こんにちは。
うっすらした知識がかなり明快となりましたので、この機会にまとめておきます。
イノベーション完成の瞬間
まずは画像からです。
YouTube の「Dick Fosbury Changes The High Jump Forever – Fosbury Flop- Mexico 1968 Olympics」からキャプチャしました。リンク先で動画も観られます。
1968年メキシコオリンピック・男子走高跳の金メダリスト、ディック・フォスベリー(Dick Fosbury)さんの跳躍です。 彼は同大会で2m24cmを跳び、優勝しています。
どこがイノベーションか
現在の視点からは、何の変哲もない背面跳びの画像です。これのどこがイノベーションなのかと思うかもしれません。
重要なのは、1968年当時、この跳び方をした選手は彼以外にいなかったということです。
ひとつ前の1964年の東京大会ではみな、お腹を下にしてバーを越える「ベリーロール」だったそうです。年末の12月30日に市川崑監督の映画がBS で放送されるみたいなので、確認しておきます。
種明かしすると、走り高跳びの背面跳びとは、このディック・フォスベリーさんが開発し完成させた技術であるわけです。
英語ではFosbury Flop
なので英語ではこの跳び方を、彼の名を取ってFosbury Flop と言う由。たしかにGoogle で検索してみると、「背面跳び」直訳のbackward jump よりもヒット件数が多かったです。
跳び方として現在ではまったく当たりまえになっていて、何の不思議も覚えない点が、偉大さの表れとも言えます。
以降本記事では、彼に敬意を払いこの跳躍スタイルをFosbury Flop と記述します。
合理的な跳び方
Fosbury Flop は物理的に理にかなった跳び方です。他の跳躍方法と比べて、重心を高く上げる必要がない、すなわち、体の重心がバーのかなり下を通ってもクリアできるからです。
参考:ジョン・D・バロウ『数学でわかる100のこと』(松浦俊輔・小野木明恵訳, 2009)
イノベーションはその5年前から
http://www.olympic.org/richard-douglas-fosbury に、彼の業績が載っていました。そこから主な記述を拾っていきます。
フォスベリーさんは、1947年3月6日米国オレゴン州ポートランド生まれ。走り高跳びの選手として才能を発揮します。しかし早くも10代半ばで、従来の跳び方に限界を感じていました。
His personal best had plateaued at 1.80m, and so the young Fosbury realised that if he was to make further progress in the discipline, he would have to come up with a different approach.
既に1m93cmあった身長に対し、自己記録は1m80cmで頭打ちだったからです。これは違うアプローチがいるぞと感じていたのでした。
From 1963 onwards, Dick Fosbury started using a new technique of his own invention. Starting into a curved run-up, he turned away from the bar, transferring his weight and thrusting his body backwards over the bar.
そして編み出したのがFosbury Flop なのですが、「1963年から」ということは、Fosbury Flop を創造したのが16歳のときです。やるなあ。
斬新すぎるがゆえの反応
そして彼はこのテクニックを完成させていくのですが、このFosbury Flop を使い、カレッジの大会で2mを跳んだとき、こんなことがありました。(下線は引用者)
The young athlete used his new technique in a college tournament to record a jump of 2m, much to the bemusement of the judges, who, after much deliberation, were forced to conclude that Fosbury’s unorthodox but effective style was perfectly legitimate, since the only requirement is that a high jumper launches off one foot.
大意だけ述べると、ルールに違反していないか、審判団により慎重に協議されたわけです。結局違反はないという結論に至るのですが、その結論へ至るまで、つまりFosbury Flop が「あり」と認められるまでには、そういうプロセスが必要だったということなのでしょう。
あまりに斬新すぎるがゆえの周囲の反応と言えます。
そしてメキシコシティで誰よりも高い2m24cmを跳んだ後も、それは同じでした。
But the gold medal was not yet his. He faced an anxious wait as, once again, the judges debated whether his technique was in breach of any of the technical regulations.
拙訳です。こんなところでしょうか。
だが、金メダルはまだ彼のものではなかった。この跳び方が技術規定に反していないか、審判団が今一度協議するのを、もどかしく待たされたのである。
米国のカレッジトーナメントでの反応と一緒です。
マツダも目を付けていた
冒頭で紹介した動画へのコメントに「mazda commercial」というフレーズが複数ありました。
それで知ったのですが、海外では、マツダが彼を起用したCMを放送しているのですね。YouTube に動画がありました。
米国版はこちら。
Fosbury Flop — The Mazda Way — 2014 Mazda6 | Mazda USA
カナダ版はこちら。
2014 Mazda 6 – The Mazda Way: The Fosbury Flop | Mazda Canada
ベースの映像は米国版と同じですが、どこかテイストが日本ぽい。微妙な差が面白いです。
そしてCM本編ではなさげですが、Mazda Europe のこれがいちばんよかったです。フォスベリーさん本人が登場し、Fosbury Flop を語っています。
Webisode all-new Mazda3 – Dick Fosbury(Mazda Europe)
かっこいい。泣けます。
日本でもオンエアすればいいのに。このかっこよさ、伝わると思うけど。
こちらからは以上です。
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