こんにちは。出典マニアの出典調査報告です。
「第10回 IPPONグランプリ」で使われていた1枚の写真について調査しました。
番組情報
第10回 IPPONグランプリ(フジテレビ系 2013/11/23 21:00-23:10 OA)
「芸能人 大喜利王 決定戦」(番組サイトより)の番組です。
「写真で一言」ルーレット
こんなコーナーがありました。番組内の字幕から引用します。
12枚の写真がランダムに流れるルーレット
ボタンを押して止まった写真で一言
「写真で一言」のお題は前からありましたが、前後の発言等から総合すると、回答者ごとの一問一答形式は今回からの新趣向だったようです。
気になった写真
使われていた写真は、総じてインパクトのあるものでした。
そのなかで僕が最も気になったのは、Bブロックで使われていた12枚のうちのある1枚です。同一の写真ではなさげですが、同じ瞬間をとらえたと思われるものがこちらです。
※画像は、static-secure.guim.co.uk より
なお番組で使われていた写真には「ロイター/アフロ」のクレジットが付いていました。
誰? ヒラリー・クリントン
写真の人物が誰かはすぐわかりました。ヒラリー・クリントンさんです。なぜわかったか?と聞かれれば、見たことあるからとしか答えようがありません。
疑問:なぜこんな「変顔」を?
写真の感じでは、隠し撮りでもなさそうです。
僕が疑問に思ったのは、なぜクリントンさんが、このような「変顔」をしなければいけなかったかです。それも、カメラマンのいる前で。
それを探るために、この写真が「いつ」「どこで」撮られたものか調べることにしました。
調査過程:「変顔」アプローチはすぐ行き詰まった
「いつ」「どこで」の写真なのかを探るのに、「変顔」からのアプローチはすぐに行き詰まりました。この瞬間をとらえた写真をフィーチャーしたページへ行っても、出典情報が書かれていそうにはなかったからです。まあそうでしょうね。
同じ格好の「変じゃない顔」を探す
そこで、写真と同じ紺のスーツ姿で、「変じゃない顔」のクリントンさんを探すことにしました。
手はじめにGoogle の画像検索とYouTube で探してみました。結論を言えば不調でした。違う服装のものばかり出てきて見つかりません。
狙いを絞る
そこでもう少し狙いを限定して絞ることにしました。
写真の引用元URL の一部が「2012」となっていることから、素直に2012年に撮られた写真だろうと推定しました。となるとこの年のクリントンさんは、米国政府の国務長官(secretary of state)をされています。
“接近遭遇”
そのあたりのキーワードを足して探すと、まず、近いものがYouTube にありました。
Secretary Clinton Delivers a Video Message to the Fulbright Scholars
公開元は「U.S. Department of State」。「公開日:2012/05/29」となっています。
ただし髪型は違う
クリントン長官の身に着けている服とアクセサリーは、写真とよく似ています。しかし、髪型が明らかに違います。こちらの動画では髪をまとめていません。
それでも、近いところまで来ている感触はあります。
そして発見
冒頭で紹介した写真には星条旗が写っていること、そして、よく似た格好での動画を米国国務省が公開していることから、たぶん国務省での公式の記者会見だろうと当たりをつけました。
そうしてstate.gov の会見映像のアーカイブの一覧を見ていったら、ありました。これです。
※画像は、Remarks with Japanese Foreign Minister Gemba|video.state.gov
服装、アクセサリー、髪型、どれも同じです。
答え:2012年4月10日・玄葉外務大臣との共同会見で
クリントンさんの「変顔」写真が「いつ」「どこで」撮られたか
この答えは、
2012年4月10日(現地時間)にワシントンの米国国務省で開かれた、玄葉光一郎外務大臣(当時)との共同会見の席で
となります。
参考:日本での報道
参考に日本の報道記事もひとつリンクしておきます。
「北朝鮮ミサイル発射なら安保理で対応」 日米外相一致|朝日新聞デジタル(2012年4月11日付)
「変顔」を生んだ背景
そして動画を視聴したら、クリントンさんが「変顔」をした理由もわかりました。
動画を見ますと、この会見は声明の発表、質疑応答ともに「2か国語」で進められていました。
すなわち、クリントン長官は英語で、玄葉大臣は日本語で話し、通訳がもう一方の言語でくり返します。
それが、クリントン長官の「変顔」を生みました。
「変顔」の瞬間
結論から言うと、クリントン長官の「変顔」シーンは、この会見動画の14:28~30 あたりです。
※要Flash player
CNNの記者からの質問に長官が次のように答えた後、通訳が日本語を言い終わるのを待つところで「その瞬間」が訪れました。
Thank you very much. Let me make absolutely clear that any launch by North Korea would be a serious, clear violation of their obligations under already existing UN Security Council resolutions 1718 and 1874.
(テキストはリンク先のFull text より)
変顔は「日本語長っ」から生まれた
クリントン長官は、上の言葉を非常にゆっくりと話されています。動画で所要時間を計ると、25秒ほどです。
そしてこのあと、この答えを通訳が日本語で話したのですが、通訳は決してゆっくりな口調でなかったにもかかわらず、なんと75秒近く要しています。
もっとも、「この答えを」通訳していたという言い方は不正確で、このとき通訳は、CNN記者の質問内容から日本語に訳して話していたのでした。
そんなこんなで、通訳が話し終えるのを待つあいだ、クリントンさんは「日本語長げーな」という表情をしはじめます。その様子もなかなか面白いので、興味がありましたら動画をご覧ください。
それで1分ほど経ったところで少し言葉が途切れたので、クリントン長官が話し出そうとしたら、実は通訳がまだ終わっていなかった。
そこで出たのがあの「変顔」というわけです。
カメラマンのGood Job
クリントンさんの「日本語長げーな」という顔つきもいいのですが、やはりあの「変顔」がいちばん写真として価値のある表情だったと思います。
何を当たり前なという話ながら、ほんの一瞬の表情を逃さないのですから、カメラマンというのは、大したものです。
(大喜利的でない)解答の例
IPPONグランプリに戻ります。
「写真で一言」ルーレットでこの写真を引き当てた、シャンプーハット小出水直樹さんの答えはこうでした。
たしか犯人は、こんな肛門をしてました
IPPONどころか、集めた票ゼロでした。
大喜利としてという意味ではなく、対案を出しておきます。以上で見てきたとおり、出所をふまえての解答例としては、
まだでした!
ぐらいになるでしょうか。
次回予告的な
近日中に、「写真で一言」の答え方を体系化したものを記事にします。
(2013/11/30追記)
1.記事にしました。→「写真で一言」の答え方には6種類ある
2.また、この記事自体の英語版も書いてみました。
Report: Why Hillary Clinton made such a funny face
英語圏のお知り合いにはこちらをご案内いただければ幸いです。
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