9月15日「あすなろラボ」での林修さんの恋愛論授業で使われた名言・格言の出典調査報告です。
一覧はポータルページにまとめています。他の名言はそちらからどうぞ。
名言(整理番号 2)
恋は決闘です。もし右を見たり左を見たりしていたら敗北です。
フランスの作家 ロマン・ロラン/Romain Rolland(1866-1944)
出典
『魅せられたる魂』(L’àme enchantée)第二巻「夏」(L’été)から
主人公アンネット・リヴィエールへ向けた、フィリップ・ヴィヤールの台詞です。
苦学のすえパリの医科大学を卒業した著名な外科医(『新潮世界文学 26』より)であるフィリップは、ノエミという妻がありながら、 アンネットへ愛の告白をします。そんなシーンです。
引用です。
「あなたはご自分のことしかお考えにならないんですね」
というアンネットの台詞に続くフィリップの返答部分からです。(宮本正清訳) ※太字は引用者
「恋愛では自分のことしか考えないんです」
「いえ、いえ、それはたいへん違います! わたしは考えます、わたしのことや、あなたのことや、あなたを愛する女(ひと)のことや、あなたの愛してらっしゃるすべてのことや、わたしが愛してるすべてのことを。わたしは自分の愛がすべての人にとっていいことで楽しいことであってほしいのですわ」
「恋は決闘です。もし右を見、左を見、していたんでは負けです。あなたの前にいる敵の目をまっすぐに見つめるんです!」
「敵ですって?」
「ぼくです」
原文
著作権切れになっている作家なので、探しました。探しました。一生懸命探しました。(←なに田紳助?)
原書、見つかりました。
archive.org で、トロント大学のコレクションが電子化され公開されていました。スキャンされた底本は1923年版のようです(Nobelprize.org による)。
L’âme enchantée (Volume 02)(archive.org) 扉ページ
「3/10/25」と書き込まれた文字が見えます。1925年に購入したということなのでしょうね。
該当の台詞は、284ページにありました。
文字にもしておきます。
L’amour est un duel. Si l’on regarde à droite, à gauche, on est perdu.
付記:『魅せられたる魂』について
ロマン・ロランの小説『魅せられたる魂』は、通常の何作分にもなる長編です。
「アンネットとシルヴィ」「夏」「母と子」(エピローグ)「予告する者 Anna nuncia」の四巻からなり、1921年から1933年にかけて書かれました。
2段組の全集でも、これだけ分厚いです。 比較用に『地下室の手記』の文庫本をはさんで撮ってみました。
「名言」がどこに出てくるか最初から探していきましたが、わりと早い段階で見つかったのでよかったです。
新刊の入手方法(2013年現在)
現在「新刊」として入手できる『魅せられたる魂』は、みすず書房からオンデマンド版で購入できるもののみのようです。『ロマン・ロラン全集』の6・7・8巻に相当します。
amazon.co.jp へのリンクを張っておきます。
注文生産だからでしょうけど、それぞれ9000円近くしますので、念のため。
豆知識:ドラマ化されていた
過去に『魅せられたる魂』を原作とした大映ドラマも放送されたことがあるみたいです(1978-1979年)。
参考:Wikipedia「人はそれをスキャンダルという」
主演は山口百恵さんだって。何それ見たい。
あとがき:すごい時代ですね
つくづく、すごい時代になったものだと実感します。なにせ、自宅からほとんど全部探せてしまうのですから。
今回初めて知って驚いたのは、原書のフレーズをGoogle 翻訳に入れて、スピーカーマークの「音声を聞く」ボタンを押すと、読んでくれることです。一度聞きたかった「麻布十番」も、しっかりフランス語で読んでくれました。
そして、archive.org で原書の全巻がすべて電子化されていましたから、ネット環境さえあれば全部タダで読めます。1冊しか確認していませんが、『L’été』は音声読み上げもできました(ただ、かなりの英語訛りに思えましたが) 。
並行して日本語情報の所在も追いはしましたが、どこかまどろっこしく感じてしまいました。
これからの世代はもう、外国の情報は外国語のままでよくね? と思い始めてきています。
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