大きな変化の波があるときに、大きなベンチャー、ビジネスが生まれると」
- 成功する新規事業 3つの条件
- みんなが買っている商品
- お客様が不満を感じている
- 大きな変化が起きている
林「なるほど。そういう状況を見て、これは、いつやるか?今でしょ!と思われたんですね」
岩瀬「そのとおりです。今でしょと思って始めました」
林「なるほど。人のことには平気で使えるんで」
林「非効率が残って、つまり改善の余地が大きいっていうのはどういうところが特に」
岩瀬「そうですね。生命保険業界って100年以上、営業職員の方が対面で一軒一軒訪問して売ってきたんですね。でもそれってすごくコストがかかることで、そのコストの負担も全部お客さんがするわけなんで、もちろん人に会って決めたいっていう方もいっぱいいると思うんですけど、できるだけ保険料を削りたいっていう方には、ネットで自分でやってその分保険料をぐっと安くするってあってもいいんじゃないのかなと思ったんですよね。でネット証券があって、ネットの銀行もあって、ネットの自動車保険もあるので、なんでネットの生命保険てないんだろう。そういう素朴な疑問から出発しました」
林「じゃあ、勝算はあったと」
岩瀬「周りの友達に聞いたら、そんなの無理だよっていう人もけっこういたんですけど、それあったら自分も使いたいっていう人もけっこういたんですね。なので、自分の仲間が喜ぶようなサービス作れば絶対流行るはずだってそういうふうに思って、あまりうまくいかないこととか考えずにやってました」
「革命」は一日にして成らず
ナレーション)2006年10月、岩瀬は大手生命保険会社に40年勤めた出口治明とふたりで起業する
ライフネット生命保険会長・出口治明さん「相性がよかったんですよね。僕の持ってないところを彼は持ってるし、彼の持ってないところを僕は持ってるし」
出口「人柄は素直だと思いますね。頭の回転も速いし、で、根はやっぱりすごい、善人だと思いますね」
ナレーション)2008年5月、事務所を開き、念願の営業をスタートさせた。
(2008年5月26日放送 NHKニュースの映像)
岩瀬自ら相談窓口のオペレーターを担当、社員一丸となって契約者獲得に奔走する。開業から1か月での申込件数は500件足らず。新聞や雑誌、新幹線の車内広告などで、保険料の安さをアピールし続けた。連日社員総出でオフィス街に立ち、チラシを手配りする地道な営業も行った。ところが開業から5か月経っても、1か月の申込件数はいっこうに増えなかった
岩瀬「認知の壁みたいなのがあって。次に知ってもらっても、大丈夫かなこの会社ってやっぱり新しい会社って思われちゃうんですよね」
林「特にお金を預ける仕事だけに、他の業種よりも高い信頼感が求められる」
岩瀬「そうなんですよね。いい会社ですよ、商品いいですよって言ってみても、じゃあお客さん何人いるのと、言われて、最初の1か月500人だったんですね。500人しか契約者がいない保険会社ってちょっと不安じゃないですか。その信頼の壁がすごく大きくて。そのふたつ、まあ言ってしまえば結局信頼なんですけど、ほんとに最初は、何やっても全然お客さんが増えないんで、ほんとに辛かったですね」
林「でも、今おっしゃった2つの壁、認知の壁と信頼の壁を、どういう具体的な手法で乗り越えてこられたんですか?」
岩瀬「ひとつきっかけとなった出来事がありまして、会社始めて半年ぐらい経ったところで、初めて決算、中間決算を発表したときに、生命保険の手数料の内訳っていうのを発表したんですね。実は生命保険、いくら手数料を払ってるかって意識しないじゃないですか」
林「そうですね。考えたこともないですね」
岩瀬「銀行だったら手数料とか考えるじゃないですか。だから証券もそうだし、いろんな金融サービスって手数料いくらだろうって調べて選ぶと思うんですけど、生命保険はそれがブラックボックスになっていてわからないんですね。それを僕たちは、われわれいただいている保険料のうち手数料はこれだけですと、いうのを開示したところ、すごく話題になって、要するにそれやったことある会社がなかったんですよね。それをきっかけに認知度が伸びて、で申し込みがうわっと増え始めたんですよ」
ナレーション)保険料の原価を全面的に公開することは、生命保険の最大のタブーだった。業界には衝撃が走った。一方、ホームページのアクセスは急増。毎月の申込件数も倍々ゲームで増えていった。今年10月には契約件数19万件を突破した
林「先ほどからこううかがってて、ま、きちっと対比をされてますね。証券はこう、そして銀行はこう、そして生保はこう、損保はこうっていう形で、やっぱり対比の軸がしっかりしててそのなかでっていう、これ、こんな言い方僭越ですけど、よくできる生徒ですね」
岩瀬「ありがとうございます。やっぱりあの、これ世界的に見ても例のないビジネスなんですね。なので今は外国のいろんな国の保険会社からわれわれ訪ねてきて、どういうふうにやってんだと教えてくれっていうふうに、話を聞きに来ますね」
林「そういうとき教えてあげるんですか?」
岩瀬「もちろん。まあ、しゃべってまねされるようなものって大したものじゃないと思うんですよ。本当にまねできないものってしゃべったぐらいで伝えられないじゃないですか。僕よくその「企業秘密です」とかっていうのを聞くんですけど、もちろん上場企業なので本当の企業秘密というか外に出してないデータを出せないところはあるんですけど、ノウハウとかって、ねぇ別に、じゃあ王監督にバッティングのコツをね、教えてくださいってそれは言えないってたぶんないと思うんですよ。だって、言ってもまねされないじゃないですか」
林「なるほど」
岩瀬「先生も、授業のコツを教えてくださいとか言われますか他の先生に」
林「この収録のときに授業準備のとこを見せてくれって言われたんで、それは企業秘密だから見せられないと」
岩瀬「そうですか、失礼しました。でもたぶんそれ見ても先生の授業まねできないと思うんですよね」
岩瀬「現代文ってこういうものなんだよって、あれがまさにノウハウだと思うんですよね」
林「ほんとは隠しときたいんですよね。だからNHKでやっちゃってしまったっていうのは、ありますけど、まあしょうがないですね。やっちゃいました」
岩瀬「なんかあの、すごく思うんですけど、やっぱり大切なものって簡単に手に入らないんじゃないのかなと思ってて、要するに簡単に手に入れられるものってそんなに大したものじゃないのかもしれない」
岩瀬「だからすごく苦労して試行錯誤して失敗して、恥ずかしい思いをしながらも、してはじめて、大切なものって手に入らないんじゃないかなと思ったりもして、いまほんと会社、いろいろ試行錯誤で、うまくいかないこともいっぱいあるんですけど、そんなふうに信じながら、いい仲間と、がんばってます」
岩瀬社長のある一日
ナレーション)岩瀬社長の朝一番の日課は、社員との連続ミーティング。
まず呼び出したのは総務部長。春に向け採用のターゲットをどこにするかを相談する。
続いて呼び出したのは携帯サイトの担当者。資料請求しやすいレイアウトになるように、改善を求めた。
わずか25分で5組。次々と課題やアイデアを伝えていく。外回りに出ることが多い岩瀬社長。その分社内ミーティングが10本続くことも珍しくない。
会社を出て都内のホテルへ向かう。
/* エレベーターホールの感じからすると(ウソ)、東京駅の日本橋口にあるシャングリラホテル東京です。*/
イギリスの商工会議所から招きを受け、会社立ち上げの経緯について講演する。岩瀬にとって、講演もひとつの営業活動。講演がきっかけで、スイスの生命保険会社との提携に結びついたこともある。
/*
講演の告知を探してみました。これですね。
Can Entrepreneurs Save Japan? Oct. 22, 2013 (bccjapan.com>Events)
*/
ナレーション)夜7時半。なぜかスポーツウェアに着替えて登場。これからマラソン部の部活動の時間だという。社内には登山部からとんかつ部まで13の部活動がある。飲み会の代わりだという。
/*
出口治明さんのツイートによると、13は運動部の数のようです。
ありがとうございます。運動部が13、文化部が55あります。因みに、社員数は100名弱。 @k_bennytown ライフネット生命の部活楽しそうだったなぁ。いいなぁ。
— 出口治明 (@p_hal) 2013, 12月 14
*/
岩瀬の会社は、世界40か国で実施される働きがいのある会社ランキングで、2年連続ベストカンパニーに選ばれた。(Great Place To Work 調べ)
司法試験に合格したにもかかわらず、法曹界には進まなかった岩瀬。コンサルティング会社やIT投資会社など、比較的小規模な会社を渡り歩いてきた
はみだすスーパーエリート
林「司法試験に受かられて、法曹界、たとえば弁護士であるとか、裁判官である、といった方向は考えなかったんですか?」
岩瀬「そうですね。もちろん、考えて必死に勉強したんですけど、いざ受かってみたらですね、当時僕らの頃合格者が750人ぐらいだったんですね。司法修習とか750人で、大学卒業してまた自分が750人の1人に埋没するのがすごい、嫌だったんですよ。さっきの先生の話にも少し似てるんですけど、高校大学の同級生で、ものすごい勉強できる奴らがいて、こいつらかなわないなと思ったんですね。なので、彼らに弁護士やってもらえばいいんだって思ったんですよ。だから自分には、違う仕事がもっと待ってるんじゃないかってなんとなく思ったんですね」
岩瀬「でもなんかあのぅ、なんで自分がそういうふうになったのかなってたまに考えることあるんですよ。僕海外で育ったことの影響が大きいのかなって思ってまして、というのは、小学校2年生のときに父の仕事でイギリス行ったんですけど、最初の頃は日本の教育受けてるんで、みんなと違うのが怖くてしょうがなかったんですよ。それで、最初の遠足のときに、おにぎり持ってたんですね。そしたらですね、イギリス人の子供たちに、やーいやーいお前なに黒いの食べてるんだ気持ち悪いあっち行けって言われたんですよ。その日家に帰って泣きながら、これからお弁当サンドイッチにしてって言ったんですよ。だから本当に自分だけ日本人であとみんなイギリス人で、いつもぽつんと浮いているのがすごく嫌だったんですよ。小学生の、低学年のころはジャップとか、あっち行けとか人種差別みたいなされたんですけど、ある日一人の子供がですね、racistっていう言葉を覚えて帰ってきたんですよ。これ人種差別者、差別主義者っていう意味なんですけど、それを知ってからみんなパタッとやめたんですよ。だからコミュニティに新しい概念が生まれるとこうも行動が変わるかなと思ったんですけど、でもそれ5年続けてると、なんか自分が違う存在なんだって思い始めるので、それからは自分がみんなと同じであるのがすごく、落ち着かない。まあでもその経験がすごく焼き付いているので、なんか大きい組織とかに属することが苦手なのかもしれないな、少人数のみんながやらないところに行きたい質(たち)なのかなと思ってます」
つづく
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