現代日本のテレビバラエティに見られる2大類型・序論―9月15日「あすなろラボ」林修さん授業感想(4)

こんばんは。林修ナイトの時間です。

「あすなろラボ」授業の感想シリーズ、その4です。

タイトルは大きく出ましたが、内実は、観察できる事実の記録と、ごく浅い分析です。

はじめに:Introduction

日本で制作放送されるテレビバラエティは、大きく2つに分けられます。ワイプのない番組とある番組です。

ワイプの中に映る人は、番組出演者であると同時に視聴者の代表でもあります。

その意味で、ワイプのある番組が映し出しているのは、ただの「テレビ番組」ではなく、「テレビ番組が映っている茶の間」だと言えます。

反対側から言えば、ワイプのある番組の視聴者は、「テレビ番組」と「その番組が映っている茶の間」を同時にテレビで見ていることになります。

そんなややこしい入れ子構造をしています。

「ワイプ」

「ワイプ」というのは、画面切替に関する映像技術の1つです。

元は、wipe(ふき取る、拭う)という言葉どおり、ちょうどワイパーがフロントガラスを拭くかのように、映像が一方から一方へと移っていくような切り替わり方を指しました。

これが転じて、テレビ番組で、VTR素材をスタジオで見る出演者の様子を同時に映す小さな画面のことも「ワイプ」と呼ぶようになったようです。

(参考:Wikipedia「ワイプ」)

2013-09-22_Mk-wipe3
※画像はWikipedia「ワイプ」より

類型による分類―林修さん出演番組を例に

「林修ナイト」での記事なので、林さんの出演歴があるものを例に、ワイプの有無で分類をしてみます。

ワイプのない番組

次のものが該当するでしょう。

  • 世界一受けたい授業(2004~)
  • プレバト!!(2012~)
  • 林修先生の今やる!ハイスクール(2013)

いずれも、スタジオのみで完結しているタイプの番組です。スタジオで収録された素材が編集されパッケージされて放送されます。それを視聴者は視聴します。

一元構造、ないしは一重構造です。

ワイプのある番組

まず、「ネプリーグ」(2003~)がそうです。

メインの画面にはクイズの様子が映され、その前後で、挑戦する(した)チームの出演者と、控える別の出演者群が同時に映されます。

二元構造です。

そして、ここで感想を述べている「あすなろラボ」(2013~)も、ワイプの「ある」方です。

メインの画面には編集・パッケージされた授業が映され、別画面にスタジオでそれを見る出演者が映されています。

二元構造であり、二重構造です。

そんな、ややこしい入れ子構造をしています。

ワイプの機能

そのようなややこしい構造を作ってまで用いられるワイプの存在意義とは何なんでしょうか。それを探るために、ワイプで何をしているのかを観察します。

ひとつは、メインの画面に反応することです。ときにもう一歩踏み込んで、「ツッコミ」などの形で介入することもあります。

ワイプが何をやっているのかを抽象化して言うと、ひとつは「コンテンツの弱さを補う」ことです。

もうひとつの機能は、「視聴者の代表」です。ワイプの中で素材VTRへのリアクションを見せることで、視聴者にメイン画面をどう見るといいのか、どう反応するかの一例・代表例を示しています。

換言すると、あるいは「視聴者の弱さを補う」という言い方もできるでしょう。

一言でまとめると、「弱さを補う」。これがワイプの機能です。

二元構造でもワイプのない例

ワイプの有無を分ける分岐点は、1つのスタジオで完結するかどうか、コムズカシク言うと「一元構造」であるか否かというと、そうではありません。

初老の記憶を頼りに、思い出してみます。

過去

ロケなどで別撮りしたVTR素材と、スタジオ部分とが切り替わる構成のバラエティ番組は、昔からありました。

たとえば、

  • ウィークエンダー(1975~1984)
  • スターどっきりマル秘報告(1976~1998)

がそうです。

現代

現代でも同じく、素材VTRとスタジオが切り替わるが、ワイプのない番組はあります。NHKの

  • クローズアップ現代(1993~)

がそうです。

バラエティ番組ではないですが、初老のおっさんの視聴範囲ではこれぐらいしか思い当たりませんでした。

どれもスタジオはVTRに介入しない

どの番組も、ロケあるいは取材VTR部分と、スタジオ部分とが截然と切り替わる構成です。

同一番組内であれば、VTR部分とスタジオ部分のテーマは共通であり、流れもつながっていますが、両者ははっきりと切り分けられており、VTR映像にスタジオが介入することはありません。

まとめ:ワイプが生まれる条件

以上をふまえると、ワイプのある番組は、次のどちらか、ないしは両方が該当すると言えます。

  • VTR素材が弱い
  • 視聴者が弱い

次回予告

林修さんのこれまでの「あすなろラボ」の授業は、VTR素材である授業そのものの弱さを感じることはありませんでした。

しかし今回の恋愛論授業では、ワイプに助けられたと感じたところがいくつかあります。次の記事ではそれを書きます。

こちらからは以上です。

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