「UNTITLED」CM曲・BWV1002の《サラバンド》を50種類以上聴いて選んだ、楽器別「好きな演奏」集

こんにちは。サラバンドブームまっただ中の昨今、いかがお過ごしでしょうか。

この記事に書くこと

この記事では、BWV1002の《サラバンド》ピンポイントに絞って、のべ50種類以上の演奏を聴き比べた中から楽器別に1つずつ僕のおすすめをご案内します。

この機会に未知の演奏家を探し、あるいは既知の演奏を改めて聴いて選び出しました。センスに合うものがありましたら幸いです。

sarabande-bwv1002
J.S.Bach: Partita I BWV1002 Sarabande(Bärenreiter Urtext Series)

これまでのあらすじ

安室奈美恵さん出演「UNTITLED」CMからの《サラバンド》ブーム到来の巻(2013/10/28)で、現在放送中の「UNTITLED(アンタイトル)」のCM曲に関して、

  • 曲名はJ.S.バッハ《無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第1番ロ短調 BWV1002》の 〈サラバンド〉であること
  • 演奏しているのはサクソフォン奏者の鈴木広志さんであること

などを書きました。

でもって、にわかにサラバンドブームが到来したわけです。

発表:楽器別・BWV1002《サラバンド》好きな演奏リスト

選び出した演奏は、楽器別・演奏者別に次のとおりです(敬称略)。

  • ヴァイオリン(モダン)  ヒラリー・ハーン
  • ヴァイオリン(モダン)次点 木野雅之
  • ヴァイオリン(バロック) レイチェル・ポッジャー
  • ヴィオラ・ダ・ガンバ ジョルディ・サバール
  • ギター マリオ・グロップ
  • リュート ホプキンソン・スミス
  • マンドリン クリス・シーリ
  • チェンバロ グスタフ・レオンハルト
  • (サクソフォン 鈴木広志)

サックス版も含めると全部で9つありますので、さしずめ「ベストナイン」といったところでしょうか。

記載事項の説明

以下の事項について書いていきます。

  • 楽器名
  • 演奏者(必要により原文表記を併記) ※敬称略
  • 演奏者の生年(および没年)
  • 録音された年 ※一部推定も含みます
  • 視聴、または試聴できるリンク ※アフィリエイトを含みます
  • コメント
  • 関連サイト

おおむね、この記載順序で書き進めます。

記載例

こんな感じで書いていきます。

サクソフォン

鈴木広志(b.1979)2013 UNTITLED(アンタイトル) 公式チャンネル|YouTube

現段階では、この演奏のCD化・配信ともに未定みたいです。鈴木さんのサックス演奏によるCDが出たら、僕は間違いなく買います。


※画像は、suzuki-hiroshi.com > profile

楽器別の好きな演奏

ヴァイオリン(モダン)

ヒラリー・ハーン(Hilary Hahn)(b.1979)2010 YouTube(4:03あたり~)

初めて知りました。ひと言で言えば、モノが違いすぎます。「ベストナイン」にたとえるなら、文句なしの絶対的エースです。なんだこの人。

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※画像は、hilaryhahn.com

コンテンポラリーな、同時代に生きているバッハという印象でした。彼女による他のバッハも込みで言うと、「もしも僕がヴァイオリンが弾けたら、バッハの無伴奏はこう弾きたい」というのを、おおかた9割ぐらいやられてしまっています。

今さらながら、すごい人を見つけてしまいました。後でヤホー漫才書きます。

ヴァイオリン(モダン)次点

木野雅之(b.1963)2003 AmazoniTunes

BWV1002が日本音楽コンクール2013での予選課題曲になっていた関係で、NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)の試聴用特設コーナーでのべ41種類のヴァイオリン演奏を聴けました。そこから1つ選ぶなら、この演奏です。

正直、純粋に演奏を聴いただけだったなら「悪くない」レベルどまりでしたけれど、日本人の演奏家ということで、すべり込みです。

バッハ:無伴奏パルティータ全曲
バッハ:無伴奏パルティータ全曲

ドゥーブル(変奏)のダンサブルなグルーブ感がよかったです。もとはと言えば、ダンスミュージックですから。

ヴァイオリン(バロック)

レイチェル・ポッジャー(Rachel Podger)(b.1968)1998 iTunes

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※画像は、rachelpodger.com

バッハの時代の古楽器による演奏です。よく研究されている印象がする弾きぶりでした。何の根拠もないですが、あらゆる「先行研究」をふまえたうえでのこの演奏に聞こえたためです。

Violin Sonatas & Partitas Complete
Violin Sonatas & Partitas Complete

矛盾するようですが、常に革新を続けなければ古楽も死ぬのです。

ヴィオラ・ダ・ガンバ

ジョルディ・サバール(Jordi Savall)(b.1941)1998 AmazoniTunes

同じ古楽器でも、こちらで使っている楽器はチェロに近いサイズのものです。音域的には、これぐらいの方が心地いいです。

Les Voix Humaines. Works for Lyra Viol & Bass Viol
Les Voix Humaines. Works for Lyra Viol & Bass Viol

糸を引くように遅く粘っこい演奏も、音色によく合っています。

ギター

マリオ・グロップ(Mario Gropp) 2009 YouTube

個人的なことを言うと、気分的にクラシックギターを聴ける日は限られていて、ふだん優先的に聴きたい対象ではありません。ギターの音ってどこかしょぼくれているように思えて、気が滅入って長く聴けないことが多いのです。

けれどもこちらは、聴ける時機が通常よりも多そうな演奏でした。奏者に内在するリズム感が、自分と合っているのかもしれません。

初めて見知った名前だったので検索してみると、ギター製作者としてサイトを開かれていました。

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※画像は、http://www.gropp-gitarren.de/english/

リュート

ホプキンソン・スミス(Hopkinson Smith)(b.1946)2000 iTunes

Sonatas & Partitas Bwv 1001-1006
Sonatas & Partitas Bwv 1001-1006

枯れた味がいいです。700年生きている人間の独白のように響きます。

マンドリン

クリス・シーリ(Chris Thile)(b.1981)2013 AmazoniTunes

意外性という意味で、今回いちばん驚きました。

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※画像は、www.facebook.com/ChrisThile

実に枯れた音で鳴らしています。リュート以上の枯れっぷりです。上手じゃない人が弾くマンドリンの音って、キャンキャンと小型犬が吠えているみたいに聞こえて時に不快に思えるのですが、そういうのは一切ありません。

あまりに音色が枯れているので、部分的にクラヴィコードのように聞こえるほどです。

そして演奏も、ただ「弾いてみた」のキワモノでなくて、しっかりとバッハです。渋い。

すごく才能を感じます。これもまた、すごい人を見つけてしまいました。この人もヤホー漫才書きたいです。

Bach: Sonatas & Partitas Vol. 1
Bach: Sonatas & Partitas Vol. 1

これいいです。何年ぶりかでCD買いました。

チェンバロ

グスタフ・レオンハルト(Gustav Leonhardt)(1928-2012)1975

Gustav Leonhardt The Edition
※画像は、Gustav Leonhardt The Edition

最後に、「私の神様」レオンハルトです。彼も編曲版によるBWV1002の録音を遺しています。

バッハ:ソナタ,パルティータ&組曲
バッハ:ソナタ,パルティータ&組曲

純粋に演奏として面白いかと言われれば、必ずしも肯定できません。でももはや信仰の領域に入っているので、そういうレベルでの論議は無意味です。だって神様だから。

おことわり

念のため申し上げておきます。このリストにない「これ以外の演奏は認めない。嫌い」という意味ではありませんので、誤解のないようにお願いいたします。

以上、現場からでした。

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