こんばんは。林修ナイトの時間です。
「あすなろラボ」で林修さんの授業の第3弾がありました。番組内容をテキストにしました。
林さんの発言を採録することを中心にし、適宜、発言内容に関する注釈・参考情報を付け加えるスタイルで書きます。感想は別記事にします。
基本情報
テレビシャカイ実験あすなろラボ(フジテレビ系 2013/08/04 21:00-21:54 OA)
番組内容(地デジ番組表より)
超人気企画第3弾!元デブの林先生が禁断の授業に挑む!
「林先生は痩せる気のないおデブさんを痩せる気にすることはできるのか?」おデブ23人相手に衝撃の展開
実験テーマは「東進ハイスクールの林修先生は、痩せる気のないおデブさんを痩せる気にすることはできるのか?」です。
総勢23名の「痩せたいのに痩せられないおデブ」を相手に、教室を模したセットで林修さんが授業を行いました。
林修さんのおデブ向け授業
授業の進行に沿って、林さんの言葉、ならびに「生徒」であるデブたちとのやりとりを記していきます。
ナレーション)前代未聞の授業が幕を開ける
授業開始
教室へ入ってくる林さん「こんにちは」
生徒一同「こんにちは」
「かつて、テレビであまり流れたことがないような、映像になりそうですが、ま今日はあのしばらく、いろいろなお話をしますので、よろしくお願いいたします」
生徒一同「お願いします」
100kg超からダイエットの経験アリ
「あのうみなさんが僕のことをどう思われてるかちょっとよくわからないんですけれども、えー人生で100kgを超えたことが3回あります」
「ま一応僕だいたい身長175(cm)ぐらいなんですよ。今の体重が73ぐらいなんですが、えーもっと痩せてた67kgぐらいのときにある知り合いと会ったんですね。まあ、その人はほんとに痩せてて背も高くてかっこいいと。で、彼の考え方として、太るかどうかなんてことは完全に自己管理の問題だと」
「僕はやっぱりこう思ってるんですよ。完全に、(板書しながら)向こう側とこちら側。向こう側の人がよく言うセリフ、食べても食べても太らない、どうしてそんなに太るの。平気でそういうこと言う人が周りにいませんか。で向こう側の人は世の中にたくさんいて、こっち側はですね、食べたら食べた以上に太るんじゃないかっていうような、思いで生きてて、まその中で2種類に分かれるわけですよ。やっぱりその中でなんとか痩せたいと思う人と、もういいと、別にこれで構わないんだっていう人がいて」
「まず第一の目的はやはり、こっち側に生きていた僕が、えーほんとにいろいろやってきて、まはっきり言って一生ダイエットなんですよ。もうずーっとダイエットしてるんですよ。でそういうふうに生きてきた僕の姿をみなさんにそのままお伝えして、で最終的にそれが皆さんに響くかどうかは正直わからないと。そんなことをですね、ずっとしばらくお話ししていこうと」
林先生流ダイエット方法
「僕のやり方っていうのはもうほんとに乱暴で、とても医学的にお勧めできないんですけれども、まあ食べないで走る。基本的に食べないで走る。特に夕食は食べない。夕食を食べないとですね、あのう確かにひもじいんですけれども」
「朝早く目が覚めると。ただやっぱり朝寝起きっていうのはそんなにこう全体内臓がですね、まだ動いてないんで、なんとかごまかして走れるんです。で10kmとか20kmを走る。そうするとですね、今度は疲れてしまって食欲がなくなって、で意外と昼ぐらいまで食欲ないんですよ。で昼過ぎぐらいで一食食べて、それでもたせてまた夜は抜くっていうことこれを3か月くり返したら、まああっという間に67~8kgまで、落ちて、でそうなるとやっぱり誰も僕のことをデブとは言わなくなったんですね」
太っている人といると太る
「でまあ、ひとつの、格言ってことでもないんですけれども、(板書)太っている人といると太るんですよ。たとえば焼肉屋っていう恐ろしい場所がありますよね。ま昔僕が90kgぐらいあるときにですね、110kgの人と100kgぐらいと3人で行ったんですよ。でビールだけ頼んどいてもらって、ちょっとオーダーしといてっていって、こうトイレ行こうとしたら後ろから聞こえてきた声が、カルビ15人前って聞こえてきたんですよ。やっぱなんかおかしい」
「で彼に言われたんです。肉は脂身がうまいに決まってるんだ。林よく見ろとこの字を。書きますよ(「脂」を板書)。これにくづきですね。肉の旨味と書いて脂だぞって言われたんです。ああそうかって。でそういうふうに結局太っている人といると、太るための理屈をどんどんどんどん作っていくもんですから、なおさら太っていく」
「回転寿司武勇伝を語らない人いないですよね。必ず聞くセリフが、昔は100皿いけた。これ全員が言いますよね。あとは皆さんのなかで経験があるかもわからない。便座が割れた方いらっしゃいます?」
阿左美さん「便座よく割れますね」
「よく割れるんですか」
阿左美さん「椅子も、自分まあ今でもこういう、感じであの座ってんですけど、もう寄っかかれないんですよ。間違いなく、あの今自分がたぶんちょっと、まあ、今量ってないんであれなんですけど、180~90あるんですけど、そうするともう間違いなく、こうやった瞬間に折れるんで、ずっとこういう感じでまあ仕事とかもしてて」
川田さん「僕ユニットバス壊しました」
「ユニットバスまで壊されたんですか」
川田さん「バス、お風呂の」
「もうねぇ、もうそういうねぇ、その武勇伝合戦もうやめましょうね。必ずそういう話になるんで何を壊したかっていう」
川田さん「メキッて」
太るのは楽しい
「でもね、楽しいんですよね。確かに楽しいんですよ。でも楽しいけど、やましいんですよね。なんかちょっと間違ったことしてるんじゃないかと。でどんどんどんどん確実にズボン入らなくなっていく」
「じゃあですね、肥満がいいか悪いかっていうお話を少し、ちょっと文化学、文化的にしていきたいと思うんですが」
収録前の打合わせにて
スタッフに語る林さん
「なんでそういう価値観になっちゃったかということなんですよ。単なる体型の問題なのか、生き方の問題なのか、それとも文化なのか」
「太ってる割にかわいいね、っていう言い方が既にわれわれの価値観をよく表してて、太っていることイコールかわいくない、例外的にかわいいねみたいな認識になっているじゃないですか。そのね美意識、美的価値観? このあたりは、そう簡単に変わらないと思うんですよ根が深いんで。そのあたりもちょっと説明しようと思いますけどね」
1時間目 肥満は良いのか悪いのか文化的な考察
ナレーション)というわけで1時間目は、肥満の良し悪しを、文化的に考える
体型と価値観は時代で変わる?
「これは見たことありますかね(1枚の絵を取り出す)。こうやった方がいいですね。これだいたい学校の教科書に載ってるんですが」
チンさん「誰だろ」
「これはですね、正倉院に保存されている、鳥毛立女屏風(とりげりつじょのびょうぶ)、別名「樹下美人図」といいます」
(スーパーインポーズによる説明)
鳥毛立女屏風【756年】
(正倉院所蔵)
/*注:
こんな絵です。
鳥毛立女屏風 第4扇(部分)
※画像はWikipedia 正倉院より
*/
チンさん「昔の人はなんで食べる物なかったのに太ってるんですか?」
「それについて説明しますが、(「樹下美人図」と板書しながら)この人こういう言葉(美人に下線)使われているんです。これ皆さんえっと思われません? いやこのあいだもですね、銀座歩いてたら、ほんとに結構こんな感じの方をお見受けして、うわー1000年遅いよ。今だとちょっとたぶんそうね、ルックス面の評価微妙じゃないかなあと。だけど、当時だったらと」
「で今おっしゃられたことなんですよ。当時は、食糧事情が悪かったんで、こういうふくよかな女性がかえって評価されたんではないかという説があるんです。で実際にですね、たとえばトンガとかいろんな国では、やっぱふくよかな女性、まあ男性の場合でも、太っている人の方がいいっていう価値観があるんですね。でもし、わが国も、そういう価値観が、一般的であれば、ヒーローです。ヒロインですここ」
チンさん「いつからそんな時代になっちゃった?」
「兆しは江戸時代に実はありました。これね鳥居清長っていう人の絵なんですけど」
(スーパーインポーズによる説明)
鳥居清長【1752~1815】
江戸時代の浮世絵師 美人画で一世を風靡
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版画大川端夕涼み図(平木浮世絵財団蔵・重要文化財)
※画像は文化遺産オンラインより
*/
「さっきとだいぶ違いますよね。もう、江戸時代の美人というといわゆる瓜実顔といわれてですね、すっきりで、この人の絵が、八頭身九頭身、あった。(樹下美人図を示して)まこれはやっぱり、どう考えても違った美意識のもとで、描かれてますよね」
「でこの八頭身というのがひとつキーワードになるんですが、決定的なことがひとつ起きたのが、八頭身事件というのが起きるんですよ」
「八頭身事件」
ナレーション)林先生が言う「八頭身事件」とは、1953年、戦後初めてのファッションモデルの1人、伊東絹子さんが、ミスユニバースコンテストで3位に入賞。いわゆる八頭身美女としてもてはやされ、日本人離れしたその体型が話題になった、当時の社会的ニュースのこと。なのだが
皇太子さまと伊東絹子さん 初訪米で対面(1953年9月)
※画像は47NEWSより
*/
日本人ばなれ と板書する林さん
「僕ね、この言葉はおかしな言葉だと思うんですよ。これは他の国でこういう表現があるかってこと聞いてみたいんですけど、これ、いい意味で使いませんか? 日本人離れしたスタイルの良さ。日本人がなんで日本人離れなきゃいけないんですか。日本人は日本人らしいってことに誇りを持てばいいのに、この国は日本人離れしたスタイルの良さプロポーションの良さっていう言い方をしますよね。元はこれ(樹下美人図)が美人だった国なんですよ。樹下美人なんですよ」
「なのになんでそんなことが起きたかっていうと、まあこっから僕の推測にもなりますけれども、西洋はもともと美人はこうなんですよ(彫像の写真を見せる)」
(スーパーインポーズによる説明)
ミロのヴィーナス(ルーブル美術館所蔵)
古代ギリシアで作られた彫刻の女性像
※画像はwww.louvre.fr より
*/
「もうこれ、紀元前からの美女ですよ。ミロのヴィーナス。美の神です。これ八頭身です。この顔の人って、今いてもたぶん美人ですよね。このスタイルは今でもスタイルがいいって言われますよね」
/*
Wikipedia Vénus_de_Milo によると、ミロのヴィーナスの全高は211cm。スリーサイズは上から、B 121cm W 97cm H 129cm だそうです。
*/
(樹下美人図を見せる)
「この人はほんとにこれに近い方、偶然昔お会いし、ああ最近お会いしましたけど、やっぱりちょっと生まれてくるの遅かった感あるんですよね。だから、結局われわれは、この価値観に、この美意識に屈したんですよ。だから結局何がかっこいいっていうのかっていうのは、実はそんなに、特にこの国はぶれまくってるんです」
「なのに今は、やっぱりテレビに出てくるタレントさんとかでもやっぱり細い、かっこいい、あえて言いますけど、三浦春馬くんとこうなってくるんですね」
チンさん「かっこいい」
「こっち側ですよね」
チンさん「うん。もう届かない」
「かっこいい。でも価値観がひとつ、違えば、どうなってたかわからないのに、でそれに対してやっぱ向こう(西洋)ぶれてないんですよ。だからそうなると僕はこういうこと、なんでこんなことを研究まあ一生懸命勉強したかっていうと、自分がですね、こんなふうにダイエットに振り回されてるっていうのが、こんなにあやふやな基準で変わってきたこの国で、(「日本人ばなれ」を指して)こんな言葉が通用するこの国の美意識で、こんな身を、まさに身を削る思いをしてるんだなと」
「でそれがですね、強迫観念にとらわれて、いわゆる、(板書しながら)過食症とか、あー字書き順間違ったまあいいや、拒食症といったいわゆる摂食障害、で、命を落とす人まで出てるわけですよね」
摂食障害
ナレーション)摂食障害。カーペンターズのカレン・カーペンターをはじめ、有名人にも多い精神的な病気。過食症と拒食症があるが、特に拒食症は、過度なダイエットが引き金になることが多く、自身も拒食症で若くしてこの世を去った、イザベル・カロの写真は多くの議論を呼んだ
(スーパーインポーズによる説明)
イザベル・カロ【1982-2010】
幼少時から拒食症を患ったフランスの女性モデル
/*
イタリアの反拒食症キャンペーンの広告で有名になった方だそうです。
※画像はwww.advertlog.com より
※同
ただしこの方の拒食症は、過度なダイエットに由来するものではないようです。
*/
なぜ痩せる? 正しい価値観の大切さ
「そういうことが起きてきてるわけで。社会全体が、少し追い込みすぎてるんではないかと」
つづく。
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